詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

こころ(精神)は存在するか(8)

2024-02-08 13:13:58 | こころは存在するか

 和辻哲郎全集第七巻。「ボリス的人間の倫理学」。この本は、和辻によれば、先人の研究などをたよりに、その考えを「まとめたものにすぎない」(「序」、153ページ)。だから、これは意地悪い見方をすれば「剽窃」の部類かもしれないが、こうしたことを「剽窃」と呼ばないのは、林達夫の「タイスの『饗宴』」が書いている通り。林達夫と和辻は、この「剽窃」かどうかをめぐる「構想力」という考え方で共通していると思う。また、人間の「構想力」を考察するときに、個人を社会に還元しながらとらえるところで共通すると私は感じている。
 その「構想力」について、和辻は「構想力」ということばをつかっているわけではないのだが、183ページに、こんなことを書いている。

ポリスは(略)部族と部族との結合によって漸進的に成ったものとはいえない。それはむしろ氏族や部族の崩壊、従って氏族的段階からの飛躍によって、すなわち否定の契機の入り来たることによって、できあがったのである。

 「飛躍」を生み出すのが「構想力」であり。そして、その「飛躍」には、すでに存在するものを「否定する」ことによって成り立っている。先人の研究をまとめるとき、それをただ単に「集める」のではなく、あるものは「否定し」、あるものは肯定し、整理し(まとめ)、まだだれも書いていない「世界」へ「飛躍」するのである。「飛躍」するためには、「構想力」が必要なのだ。
 そして、この「構想力」を補足するのに、和辻は「原理」ということばをつかっている。途中を省略するが、こうつづいている。(183ページ)

ポリスは単に氏族が拡大されただけのものではなく、氏族の否定において、氏族と異なった原理によって発展してきたのである。

 その「原理」を見出すために、和辻はことばを動かしているとも言える。
 何かを「否定する」とき、その根拠になるのは、それまでと「異なった原理」である。「構想力」はその「原理」を直観的にとらえている。ここから「個人」というものの存在が浮かび上がるのだが、書いていると複雑になるので、きょうは省略。ただ、この「個人」が「倫理」と関係していることは、和辻の文章を読めば、おのずと理解できる。和辻は、こんな文章を書いている。(199ページ)

ポリス的人間はポリスにそむいて個人となることができる。この否定の契機にこそ倫理学が発生する地盤が存在するのである。

 私は、ここでも「否定の契機」ということばがつかわれていることに注目しているのだが、210ページには、こんな文章もある。

ポリスが人倫的組織であり、人倫の実現であるということは、私的存在の主張によってかえって明らかにされる。(略)ポリス的正義の意義は、私的な正義の主張と対比されることによってかえって発揮されるのである。

 「倫理」とは、そこに何らかの「飛躍」を含む、「原理」とはなんらかの「飛躍」を含むものである。そして、そこには「構想力」が常に働いている。
 どこに書いてあったか、急いで読み返していると見つけられないのだが、どこかに「道」ということばがあった。「道」は「倫理」であり、それは「生き方」でもあるだろう。私はいつでも「古寺巡礼」に出てきた「道」に引き戻される。

 

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(78)

2024-02-07 22:33:54 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「日の青春」。「青春の日」ではない。しかし、「青春の日」であり「日の青春」でもあるだろう。それは融合している。その融合は、

東西南北の風に

 という一行にもある。あるいは、この一行にこそ象徴されているというべきか。
 現実には「東西南北の風」というのはない。しかし、中空は東西南北に開かれている。そこにはどんな風が吹いてもいい。可能性、しかも開かれた可能性が存在する場所がある。同じように、開かれた可能性としての時間がある。青春だ。
 もしかするとエリティスは「東西南北の風」とは書いていないかもしれない。あらゆる方向に吹く風のように書いているかもしれない、と私は想像してみる。それから、もし中井があらゆるということばをつかうなら「凡ゆる」と漢字で書くかもしれない、と思ったりした。

 

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最果タヒ『落雷はすべてキス』

2024-02-07 22:05:57 | 詩集

 

最果タヒ『落雷はすべてキス』(新潮社、2024年01月30日発行)

 最果タヒは「谷川俊太郎」である。こう書くと、最果タヒにも谷川俊太郎にも不満があるかもしれないが、とても似ていると思う。たとえば、「指輪の詩」。

遠くのほうで
死んでしまった恋人たちの指輪が、
土星の輪よりも、ずっと遠くで、
無人で回転していた、
愛してるって言って、伝わらない間、
その言葉は唯一、永遠のことばになる。

