前巻の最後で魔に飲まれかかったカティをどう守るか、その検討を始めるところから始まった第10巻だったけど。。。
冒頭のカティの幼少時のエピソードも凄ければ、終盤のオリバーとシャーウッド兄妹の話も凄いw
魔法使いという存在が人外であることを示したエピソード。
ていうか、両腕を餌の代わりに魔物に差し出したカティって、幼少時においてすでに片足、魔に踏み込んでいるようなものじゃないの?
いくら魔法で「手が生えてくる」からといって。。。
やっぱりこれはカティが真っ先に魔に呑まれるんだろうなぁ。
でもきっとそれを救うのはオリバーではなく・・・となりそうで、今から切なくなる。
で、そのカティの逸話を軽く一蹴する後半のシャーウッド家のエピソードの凄惨さといったら。。。。
これはもう、Fateの間桐家そのものじゃないかw
魔道に堕ちた一族の末路。
シャーウッドのお館様とその奥方様の非道ぶりといったらない。
いま、常軌を逸している、と書こうとしたのだけど、でも、どうやら彼らには「常軌」なんてものが最初からないのだろうなと気づいて書くのをやめた。
それくらい、めちゃくちゃ。
忘れないうちに書いておくと、シェラの実家であるマクファーレン家も似たりよったりなんだろうな、きっと。
エルフの血をとりこむくらいなのだから。
とにかく、「血筋」に対する執着が凄い。
今で言えばその実体は遺伝子/DNAってことになるのだろうけど。
お館様の執着もとどのづまり、それに帰着する。
その結果、歴史によくある近親相姦ってことになってシャノンの悲劇が繰り返される。
ただ、ちょっとだけ疑問に思ったのは、あんなお館様の下で育ったにもかかわらずグウィンとシャノンが最初からオリバーに好意的だったのが不思議だった。
彼らが、それこそ常識的に人権派になっていたところがね。
自分たちがお館様の暴挙を受けたからなのか、
それとも、身内に、クロエという自由な魔法使いの象徴のような存在がいたからなのか、
あるいは、そのクロエの両親の代で、個々の魔法使いの尊厳や人権に配慮する必要が説かれる何らかの歴史的事件があったのか。
そのような魔法使いの世界を震撼させる出来事があった、お館様の代との間に断絶をもたらすような出来事でもないと、ちょっとあのグウィンとシャノンの常識人ぶりは逆に理解しにくいかも。
まぁ、オリバーの父のエドガーが謀反を起こす際の組先に親戚の人たちもいたということだから、お館様夫妻が狂人過ぎただけなのかもしれないけれど。
ともあれオリバーが幼少期を過ごしたシャーウッド家が生地獄であったことはよくわかった。
クロエがいたらどうなっていたのだろう。
逆に、あの場にシャノンがいなかったらエドガーとオリバーは門前払いで終わってたんだろうな。
魂魄融合の恐ろしさ。
さっきFateの間桐家って書いたけど、この魂魄を扱うあたりは、むしろ『魔法科高校の劣等生』の四葉家の方が近いのかも。
そう思うとオリバーって意外とお兄様たる司波達也に境遇がちょっと似てる。
となると、オリバーもいつか達也みたいに、超凄い魔法使いに目覚めたりするのかな?
つまり、これまでの魔法使いの尺度としては測れない存在として。
ナナオがそうなるとばかり思っていたけど、このあたりのオリバーの動きからすると、そうした超変化もあるのかもw
今回、デメトリオを倒すこともできたし。
エンリコを倒したときのように、次巻以降、またオリバーの基礎能力が底上げされる描写があったりするのだろうか?
