BLACK SWAN

白鳥のブログ - 日々の世界を徒然と

Unnamed Memory 全6巻 感想: 言葉を失わずにはいられない顛末で、これはちょっとどうなのだろう? 

2024-01-10 15:23:09 | Unnamed Memory
4月から始まるアニメのPVを見て、

お、いいじゃん、久しぶりに、騎士と姫、王と魔女、の王道魔法ファンタジーじゃん!

とピピッと来て、

だったら、まだ時間があるから原作に手を出してみるかな、

と思って読んでみたのだが・・・。

確かに3巻までは面白かった。

若き王オスカーと、最強魔女ティナーシャの二人が、徐々に距離を詰めてバカップルwになるところまでは。

そこまでは普通に王道の魔法ファンタジー。

ところが、3巻の最後で、物語は突然、転調して、ループもの、に転じてしまった。

ティナーシャを襲った悲劇の大元を、400年前に戻ったオスカーが潰して、ティナーシャを解放する話。

そこから歴史改変ものによくある「異なる歴史」が始まる。

しかも、それが進むに連れ、実はループしていた世界であり、そこにはループの事実を書き留める錨役、固定点を担う一族もいた・・・という話になって。

・・・正直、途端につまらなくなった。

え? 今さらループもの? って思ったら、実は原作は、2008年にウェブに公開されていたものだと知って、なるほど、さもありなん、と納得。

ギリギリ『まどマギ』以前の公開で、だから、ループものにとどめを刺す、ってことがなかったときに書かれたもの。

ただ、「今」読む側からすると、『まどマギ』だけでなく『シュタゲ』や『リゼロ』を知った後では、ただただひたすら「今更感」しかなかった。

だって、4巻以降、3巻までに起こった事件となんとなく似たようなものが登場し、また似たような宮廷劇を繰り返されるのだもの。

バカップルのやりとりにしても、3巻までは、オスカーがティナーシャを口説く展開だったの、4巻以降、それも逆転して、今度はティナーシャがオスカーを口説き落とそうとする始末。

既視感だらけで、4巻以降はとにかく食傷気味だった。

しかも、よくあるパタンとして、オスカーに「子孫を残せない」呪いをかけた張本人である「沈黙の魔女」が、実はオスカーの母方の祖母だったという始末。

そして、そのオスカーの母の死に、「時間遡行」の呪具が絡んでくるという出来すぎた展開。

さらに、その呪具は、オスカーたちの世界を観察する「外部者」なる、いわばゲーマスポジションの存在が残した、人類観察器具だったという設定w

いやー、ほんと、もうお腹いっぱいですわ!って感じで、しんどかった。

その上で、さらにさらに、オスカーの祖先が、その「外部者」のひとりだったというのだから、盛り込むのにも程があるw

つまり、オスカーは、魔女の孫であるだけでなく、外部者=異世界者の末裔だったという始末。

なんで、呆れてるかというと、ループものって、結局、こうした「世界の謎」をバラすことが物語の締めと直結しているからで、ただ、その場合、想定される結末がほぼ予想可能で、それに気づいた途端、ページを繰る手が遅くなってしまうから。

案の定、予想通り、オスカーとティナーシャの二人が、時間遡行の呪具を破壊した結果、世界から「逸脱」した存在になって、生まれ変わりはあれど、外部者由来の呪具の完全破壊の時まで永遠に存在する、そのものズバリ「逸脱者」に転じてしまう、という話。

あー、もう、既視感だらけで、しらけた、しらけた。

なんで、普通に王道ファンタジー、最後までやらないかな。

ちなみに、逸脱者になって以後のオスカー&ティナーシャの物語は、続編「After the end」シリーズとして、継続されている。

そちらは、いわば『UQホルダー』みたいな「悠久を生きるもの」の苦悩を背負う話になるみたい。


・・・ということで、せっかく全巻読んだのに、なんか、ものすごく残念な感じしかしなかった。

簡単に言うと、『リゼロ』が、死に戻り、によって、無間地獄の煉獄になってしまったように、ひたすら不愉快な話になってしまった。

結構、読み始める前は期待していたんだけどなぁ。。。

なんでループなんかで、お茶を濁すかなぁ。

ループものが嫌なのは、行き着く先は「僕と君」の二人の物語にしかならないから。

周りの人間たちが皆、等しくモブに落ちてしまうから。

それって、本気でつまんないのだけど。

だって、「僕と君」のナルシスティックな関係だけが繰り返されるものになるから。

その結果、物語内事件の細部や顛末について語る力を奪われてしまうから。

ホント、ループものって、安易で嫌い。

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