不記載4000万円?
2020年12月03日の読売新聞(西部版・14版)が、またまた安倍問題で「特ダネ」。この書き方がとても興味深い。
私は野次馬読者だから、はっきりとは覚えていないが、これまで取り上げられていた問題は前夜祭の「補填800万円以上」ということだった。しかし、突然その5倍の4000万円という数字が出てきた。
ちょっと見た目には、えっ、4000万円補填?と仰天してしまう。
ところがよく読むと、その4000万円は「収支を合わせた不記載額」とある。この「収支をあわせた」という意味が私などにはよくわからない。たとえば「収入2000万円+支出2000万円=4000万円」なのか、「収入4000万円-支出4000万円=0円(帳簿の帳尻があう)」なのか。「会計事務(処理)」に詳しい人なら悩まないだろうけれど……。
そして、この「わからない」ところをさらに面倒くさくさせるのが、「不記載」ということばだね。
「参加者の会費徴収分も含めた開催費全額を後援会の政治資金収支報告書に記載すべきだとの見方を強めており」と記事には書いてある。800万円補填したかどうかよりも、「収支報告書に記載したかどうか」が問題であり、そこから「政治資金規正法違反」の容疑が発生する。
で、この瞬間。
「800万円補填」が隠れてしまった。
「800万円補填」は、問題じゃない?
800万円補填も問題だろうけれど、その5倍の4000万円の「不正」がある。そっちの方が大きい問題だろう。だから、それを重視する。それを問題にしないのは、おかしいだろう、といいたいんだろうなあ。
ここから「4000万円」と「不記載」が固く結びついて、「800万円補填」は隠される。「800万円補填」は安倍の問題だが、「4000万円不記載」は秘書の問題になる。「800万円補填」はそのうちの一部になる。つまり、安倍は「切り離される」(不問にされる)のである。
この部分については、はっきりこう書いてある。
「ただ」ということばがとても大事な働きをしている。領収書は「晋和会」宛てであると認めた上で、安倍には責任がない、と主張する。そのために、「秘書」がすべては後援会の収支を担当していたという「論理」を導入する。責任を「秘書」におしつけるための「論理」をつくるために「ただ」ということばがつかわれている。「論理構成要件」には「事実」だけではなく、「接続詞」が重要な働きをしている。あ、ちょっと問題がずれてしまったか。でも、私が問題にしたいのは、こういう「論理」の問題、「論理」にだれが、どんなふうにつくっていくかうそしてその「論理」によってだれが何を隠すかという問題なのだ。
言い直そう。
「判断した」と書いてあるが、これは「判断した」のではなく、そういう「結論」に達するように「論理」を作り替えた、という意味である。ここでは「論理」が展開されているのではなく、「論理」が捏造されていると読むべきである。「4000万円不記載」という「事実」は捏造はされていない。しかし、「4000万円不記載」を強調することで「800万円補填」を隠すという工作がおこなわれている。読売新聞は、それをそのまま「宣伝」している。
念押しするように、記事の最後にこう書いてある。
「慎重に検討している」というのは、安倍を聴取しないですませる方法を慎重に検討している。安倍を聴取しないですませるための「論理構築を慎重に検討している」ということである。つまり、どうすれば安倍を聴取しないですませられるかを検討しているということである。
そして、その「仮説」のひとつが、「800万円補填」を「4000万円不記載」のなかに含めてしまうことなのである。「800万円」を大きく上回る「額」がどうしても必要だったのだ。「800万円不記載」では、どうしても安倍と直結してしまう。しかし「4000万円」なら安倍(桜を見る会)と直結しないものもある。そこに焦点を当てようとしている。
