また、「味がなくて美味しい」ものをご紹介します。
名前は「やっこめ」。
焼き米、焼米などとも呼ぶものです。
今回買ったのは、大分県産のこちら。
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夏の交通会館マルシェに出店されていた方から購入しました。 まずはどんなものかご紹介。
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早刈りの緑色の状態のお米を籾ごと釜で炒って、平たく潰し(最近はローラー、昔は杵で搗いたのだそう)、籾殻を除去したもの。 色は薄緑色で、形状はぺったんこです。
ぺったんこのお米といえば、インドやネパールの食材にチウラ(beaten rice 打ち米)というものがあります。 一度食べたことがありますが、そのまま食べることができるもので、サクサク、パリパリしています。 ごはんとカレーの上にさらにこれを少々トッピングして、サラダのクルトン的な位置づけで使われていました。 (他にも使い方があるとは思いますがまだよくわかりません)
日本にもチウラに似たものがあると知ってとってもびっくりしました。 でも、このやっこめは、そのまま食べるのはちょっと無理。 乾燥しちゃったごはん粒のように、ガギガギに固いです。 食べる場合はお湯でふやかしてから。
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お湯でふやかすとこんな感じ。 横姿が写っている粒がひとつありますが、戻してももとのようにぷっくり丸くは戻らず、平たいままです。
大豆を蒸して平たくつぶした打ち豆が、もとの大豆とは違うみっちりした食感になっているように、このやっこめも、独特のもちもちした食感があります(原料はうるち米ですが)。
独特の歯ごたえもいいのですが、特筆すべきと思うのは、戻すのに使ったお湯の味わい。 青刈りの玄米は、まだ糖質がすべて澱粉化していないのかな、なんともいえない味の濃さ、甘みのようなものがあります。 重湯やおかゆの液体部分はデンプンの甘さ感だと思うのですが、それとは全く違う味わい。 微かな香ばしさがあるとはいえ、カリカリに炒ってあっておせんべいのような風味の玄米茶ともまた違います。 本来は塩などで味付けするようですが、私は素材のままのこの味が好み。 (ミネストローネスープに入れてもおいしそう)
お湯を注ぐだけで出来上がるインスタント食品ですが、そこそこの量食べる場合は、少量ずつ、その都度お湯をたっぷりに作って食べるのがおすすめです。(お湯が美味しいので)
やっこめづくりについて、お店の方(女性農家さん)に聞いてきました。
8月、まだ暑い時期に、田んぼの一番山側の、冷たい水が入り込むような場所の稲を刈り取って作るそうです。 そういうところは低水温により稲の育ちが遅く、最後まで成長不良なのでやっこめに向いているのだとか。
あと、この時期は、台風シーズンの直前。 台風が来る前に、成長の遅いエリアを刈り取ってやっこめにして確保しておくことで、台風でメインの田んぼが被害を受けた場合の予備食糧として備える、という意味合いもあったとか。 農業ってきめ細かく手順があるのだなあ・・・。
農文協の『日本の食生活全集』、ほぼ全県読んだつもりでいましたが、このやっこめについては初耳(ノーマーク)でした。 美味しいと分かってみると、がぜん興味が湧きますよね。
検索したところ、福島では早刈りではなく、種籾の一部をこの焼き米にしたりするとか(つぶすかどうかは不明)。 おそらく塩水選で種用の重たい籾を選別し、浮いちゃった籾を炒って食べるのではないかと思います。 (籾殻を外すためにやっぱ杵で搗くのかな・・・)
製造の様子のアルバムを持っていらっしゃったので、許可を頂いて一部、撮らせて頂きました。
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これは炒るための釜。 稲穂を脱穀して籾殻にして、確かそれを何日か水に漬けてから炒るとか。 要するに、籾殻の中で蒸し焼き状態になる訳です。
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釜の中。 底の方に籾が見えますね。
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左上から、稲刈り、青い籾、釜で青い籾を炒る様子、炒りあがった籾(白っぽくなっています)、つぶして籾殻を取り除いた後(緑が鮮やか!)、出来上がったたくさんのやっこめ・・・だと思います。
お米の品種、収穫時期、炒り具合、つぶし具合などは、作る人によって様々だそうです。 検索した中には、赤米や紫黒米で作ったやっこめをみかけました。 今回のものは、古いローラーでつぶしているとのことで、それほど薄べったくはないですが、パワフルな機械だとヘランヘランに薄く仕上がったりもするとか。
通常のお米よりも手間暇がかかるため、今では作る人は少なくなっているそうです。 でも、農業文化のひとつですし、美味しいし、この先も長く残ってほしいなあ・・・。
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製造・販売は。赤ねこ商店さん。朝日新聞での紹介記事も。 インスタグラムのページを持っていらっしゃって、マルシェ出店予定なども書いてあります。 この商品を扱っている食材ネットショップもいくつかあるようです。
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