近所の産直で、珍しいものを見かけました。
この産直は、とても小さくてローカルなので、基本的にはあまり冒険したものは置いていないのです。
でもたまに変わったものがあります。
今回は「山査子 サンザシ」。
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なにこれ初めて! これまでも出ていたのに見逃していたのか!? 不安になってお店の方に聞いてみましたが、 「いや、今年初めてなんですよ。だから私たちも使い方よく分からなくて・・」 とのこと。
これは買ってみなくてはね。
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ぱっと見、さくらんぼくらいのサイズの赤い実です。 でも比重はずっと軽く、コロコロと軽い実です。
サンザシという名前はずっと前から知っていた気がします。 子供の頃に読んだ児童文学のあちこちで見た記憶が。 (ちなみに英語だと hawthorn ホーソーン や mayblossom などいくつもの呼び名が。 『緋文字』の作者 ホーソーンは、Hawthorne で末尾にe がつくみたいです。)
あと、高校生頃だったか、十円玉くらいのサイズの円盤状の中国の甘酸っぱいお菓子(山査子餅)を食べたことがあります。 父が中国に赴任していたのでそのおみやげだったかなあ。それとも友達にもらったのだったか。
山査子餅というのはこれです。
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(写真は借り物です) この写真だとほんとに10円玉みたいな色合いに写っていますが、もう少し赤紫色ぽかったような気がします。 ごく小さなうすべったいお菓子ですが、酸味のパンチが効いているので、この1枚で結構満足感があるものでした。
それにしても、この状態では、もとの果実が何か、というか、もとが果実かどうかすら不明ですよね。 なのでサンザシってずっと謎の植物でした。
さて、初めて見る本物のサンザシを観察してみます。
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大きさは、小さ目のサクランボくらい。 色はきれいな赤い色で、つるつるしていて、ゴールドの点々が散っています。 軸がついている側は、ほとんど窪んでいません。 花落ちのが環は、大きく窪んでいて、ガクが残っています。
断面を見ると、皮の赤さが中までしみているように、果肉も赤く染まっています。 果肉が赤いりんごの御所川原や、ムーンルージュ・なかのの深紅を思いおこさせますが、赤さはサンザシが一番濃いかも。
まずは生でちょびっと食べてみました。 皮はとても薄く、果肉は以外にも、リンゴやナシとは違って、フカフカ。 (りんご的なシャキシャキ系か、もしくは梨みたいにツブツブがあるのかと想像していました) 水分がなくてわりときめ細かいスポンジ状(劇落ちスポンジくらい?)。 古くなったりんごからさらに水分を抜いた感じかな(よりきめ細かい)。
こんなにフカフカなので、持った感じ、比重が軽かったのですね。 ただ、組織が柔らかいせいか日持ちはしなさそうで、軸が千切れたところなど、割といたみが早そうでした。
味は、甘さは控えめだけれど、ほどよい酸味があって、古くなったりんごよりは美味しいです。 (これが、加熱するとまた変わってくるのです!)
種は、りんごとは違って鞘には入っておらず、ツブツブしたものが数個あります。
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この種は、縦長形状で、小石のように固くてなめらか。 色は、サクランボの種のような色合いでしょうか。
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種は、当然バラ科だし5個かと思ったら、受粉の度合いによるのか、いろいろでした。これなどは4個。
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こちらは5個。 きっちり5個あるものの方が少なかったかも。 セイヨウサンザシのある品種は、種は一個なのだそうです。
種と軸、花落ち部分を取り除くために、縦横に4分割しました。
大量に木から摘んだ場合は、水たっぷりで煮て、透明な液体部分のみ使ってジェリーにしたり、越してジャムにするのかなと想像しますが、丸ごと使うのはちょっとおすすめできません。 というのも ↓
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こんな風に、結構虫食いの個体があるのです。 少なくとも半分に切って、中をチェックした方がよさそう。
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きれいにしたサンザシに、お砂糖をまぶしてしばらくおいたところ。 あまり水分は染み出してこず、白っぽかった果肉がちょっと濃い色合いになってきました。 (リンゴの変色みたいですね) で、これを電子レンジで加熱。
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果肉が少し透明になり、全体が赤く染まってきました。 なんかきれい☆ わーい☆☆
で、この状態で食べてみると、生のときはフカフカだったのですが、今度は不思議とモチモチに。 皮はもともと薄かったので全く気になりません。 このモチモチ感はペクチンたっぷり、ってことかな?