「トカゲの尻尾切り」に違いないのだが、そのトカゲの尻尾の大きさを強調することで、安倍を隠そうとしている。
これは東京地検の「方針」そのものなのか、「4000万円」を表に出すことで、世論がどう反応するかをみるための「リーク」なのか、よくわからない。私は、後者だと思っている。「4000万円」に世論がとびつき「800万円補填」を忘れてしまうなら、「秘書立件(秘書逮捕)」は大成功。安倍は放免されるからだ。
で。
問題は、こういうとき記事をどう書き、見出しをどうとるかなのだ。記事と見出しは「800万円補填隠し」のために「4000万円不記載」を強調している。これを「4000万円不記載」よりも「800万円補填」をめぐる安倍の嘘答弁が問題であるという視点から問題をとらえ直せば、「4000万円不記載」に安倍はどうかかわっていたのかを追及しなければならない。つまり、「安倍を聴取する方向で検討している」という地検の「声」を引き出してこないといけない。そういう「声」を引き出す質問を記者はしないといけない。そういう「ねばり」のようなものが感じられない。単に「リーク」されるままに「特捜部は事情聴取の必要性などを慎重に検討しているとみられる」と書いている。今後、この問題は「4000万円」がひっぱっていく。他の報道機関も「4000万円」を問題にせざるを得なくなる。そして「4000万円」が強調されるたびに、安倍は見えなくなるのである。
だいたい「慎重に検討します」は「ていねいに説明します」とおなじで、単なる「表面的なことば」。「検討しません」「説明しません」という意味である。こんなことばを新聞が「宣伝する」のはおかしい。地検が「やっているふり」をしているのを追認する必要はない。世論を味方に、地検をひっぱっていくくらいのことをしてほしい。
#菅を許さない #憲法改正 #読売新聞
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2020年12月03日の読売新聞(西部版・14版)が、またまた安倍問題で「特ダネ」。この書き方がとても興味深い。
「桜」前夜祭/安倍氏公設秘書 立件へ/東京地検 不記載4000万円か/規制法違反容疑
安倍晋三前首相(66)側が主催した「桜を見る会」の前夜祭を巡り、東京地検特捜部は、政治団体「安倍晋三後援会」の代表を務める安倍氏の公設第1秘書を政治資金規正法違反(不記載)容疑で立件する方針を固めた。特捜部は安倍氏側による補填分だけでなく、参加者の会費徴収分も含めた開催費全額を後援会の政治資金収支報告書に記載すべきだとの見方を強めており、収支を合わせた不記載額は4000万円規模に上る可能性がある。
私は野次馬読者だから、はっきりとは覚えていないが、これまで取り上げられていた問題は前夜祭の「補填800万円以上」ということだった。しかし、突然その5倍の4000万円という数字が出てきた。
ちょっと見た目には、えっ、4000万円補填?と仰天してしまう。
ところがよく読むと、その4000万円は「収支を合わせた不記載額」とある。この「収支をあわせた」という意味が私などにはよくわからない。たとえば「収入2000万円+支出2000万円=4000万円」なのか、「収入4000万円-支出4000万円=0円(帳簿の帳尻があう)」なのか。「会計事務(処理)」に詳しい人なら悩まないだろうけれど……。
そして、この「わからない」ところをさらに面倒くさくさせるのが、「不記載」ということばだね。
「参加者の会費徴収分も含めた開催費全額を後援会の政治資金収支報告書に記載すべきだとの見方を強めており」と記事には書いてある。800万円補填したかどうかよりも、「収支報告書に記載したかどうか」が問題であり、そこから「政治資金規正法違反」の容疑が発生する。
で、この瞬間。
「800万円補填」が隠れてしまった。
「800万円補填」は、問題じゃない?
