熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

新日本フィル定期公演・・・マルク・アルブレヒト「英雄の生涯」

2008年02月13日 | クラシック音楽・オペラ
   R・シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」がメインの演奏会だったが、冒頭のワーグナーの歌劇「さまよえるオランダ人」序曲から、重厚なドイツ音楽に始まり、20世紀の音楽ながら非常に繊細で美しいアンリ・デュティユーのチェロ協奏曲「はるかなる遠い国へ」など、非常に感銘深いコンサートであった。
   このチェロ協奏曲だが、かすかに蠢くようなシンバルの響きに載せて独創チェロが歌いだす最初から、非常に魅惑的なサウンドで、ボードレールのアイデアの具現化だと言うことのようだが、ドビュッシーに似た絵画的な音楽がどこか懐かしさを感じさせた。
   独奏チェロを演奏したルートヴィッヒ・クヴァントは、非常に端正でオーソドックスな演奏でありながら、繊細で語りかけるようなサウンドが心地好かった。
   ロストロポーヴィッチやフルニエ、ヨーヨーマなどと言った奏者のようなカリスマ性はないが、そんなサウンドが愛されるのであろう、聴衆の温かい拍手に、バッハの無伴奏チェロ組曲第6番「サラバンド」で応えていた。
   ベルリン・フィル定期で、エッシェンバッハの指揮で、このチェロ協奏曲を演奏して絶賛を博したと言うことだが、さもあらんと思う。これを知って、クヴァントをソリストに選んだのは、アルブレヒトだと言うことである。

   「英雄の生涯」は、リヒャルト・シュトラウスの最後の交響詩だが、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」を意識した作品であろうが、スケールの大きな壮大な曲である。
   ただでさえ、シュトラウスの曲は、大編成のオーケストラで、それに、金管木管、打楽器が大活躍するので、若い頃最初に聴いた時には、派手で騒がしいと言った感じがして拒絶反応の方が強くて、オペラ「薔薇の騎士」を観るまでは、正直な所、好きになれなかった。
   ところが、長い年月の間に、コンサートやオペラで、「ドン・ファン」「ティル・オイゲン・シュピーゲルの愉快な悪戯」「ツアラトゥストラはかく語りき」、それに、「アルプス交響曲」「家庭交響曲」や「エレクトラ」「サロメ」と聴いたり観たりしているうちに、少しづつ取り付かれてしまったのであろうか。
   コンサート・マスター崔文洙の「英雄の妻」のイメージを奏でるソロ・ヴァイオリンの甘美なサウンドにうっとりして聞き惚れ、アルブレヒトのタクトがおさまると大きな拍手をしていたのだから、音楽とは不思議なものである。
   
   前回のハウシルトのブルックナーもそうだが、ドイツ人指揮者の独墺音楽の演奏はやはり素晴らしくて、今回のアルブレヒトは、特に、ワーグナーやシュトラウスを得意としていると言うから、素晴らしい解釈によるサウンドを新日本フィルから引き出してくれたのであろう。
   しかし、オペラを主体に結構欧州各地でかなりレパートリーの広い演奏活動しており器用なようで、フランス人のデュティユーのチェロ協奏曲も実に感動的に演じていて好感を持った。

   ところで、この日は、振り替え鑑賞で、何時もの一階真正面後方の定席ではなく、3階前方左席に割り当てられ、伸び上がらないと(後がないのでいくらでも可能)第一ヴァイオリン後方などオーケストラの一部が視界から切れてしまう席なのだが、殆ど真下に指揮者やソリストが至近距離で鑑賞出来るなど、非常に興味深い経験をした。
   新日本フィル定期のトリフォニー・シリーズは、2夜連続なので、都合が悪ければ振り替えてくれるシステムなので、これが、結構重宝している。
   前述のチェロ協奏曲には、マリンバやシロフォン、グロッケンシュピール、タンバリンなど変わった打楽器や、チェレスタやハープなどが登場していて、これらの演奏を楽しむことが出来て面白かったので、音楽には見る楽しみもあることをあらためて感じた。
   
   2008~9定期の更新案内が来ている。
   もう15年も続けていて、いつもならすぐに更新するのだが、元々、小澤征爾指揮のコンサートがプログラムに必ずあったので定期会員になっており、昨年から小澤征爾の出演が消えてしまった新日本フィルの定期なのでどうするか、一つで十分だとすると、N響や都響の方が魅力的なので変更するか思案中である。
   新日本フィルで、是非聴きたいと思うのは、アルミンクのコンサート形式のオペラ公演だけで、今年は、シュトラウスの「薔薇の騎士」なので魅力はあるが、小澤のコンサートと同じで、その時にチケットを買えば良いとも思っている。
コメント
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