で味なのですが、さっきは、ああ、酸っぱいなーくらいの味わいだったのですが、加熱後は 「うわ、すっぱ!」 と、酸っぱいもの好きの私が思うほど。 触感のモチモチ感が楽しくて、ひとかけずつつまみ食いするのですが、4つくらい食べると、酸っぱさのあまり一休みしたくなるほど。 ダンナサマは、酸っぱいもの、そこそこ大丈夫なのですが、「食べてみる?」と聞いてみても、 「いや、やめとく。サンザシが酸っぱいって知ってるし」 ですって。子供の頃、何らかの形のサンザシを食べたことがあるようです。(時代? それとも九州ローカル?)
酸味が強いだけでなく、独特の風味があります。 (昔食べた中国の山査子餅を思い出す・・・。でも加工食品のアレよりはもっとおいしいですけれど) なんかいい香りです。
せっかくの強い酸味なので、酸味不足のものとあわせてみることにしました。 丁度、酸味がなくて物足りないりんご(ひめかみ)があったので、それをレンジで加熱してから混ぜます。
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加熱後のかさで、サンザシ:りんご=1:2くらいかな? これをスティックミキサーでピュレ状に。
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きれいなオレンジピンクのジャムになりました。 (りんごが黄色かったので、オレンジ系の色味が強くなったのかな)
だいぶりんごで希釈しましたが、これでもまだ酸味のパンチが効いています。 でももっと薄めると、サンザシの風味が薄れてしまうかなー。 サンザシのペクチンのせいか、とってもぽってり固めになったので、水を足してもいいのかもしれません。
初めての食材、とっても楽しみました。 今年の売れ行きが悪いと来年出てこないかもしれないけれど、注文してでも買ってみたいです。
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■参考情報
サンザシ Wikipedia
この項目は日本語版が一番充実していました。
というのも、よく見ると、中国から日本に伝わった Crataegus cuneata という品種についての項目でした。
英語圏でも結構有名な植物なはずなのに、と思って調べてみると、英語が充実しているのはこちらでした。
Crataegus monogyna (セイヨウサンザシ、シングルシードサンザシ)
Crataegus (サンザシ属)
さらに調べると、サンザシにはものすごくたくさんの種類があるようです。(全部利用される訳ではないとは思いますが)
黒い実のサンザシが約40種
黄色い実のサンザシが135種くらい
(赤い実のはおそらくさらに沢山)
へー、黄色い実・・・と、書いていて思い出しました。
イタリアで、黄色い実のサンザシ、見た!
うわー。完全に忘れていた。ナポリの市場で、小さいマルメロみたいなの、なんだろう、と思ったのでした。
今回赤かったし、全然違う雰囲気。
あと、イタリアのは、買わなかったし印象が薄かったのだわ、うむ。
写真を再掲しておきます。AZZERUOLE がイタリア語のサンザシになります。
三番目のものは商品ラベルがなくてよく分からなかったのですが、たぶんサンザシじゃないかなと・・。
山査子餅は、もうちょい人工的な風味もしたかも・・・(中国ぽい香料とか)。
欧米ではそこらに生えていそうですよね。きっとリンゴなどより丈夫なんでしょうね。
花も、バラ科の五弁の白い花がびっしりついて、きれいなようです。メイフラワーってこれかー、と思いました。
園芸カタログにもよく苗木が載っていたし、わりと栽培が簡単な果実なのかもしれません。見た目からりんごの極小版のような感じ?と勝手に想像していましたが、不思議な果実なんですねー。