自民党憲法改正案(1)
自民党憲法改正草案を読む/番外197(情報の読み方)
自民党憲法改正案の全文が発表された。引用は、2018年03月26日の読売新聞から。「自衛隊の根拠規定を明記する案は、多数派が指示する有力案」とのただし書きがついている。「正式」にはまだ未定ということか。
改正案だけでは問題点が見えにくいので、関連する現行憲法と照らし合わせて読んでみる。
(現行憲法)
第2章 戦争の放棄
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
これに自民党は「自衛隊の根拠規定」を明示する。「 9条の2」を追加する。(1)(2)(3)という表記は自民党案にはないが、あとで項目ごとに説明するためにつけた。改行も、分かりやすくするためにつけくわえた。
9条の2
1項 (1)前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、
(2)そのための実力組織として、法律の定めるところにより、
(3)内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮官とする自衛隊を保持する。
2項 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
自民党案のいちばんの問題点は「主語」が「国民」ではないことだ。
現行憲法は「日本国民は」と「国民」を主語にして書かれている。すべての「動詞(述語)」の主語は「国民」である。
1項は、わかりやすく書き直すと、
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求する。
日本国民は、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は(ここまでがテーマ)、永久にこれを放棄する。
(この文体は、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」という文体と同じ。テーマを先にかかげ、「これを」という形で引き継ぐ。定義する。)
途中にある「国際紛争を解決する手段としては」は「テーマの補足」である。
日本国民は、国際紛争を解決する手段としては、(戦争と武力をつかうことは)永久にこれを放棄する、と言っている。
2項目に「日本国民」を補うと、
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は(これがテーマ)、これを「日本国民は」保持しない。
国の交戦権は(これがテーマ)、これを「日本国民は」認めない。
自民党の案では「国民」が消えている。補うことが出来ない。
(1)前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、
この「主語」は「前条の規定」である。それにつづく文章は「説明」である。「妨げず」という動詞(述語)の主語は「前条の規定」であり、これは「説明文」になる。
前条は、「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げる」とは「規定していない」と言う文章を「言い換えた」ものである。「規定していない」という「解釈」を、「解釈」とわからないように書いている。
「解釈する」というときは「動詞」が必要である。
「前条は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げるとは規定していない」と、「国民は」解釈するでは、「解釈」を「国民」に押しつけることなる。これは「思想、信条の自由」に反する。だから、そうは書けない。「前条」をそのように「解釈する」人間は限られている。
これは、
(1)前条は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げるとは規定していないと、「政府は」解釈する
なのである。「政府(政権)」という「主語」が明示されないまま、ここに登場してくる。案をつくった「自民党」と言い換えてもいい。
この「政権/自民党」という「主語」が引き継がれていく。
(2)そのための実力組織として、「政権(自民党)が提出した」法律の定めるところにより、
(3)内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮官とする自衛隊を「政権(自民党)が」保持する。
「法律」を「提案できる」のは「国民」ではない。「自衛隊」という組織を「保持できる」のは「国民」ではない。
「動詞」と「主語」をていねいに補いながら読む必要がある。「動詞」と「主語」を補うと、「憲法」の「主役」が「国民」から「政権(自民党)」に移ってることがわかる。それも「隠したまま」、「主語」を乗っ取っているのである。
「内閣総理大臣を最高の指揮官とする」ということばに従えば、主語は「内閣総理大臣(安倍)」ということになる。
(1)前条は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げるとは規定していないと、「安倍は」解釈する
(2)そのための実力組織として、「安倍が提出した」法律の定めるところにより、
(3)内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮官とする自衛隊を「安倍が」保持する。
つまり、これは「独裁」の宣言なのだ。しかもその「独裁」は「自衛隊」という組織をバックボーンに持っている。「軍事独裁」が安倍の夢なのだ。(2)で現行憲法で禁じている「武力」ということばつかわず「実力組織」とあいまいにしているのも、国民をだますためなのだ。
(2)で補った「安倍が提出した」を中心に改憲の動きを見直すと、このことがよくわかる。
改憲は安倍が提案したのだ。憲法を守る義務がある安倍が、率先して憲法を否定している。「軍事独裁」のために、である。
2項 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
にも、「日本国民」を補うことは出来ない。あえて補えば
自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、「国民を代表する」国会の承認その他の統制に服する。
になるかもしれないが、「内閣(総理大臣」と「国会」の出てくる順序が現行憲法とは違う。現行憲法は「天皇→戦争放棄→国民→国会→内閣」という順に規定している。重視するものから先に規定している。
「9条の2」で「国民」を飛び越して「主語」になった「安倍(内閣総理大臣)」は当然のように、ここでは「国会」を飛び越している。「国会」のうえに君臨する。
安倍(自民党)の改憲案は、「安倍軍事独裁」のための改憲案である。
(他の改憲案に対する意見は、後日書く。)
民主主義の基本である「議論」。これを封じることで「独裁」を完成させる。その「線」ですべての「事件」、あるいは「できごと」はつながっている。そして、批判力を身につけさせないための「学校づくり」を、その根底においている。これが安倍のやっていることなのだ。憲法を変え、独裁者になるための下準備なのだ。
#安倍を許さない #憲法改正 #天皇退位
*
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松井久子監督「不思議なクニの憲法」上映会。
2018年5月20日(日曜日)13時。
福岡市立中央市民センター
「不思議なクニの憲法2018」を見る会
入場料1000円(当日券なし)
問い合わせは
yachisyuso@gmail.com
自民党憲法改正草案を読む/番外197(情報の読み方)