 最後の二行の中にある矛盾。愛してるということばが伝わって永遠になるのではなく、「伝わらない間」「永遠」になる。この矛盾のあり方が、私には谷川のことばの運動と同じものに思える。そして、その矛盾を「死んでしまった恋人たち」という一種の違和感のあることばで誘い出す構造も、同じことばの構想力だと思う。
 しかしもちろん最果は谷川ではない。どこが違うのか。谷川なら「遠く」ということばを一行目と三行目で重複させないだろうとは思うが……、そういったこと以上に、「全体のリズム」がまったく違う。ひとつひとつ(ひとつづきの)ことばの切れ味、リズム、構想力は共通しているのに、全体が違う。そして、この「まったく違うリズム」がどう違うかは、実は説明がむずかしい。強引に言ってしまえば、谷川の「全体のリズム」は私には予測がつく。しかし最果については予測がつかない、とうことになるかもしれない。これは別の言い方をすれば、谷川の「全体のリズム」は私が生きてきた時代のリズム、あるいは私が生まれる前から存在するリズムだが、最果のリズムは私が生まれたあとのリズムである。「歴史的」に新しいのである。
 「残暑の詩」の書き出しの三行。

泣いている人は美しいな、
救えば恋が始まりそうだから。なんて言う人の、
恋が永遠に始まらなければいい。

 「声」で聞いたら、谷川が書いたと私は錯覚するかもしれない。しかし、「目」で読んだら谷川ではないと思う。読点「、」のつかい方、改行の仕方が「形式的」ではない。谷川には、あるいは谷川のことばの肉体には「歴史的形式」があるが、最果には、それがない。リズム、その緩急の変化が、「私の知らない形式」である。
 若い世代は、最果のリズムを自然に感じるだろうし、そこに「新しい肉体」を感じ、共感すると思う。私は「新しい肉体」を感じはするが、「共感する」とは言えない。つまり、最果の詩を読むと、「ああ、私は年をとったなあ」と実感するのである。
 わかるといえるかどうか、ちょっといい加減な言い方になるが、まあ、「わかる」。しかし、いっしょにそのことばを「生きる」という具合には言えない。そばにいて、見ていて(読んでいて、聞いていて)楽しい。
 「真珠の詩」の二連目。

私は、きみがいなくなっても、
きみの名前を呼ぶだろう。

 ああ、美しいなあ。海を見つめて、こんなことばを言えば、永遠がすぐそばにやってくるだろと思っていると、ことばはこうつづく。

私の海の波音はもうずっと、きみを呼んでいる。
それだけは、永遠なんだ。

 で、この瞬間、ああ、谷川はこうは書かないなあと思う。「私の」と「それだけは」は「古い形式」にはない「強調」である。
 私がこれまでに引用した詩に共通することだが、読点の多用がつくりだすリズム、その呼吸のあり方も。

 四十四篇もある詩集なので、少しずつ読んでいくことにする。感想のつづきを書くかどうかはわからないけれど。

 

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こころ(精神)は存在するか(7)

2024-02-06 17:45:27 | こころは存在するか

 「日記」を書くというのも、なかなか時間がかかる。書きたいことはたくさんあったのだが、時間がとれない。

 和辻哲郎全集第七巻。「原始キリスト教の文化的意義」を読む。私はキリスト教徒ではない。和辻もキリスト教徒ではない。だから、キリスト教を、あるいは「聖書(新約、旧約)」を「宗教」としてではなく「作品(文学)」として読み進み、そこからことばを展開する。聖母マリアについて書いた部分がとても刺戟的だ。
 聖母マリアを「想像の所産」と断定し、こう書いている。

本質の把握にとっては、与えられているものが知覚的経験的に与えられているか、あるいは想像力によって与えられているかは問わない。(147ページ)

 聖母マリアが「歴史的人物」ではない、つまり「事実」ではないとしても、そこに「本質」があれば、それで問題ではない。人間にとって重要なのは「本質」であるということなのだが、そのときの「本質」は、どんな根拠に基づくか。
 「経験」ではなく、「本質的直観」である、と和辻は言う。
 人間が、母を経験する。母と子の愛を経験する。それは個別的な体験である。それが「普遍(完全なるもの)」にどうやって変化するのか。「直観」によってである。
 こんなふうにも書いている。

我々は現実の世界において完全なるものを経験することはできない。すなわち現実の世界には完全なるものは存在しない。(略)個々の母を経験しながら「母一般」を直観し、それをさらに他の直観と結合しつつ、ついに「処女にして母」なるものにおいて完全なる愛と美を直観するに至るのは、内に働くイデーのしわざでなくてはならない。(148、149ページ)