800万円補填も問題だろうけれど、その5倍の4000万円の「不正」がある。そっちの方が大きい問題だろう。だから、それを重視する。それを問題にしないのは、おかしいだろう、といいたいんだろうなあ。
ここから「4000万円」と「不記載」が固く結びついて、「800万円補填」は隠される。「800万円補填」は安倍の問題だが、「4000万円不記載」は秘書の問題になる。「800万円補填」はそのうちの一部になる。つまり、安倍は「切り離される」(不問にされる)のである。
この部分については、はっきりこう書いてある。
補填分の領収書は、ホテル側から安倍氏が代表を務める資金管理団体「晋和会」宛てに発行された。ただ、前夜祭は後援会が主催していた実態から、特捜部は会計処理も後援会が担うべきだと判断したとみられる。
「ただ」ということばがとても大事な働きをしている。領収書は「晋和会」宛てであると認めた上で、安倍には責任がない、と主張する。そのために、「秘書」がすべては後援会の収支を担当していたという「論理」を導入する。責任を「秘書」におしつけるための「論理」をつくるために「ただ」ということばがつかわれている。「論理構成要件」には「事実」だけではなく、「接続詞」が重要な働きをしている。あ、ちょっと問題がずれてしまったか。でも、私が問題にしたいのは、こういう「論理」の問題、「論理」にだれが、どんなふうにつくっていくかうそしてその「論理」によってだれが何を隠すかという問題なのだ。
言い直そう。
「判断した」と書いてあるが、これは「判断した」のではなく、そういう「結論」に達するように「論理」を作り替えた、という意味である。ここでは「論理」が展開されているのではなく、「論理」が捏造されていると読むべきである。「4000万円不記載」という「事実」は捏造はされていない。しかし、「4000万円不記載」を強調することで「800万円補填」を隠すという工作がおこなわれている。読売新聞は、それをそのまま「宣伝」している。
念押しするように、記事の最後にこう書いてある。
市民団体などが政治資金規正法違反容疑などで提出した告発状の対象者には、公設第1秘書のほか、安倍氏らも含まれている。安倍氏は後援会では役職に就いておらず、特捜部は事情聴取の必要性などを慎重に検討しているとみられる。
「慎重に検討している」というのは、安倍を聴取しないですませる方法を慎重に検討している。安倍を聴取しないですませるための「論理構築を慎重に検討している」ということである。つまり、どうすれば安倍を聴取しないですませられるかを検討しているということである。
そして、その「仮説」のひとつが、「800万円補填」を「4000万円不記載」のなかに含めてしまうことなのである。「800万円」を大きく上回る「額」がどうしても必要だったのだ。「800万円不記載」では、どうしても安倍と直結してしまう。しかし「4000万円」なら安倍(桜を見る会)と直結しないものもある。そこに焦点を当てようとしている。
「トカゲの尻尾切り」に違いないのだが、そのトカゲの尻尾の大きさを強調することで、安倍を隠そうとしている。
これは東京地検の「方針」そのものなのか、「4000万円」を表に出すことで、世論がどう反応するかをみるための「リーク」なのか、よくわからない。私は、後者だと思っている。「4000万円」に世論がとびつき「800万円補填」を忘れてしまうなら、「秘書立件(秘書逮捕)」は大成功。安倍は放免されるからだ。
で。
問題は、こういうとき記事をどう書き、見出しをどうとるかなのだ。記事と見出しは「800万円補填隠し」のために「4000万円不記載」を強調している。これを「4000万円不記載」よりも「800万円補填」をめぐる安倍の嘘答弁が問題であるという視点から問題をとらえ直せば、「4000万円不記載」に安倍はどうかかわっていたのかを追及しなければならない。つまり、「安倍を聴取する方向で検討している」という地検の「声」を引き出してこないといけない。そういう「声」を引き出す質問を記者はしないといけない。そういう「ねばり」のようなものが感じられない。単に「リーク」されるままに「特捜部は事情聴取の必要性などを慎重に検討しているとみられる」と書いている。今後、この問題は「4000万円」がひっぱっていく。他の報道機関も「4000万円」を問題にせざるを得なくなる。そして「4000万円」が強調されるたびに、安倍は見えなくなるのである。
だいたい「慎重に検討します」は「ていねいに説明します」とおなじで、単なる「表面的なことば」。「検討しません」「説明しません」という意味である。こんなことばを新聞が「宣伝する」のはおかしい。地検が「やっているふり」をしているのを追認する必要はない。世論を味方に、地検をひっぱっていくくらいのことをしてほしい。
#菅を許さない #憲法改正 #読売新聞
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「情報の読み方」は10月1日から、notoに移行します。
https://note.com/yachi_shuso1953
でお読みください。
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