まぁ、あったとしてもそれは、前回の経験から、今度は黙々とオリバーが自己調整を図るだけかもしれないけれど。
それにしても、VSデメトリオ戦は、実質的に、オリバーの過去を明らかにすることに使われてしまった。
しかも決着自体、ユーリの助力という裏技をつかっての勝利だったし。
ちょっとエンリコのときとは違った。
もちろん、同志の間でまた貴重な先輩たちを失う羽目になってしまったわけだけど。
今回、ミリガンとカティの名が、同志の勧誘先として挙がっていたけど、どこかのタイミングでそれもあるのだろうな。
だってこのままだと同志だってどんどん死んでしまうだろうし。
てか、前から思っていたけど、教師への復讐の際、これだけ在学生の同志がまとまって亡くなったら、学園側もおかしいとは思わないのだろうか。
一応、全員、迷宮に潜って未だ帰還せず、という失踪者扱いされるだけなのかもしれないけど。
そのあたり、グウィンがどうやって学内情報を操作しているのか、ちょっと気になってきたw
もちろん、それ以上に、どうやって勧誘しているのかも。
だって、ルルーシュみたいに、オリバーが直接、幹部候補を勧誘しているわけでもないじゃない?
となると、勧誘の殺し文句は何なのか?
しかも命を散らすことも辞さずに超格上の魔法使いである教師たちに挑むとか。
死にたがりの集まりでもないとそれは無理なんじゃないかな、と。
それくらい、魔法使いの社会が歪んでいて、そのことに心底辟易としている学生が多い、ということなのかね?
それにしても、今回はいつものほぼ倍近くのページ数があったので、中身も濃かった。
特に中盤の、オリバーとナナオをめぐる剣花団の面々のエピソードや、敬愛する君主を汚されたと激怒したテレサの暴走とか。
そりゃ、相手がナナオじゃ、テレサの敗走の一択だよねw
でもまさか、ここで意気消沈するテレサの前に現れるのが、リヴァーモアと例の亜霊体生命体、どうやら「ウーファ」という名をつけられたようだけど、その「半霊」だったとは。
この出会いは全く想定外だったので、この先、テレサとサイラス&ウーファの繋がりにも注目だな。
でも、ウーファって、絶対「ファウ」の裏返しだよねw
サイラス、おまえさー、意外と可愛い所あるじゃないw
それに、サイラスがやたらとテレサのことを「小さな肉」と呼んでいたところは相変わらずだな、と思って笑ってしまったw
そういう意味ではサイラスにも何らかの心境の変化が起こっているのかもしれない。
とまれ、テレサが、オリバーでもグウィンでもなく相談する相手が出来たのは面白い。
まさか、こんな形でリヴァーモアがオリバーの圏域に入ってくるとは思わなかったけど。
で、そのオリバーの圏域ということでいえば、今回は今後の剣花団を占う大きな動きが目白押し。
まずは、肉食系女子であるナナオが遂にオリバーを射止めた・・・といいたいところだったけど、シャノンとの間の意識のない不幸な初体験で性交に対して過剰にピュアになっているオリバーとは、最後までは行かず、オリバーとナナオの距離は縮まり、安定化したけど夜伽の話はまたこれからということで。
ただ、この二人の行く末を思うと、それが最後までお預けのまま進みそうな気がとてもする。
そして、そんなナナオとオリバーの危うい関係をなんとか維持しつつ剣花団を守ろうと誓い合うシェラとピート。
確かにピートはちょっと暴走気味だけど、リバーシという両性具有的存在の彼/彼女が、今後、オリバーとどういう距離をもつかも注目かも。
ていうか、すでにオリバーも魔に半分くらい堕ちてるでしょ。
考えることが過剰なまでに合理的すぎる。
同様に、シェラもね。
彼女についてはおいおいマクファーレン家の闇とともにあれこれ明かされるんだろうな。
友愛こそを大事するにするシェラはシェラで、愛情の向かう先や表現方法が少しズレてる感じがするし。
一方、オリバーとナナオの接近にヤキモキするカティとをそれをなだめるガイ。
ピートがリバーシというレアキャラになってすっかり霞んでしまってモブ落ちしそうなガイだけど、ここに来てチームのまとめ役として良心の塊みたいになってきたけどどうなのだろう。
それ普通に考えたら、イイ人属性からの早死にフラグだよね?
この作品に限って、そんなテンプレ展開はないと思いたいけど、だったらガイはどういう役回りになるのだろう?
ということで、内容が濃すぎて本巻は困る。
まだまだ書き足りないこともあるし、そもそも本巻は、ユーリが登場した6巻以後の展開をまとめる「中締め」的役割も濃い。
なので、ちょっとまた思いついたら別途書くかも。
ということで、デメトリオを討った後のオリバーたちを描くであろう11巻へ。