 「イデー」とは何か。
 私は「こころ(精神)」が存在しないと考える人間である。「イデー」も「精神」のようなものではなか、と考えると、和辻のことばを頼りに自分のことばを動かしている私の文章は矛盾していることになるのか。
 だが、私が頼りにしているのは、その「結論」ではない。
 いま引用した文章で言えば「内に働くイデー」とよりも、私は「現実の世界には完全なるものは存在しない」ということばの方につよく刺戟を受けている。「完全なるものは存在しない」なら、「イデー」も存在しない。それは「現実の世界」ではない。
 存在するのは「構想力」、あるいは「想像力」であり、しかもそれは「直観」なのである。論理的根拠を持たない。では、何を根拠とするのか。「肉体」である、と私は考えたいのだが、その「通路」というか「方便」は、まあ、見つからないなあ。
 しかし、手がかりはあるかもしれない。
 和辻は「内に働くイデー」と書いている。「イデーは働く」と読み直してみる。「イデー」は固定してない。「動く」だけでなく「働く」、つまり動詞であり、なおかつ何かに作用するときの動詞である。あらゆる「動詞」は肉体とともにある。「飛ぶ」という人間にはできないことさえ、「できない肉体」とともにある。もちろんこの「できない」を「できる」に変えるのが、たとえば飛行機であるが、そのために人間は「肉体」を動かし、素材に「働き」かけ、いままで存在しなかったものをつくる。
 「こころ(精神)」ではなく、ただ「肉体」だけが「現実」として存在する。

 

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(77)

2024-02-05 22:46:43 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「エレニ」は恋人の名前だろう。この詩も長いのだが、

後悔はもう、見えない音楽、暖炉の火、壁の大きい時計のチャイムに変わった。

 この一行が、私にはいちばん印象に残る。「後悔(する)」と「変わった」が呼応する。そう、何かが「変わった」のだ。「変わる」という動詞は、この詩の中に、ここに一回だけ出てくる。しかし、それは随所に隠れている。
 「見えない音楽、暖炉の火、壁の大きい時計のチャイム」の三つの「もの」は、どうつながっているか。つないでいたのは「エレナ」だろう。つまり「エレナ」が「変わった」言うことなのかもしれないが、詩人が「変わった」のだとエレナは言うかもしれない。
 それは、区別がつかない。
 ただ「変わった」ということだけがある。そして、悲しいことに「変わった」と理解するのは「変わらない」何かである。それが「後悔」を支えているというと奇妙な言い方になるが、「変わらない」何かがあるからこそ「後悔」が生まれてくる。
 この「後悔」と「変わった」の呼応が、「後悔はもう、」の読点「、」(呼吸の変化)に深く沈んでいく。
 長い詩だが、ここには、その深い沈黙がある。たくさんのことばが書かれているが、そのことばが生まれてくる「底」に沈黙がある。沈黙から生まれ、沈黙へ還っていく、詩人のことば。

 


 


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Estoy Loco por España(番外篇431)Obra, Luciano González Diaz

2024-02-04 23:11:11 | estoy loco por espana

Obra, Luciano González Diaz

Dos personas bailando. El hombre (probablemente) está de pie y la mujer dobla su cuerpo. Sin embargo, tiendo a confundirlo con un hombre que eleva a una mujer en alto.
A partir de ahora, el hombre va a levantar a las mujeres en el aire. Quizás los dos estén trabajando juntos para alcanzar lugares más altos a los que no pueden llegar solos. El hombre levanta a la mujer, y la mujer levantada saca al hombre del suelo. Los dos vuelan así por el aire.
Me siento de esa manera.
El movimiento ascendente lleva mi mirada a un punto al que los dos aún no han llegado. Veo una "altura" que aún no existe. Por su "altura", entiendo mal esta obra. Pero.....¡qué hermosa!