自民党憲法改正案の全文が発表された。引用は、2018年03月26日の読売新聞から。「自衛隊の根拠規定を明記する案は、多数派が指示する有力案」とのただし書きがついている。「正式」にはまだ未定ということか。
改正案だけでは問題点が見えにくいので、関連する現行憲法と照らし合わせて読んでみる。
(現行憲法)
第2章 戦争の放棄
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
これに自民党は「自衛隊の根拠規定」を明示する。「 9条の2」を追加する。(1)(2)(3)という表記は自民党案にはないが、あとで項目ごとに説明するためにつけた。改行も、分かりやすくするためにつけくわえた。
9条の2
1項 (1)前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、
(2)そのための実力組織として、法律の定めるところにより、
(3)内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮官とする自衛隊を保持する。
2項 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
自民党案のいちばんの問題点は「主語」が「国民」ではないことだ。
現行憲法は「日本国民は」と「国民」を主語にして書かれている。すべての「動詞(述語)」の主語は「国民」である。
1項は、わかりやすく書き直すと、
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求する。
日本国民は、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は(ここまでがテーマ)、永久にこれを放棄する。
(この文体は、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」という文体と同じ。テーマを先にかかげ、「これを」という形で引き継ぐ。定義する。)
途中にある「国際紛争を解決する手段としては」は「テーマの補足」である。
日本国民は、国際紛争を解決する手段としては、(戦争と武力をつかうことは)永久にこれを放棄する、と言っている。
2項目に「日本国民」を補うと、
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は(これがテーマ)、これを「日本国民は」保持しない。
国の交戦権は(これがテーマ)、これを「日本国民は」認めない。
自民党の案では「国民」が消えている。補うことが出来ない。
(1)前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、
この「主語」は「前条の規定」である。それにつづく文章は「説明」である。「妨げず」という動詞(述語)の主語は「前条の規定」であり、これは「説明文」になる。
前条は、「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げる」とは「規定していない」と言う文章を「言い換えた」ものである。「規定していない」という「解釈」を、「解釈」とわからないように書いている。
「解釈する」というときは「動詞」が必要である。
「前条は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げるとは規定していない」と、「国民は」解釈するでは、「解釈」を「国民」に押しつけることなる。これは「思想、信条の自由」に反する。だから、そうは書けない。「前条」をそのように「解釈する」人間は限られている。
これは、
(1)前条は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げるとは規定していないと、「政府は」解釈する
なのである。「政府(政権)」という「主語」が明示されないまま、ここに登場してくる。案をつくった「自民党」と言い換えてもいい。
この「政権/自民党」という「主語」が引き継がれていく。
(2)そのための実力組織として、「政権(自民党)が提出した」法律の定めるところにより、
(3)内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮官とする自衛隊を「政権(自民党)が」保持する。
「法律」を「提案できる」のは「国民」ではない。「自衛隊」という組織を「保持できる」のは「国民」ではない。
「動詞」と「主語」をていねいに補いながら読む必要がある。「動詞」と「主語」を補うと、「憲法」の「主役」が「国民」から「政権(自民党)」に移ってることがわかる。それも「隠したまま」、「主語」を乗っ取っているのである。
「内閣総理大臣を最高の指揮官とする」ということばに従えば、主語は「内閣総理大臣(安倍)」ということになる。
(1)前条は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げるとは規定していないと、「安倍は」解釈する
(2)そのための実力組織として、「安倍が提出した」法律の定めるところにより、
(3)内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮官とする自衛隊を「安倍が」保持する。
つまり、これは「独裁」の宣言なのだ。しかもその「独裁」は「自衛隊」という組織をバックボーンに持っている。「軍事独裁」が安倍の夢なのだ。(2)で現行憲法で禁じている「武力」ということばつかわず「実力組織」とあいまいにしているのも、国民をだますためなのだ。
(2)で補った「安倍が提出した」を中心に改憲の動きを見直すと、このことがよくわかる。
改憲は安倍が提案したのだ。憲法を守る義務がある安倍が、率先して憲法を否定している。「軍事独裁」のために、である。
2項 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
にも、「日本国民」を補うことは出来ない。あえて補えば
自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、「国民を代表する」国会の承認その他の統制に服する。
になるかもしれないが、「内閣(総理大臣」と「国会」の出てくる順序が現行憲法とは違う。現行憲法は「天皇→戦争放棄→国民→国会→内閣」という順に規定している。重視するものから先に規定している。
「9条の2」で「国民」を飛び越して「主語」になった「安倍(内閣総理大臣)」は当然のように、ここでは「国会」を飛び越している。「国会」のうえに君臨する。
安倍(自民党)の改憲案は、「安倍軍事独裁」のための改憲案である。
(他の改憲案に対する意見は、後日書く。)
民主主義の基本である「議論」。これを封じることで「独裁」を完成させる。その「線」ですべての「事件」、あるいは「できごと」はつながっている。そして、批判力を身につけさせないための「学校づくり」を、その根底においている。これが安倍のやっていることなのだ。憲法を変え、独裁者になるための下準備なのだ。
#安倍を許さない #憲法改正 #天皇退位
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松井久子監督「不思議なクニの憲法」上映会。
2018年5月20日(日曜日)13時。
福岡市立中央市民センター
「不思議なクニの憲法2018」を見る会
入場料1000円(当日券なし)
問い合わせは
yachisyuso@gmail.com
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