 ダンスするふたり。私は、見間違えてしまう。
 よく見ると、男が(たぶん)まっすぐに直立していて、女が体をくねらせているのだが、男が女を高く持ち上げていると勘違いしてしまう。
 これから男は女を宙高く持ち上げるのかもしれない。ふたりで協力して、ひとりでは届かない高いところへ行こうとしているのかもしれない。男が女を持ち上げ、持ち上げられた女が、そこから男を引き上げる。ふたりは、そうやって宙を飛ぶ。
 そんなことを感じてしまう。
 上へ上へと動く運動が、私の視線を、まだふたりが到達していない地点にまで運んでしまう。まだ存在しない「高さ」を見てしまう。その「高さ」のために、私は、この作品を見間違える。

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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(76)

2024-02-03 20:42:05 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「記念日」は長い詩である。四連で構成されている。どの連も、

私の人生もここまで来た。

 と、始まる。
 なぜ繰り返したのか。書いても書いても書き切れないからだ。書く度に、書いたことの奥から、また書かなければならないことが現われてくる。それは、詩人がいるところへ打ち寄せる波のように。
 それは一行であって、一行ではない。そして四回繰り返されているのだが、四行というわけでもない。絶対的な一行なのだ。繰り返すことで、ほかのすべてのことばを飲み込み、融合させてしまう。

 

 

 


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青柳俊哉「ひまわりのみずうみ」ほか

2024-02-03 16:36:03 | 現代詩講座

青柳俊哉「ひまわりのみずうみ」ほか(朝日カルチャーセンター福岡「現代詩講座」、2024年01月29日)

 受講生の作品。

ひまわりのみずうみ  青柳俊哉

地下から吸い上げた水が
顔へ湛えられていく
風が水面をゆっくりと撫ぜて
それぞれの花びらの形を縁取る

溢れだす水は
ひまわりの花と種子
額も頬もゆるやかにひらかれて
太陽へ吸われていく

ひとつにむすばれる地下水と太陽
維管束から空へみちあふれていく
環状の洪水 虹の帯のように空をおおっていく
ひまわりのみずうみ 

 この作品は、二バージョンあった。第四連が、少し違う。もうひとつの作品は「ひとつにむすばれる地下水と太陽/ひまわりのみずうみ/維管束から空へみちあふれていく/環状の洪水」。
 「環状の洪水」で終わる方が切れがいい、という意見があった。作者の意図も、水の運動を象徴するものとしての虹(地下水がひまわりの茎をとおり、花をとおり、空に開いていく)を虹ということばをつかわずに表現するということにあったようだ。(最初に、引用詩ではない作品を読んだ。)
 しかし私は、「ひまわりのみずうみ」で終わる方が世界が広がると思う。
 虹そのものが、地上の「ひまわりのみずうみ」にも見える。つまり、空に地上のひまわりが映っているように感じられるし、その空の光景と地上の光景が鏡のように互いを反映しているようにも感じられる。
 地下の水を吸い上げるだけではなく、その恵みの雨がひまわりの花を開かせるという「往復運動」が「ひとつにむすばれる」を強調すると思う。
 また、そういう論理的な、一種の硬質な意味が「維管束」「環状の洪水」ということばのなかで結晶するよりも、「ひまわりのみずうみ」のような、具体的な広がりを感じさせることば、視覚的(感覚的)なことばのなかで解放される方がのびやかな気持ちで読むことができると思う。
 水の動き(描写)が「湛えられていく」「溢れだす」「みちあふれていく」と変化するに連れて、「顔」が「額/頬」とより具体的に変化し、「花」になって「ひらかれて」いく。その動きの呼応がとても自然だ。

埋み火  杉惠美子  

そんな時があったよねと
そんな話しをしたよねと
そんな事を考えてたよねと

そのたびに小さな栞をはさんだ

ページをめくりながら
めくりながら

確かな 今日の自分を
感じた時

最後の栞を
自分の手で そっと置いて
そのページを開いておきたいと思う

 「栞」は付箋だろうか。「そのたびに」ということばが、読んでいる途中、一回の動きというよりも、繰り返しを感じさせる。何度も何度もが、一連目にも現われている。
 最終連、「最後の栞」は付箋ではなく、「自分の手」、そして「ページを開いてお」く。
 このことばの運動に、「今のいちばん大事な時間を過去にしたくないという思いがあふれている」「閉じてしまうと思い出になってしまう。思い出にしたくない、忘れたくないとい気持ちを感じた」という感想が受講生から聞かれた。
 「確かな今日の自分」ということばは、「過去」との比較のなかでつくられるものだろうか。一連目の三行が「過去」。しかし、「過去」は思い出すとき、いつでも「いま」のすぐそばにある。密着しているというよりも、いりまじり、「いま」を支えている。「確かな今日の自分」のなかには「確かな過去の自分」が存在する。本は(そのことばは)、その過去に存在し、現在も(きょうも)存在し、あす(未来)にも存在するだろう。その「道」を開くのは、ことばであると同時に、肉体だ。「自分の手」という具体的な肉体が詩人の意思を語っているように思える。ここは「付箋」ではだめなのである。
 タイトルの「埋み火」(灰の奥にあって消えない火)が「肉体」の奥に隠れている情念のように赤く燃える。そういうことを感じさせるためにも「手」ということばは、この詩では欠かせないものだろう。

双子座流星群  緒加たよこ

こんな星空は久しぶり
どんなに目を凝らしても
流れ星は見えないけれど

今夜は新月だから沈んでいます

だから星が沢山 見えるはず

 星に願いはないことを
 終わることさえ
 流れることさえ
 瞬けば

そういえばあまりよいことを願って来ませんでした

 今夜はもう見えない
 今夜はもう終わりたい

星は貼りつく
冴え返る 沈みの新月

 講座後に作者が手を加えた作品。連の構成、一字下げ部分が大きな変化。「瞬けば」ということばも追加されたもの。
 一字下げに関しては、講座で読んだ作品は「今夜は新月だから沈んでいます」と「そういえばあまりよいことを願って来ませんでした」が一字下げだった。このことについて、受講生のあいだで「どう解釈するか」「一字下げの行は描写ではなく、心情の吐露になっている」というようなやりとりがあった。
 改作では、一字下げではない行は「他者」に向かって語りかけているが、一字下げの部分は作者自身の「独白」になっているように思える。こころの奥底の、もうひとりの私の声ということもできるかもしれない。
 この対話が最後の一行を鮮明にする。明るくする。
 「冴え返る」のは論理的には「星」なのだが、なぜか見えない「沈みの新月」そのものが「冴え返っている」ような感じがする。見えないのに、その黒い月が見える感じがする。
 感想を語り合ったとき、受講生が「夜空の澄み渡った感じ、空気の冷たさを感じる」と言ったが、それは夜の風景だけではなく、もうひとりの自分との対話が強調されることでさらに強まったと思う。

 

 

 


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中井久夫訳『現代ギリシャ詩選』読む(75)

2024-02-02 23:25:20 | 中井久夫「ギリシャ詩選」を読む

 「七つの夜想曲」は文字通り七つの作品群。書き出しの「夢は夢に続いて」のことばどおり、ことばがことばにつづいて広がる。象徴的な一行なので、この書き出しについて書こうかとも思ったのだが、

朝 残ったは消えそうな影、

 「Ⅱ」の二連目に登場する、この行。「夜想曲」なのに「朝」が出てくる。そのあとに、一字分の空白、一字空き。「残ったは」の「は」のつかい方というか、「残ったのは」ではなく「残ったは」という言い方、そして行末の読点「、」。非常に工夫が凝らされている。
 この詩では、中井は、読点、句点を駆使してリズムに変化を与えている。行末に句読点がないものもあるが、それは句読点がないのではなく、一字空きが見えない形で書かれているのかもしれない。もしそうであるなら、「朝 残ったは消えそうな影、」は「改行」を隠していることになる。句読点では表現できない、第三の「呼吸」のようなものが、この一行にはあるのだ。
 その印象的な「呼吸」が影響して「残ったは」という表現が生まれてきている。
 「残ったものは」と書いてしまえば、意識は「もの」に向かう。しかし、「残ったは」の場合は「もの(対象)」に向かわずに、意識は「残った」という運動(動き)の方に向かう。動き(運動)なので、それは「見ている」ときにだけ存在する。「見ていない」と存在しない。言いなおすと「見逃す」ということがある。
 そうした運動のあとに「消えそうな影、」がやってくるのだが、これがまた不思議である。「朝」なのに、「影」には「消えそう」という修飾語がついている。朝の光が差してくれば「影」は消えないだろう。「消えそうな影」とは何のか。
 疑問を、あるいは読者の好奇心を引きずったまま、行末に読点。つまり、この一行には「つづき」があると予告している。「夢は夢に続いて」の「続く」という動詞が、この読点のなかに「意識/意味」としてよみがえってくる。
 さて、行末が読点ならば、そして読点の前が「名詞(影)」ならば、読点の部分に「助詞」が隠れていることになるが、そして日本語の場合「助詞」は必然的に「動詞」をも要求するが、隠れている助詞につづいて隠れている動詞は何か……。
 書き出しに引き戻されるように感じながら、その音楽にあらわれる「繰り返し」のようなリズムに、私は、突き放され、引きずり込まれ、酔ってしまう。
 原文との比較なしにこんなことを書くのは、たぶん危険なことかもしれないが、私は、こういう訳の工夫に、中井の「シンクロする力」を感じる。中井は詩人の感覚とシンクロし、その揺れ動きをそのまま再現していると感じる。

 

 

 


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