オバマ大統領と李明博大統領の会談や共同記者会見報道で、米韓のFTA合意が派手に喧伝されているが、TPP交渉でさえ煮え切らない日本を尻目に、急速に、太平洋を隔てた米韓の貿易関係が動き始めた。
米国資本主義の危機とさえ憂慮された世界的な金融危機の後遺症も癒えていないにも拘らず、それに、殆ど国際競争力を失ってしまっていた在来型の製造業を抱えながら、疲弊し切ったアメリカ経済が、オバマ理論のように、自由貿易さえ推進すれば活性化して、5年間で輸出が倍増するとも思えないけれど、自由な市場経済と自由貿易はアメリカの国是であり、世界経済にとっては、望ましいことである。
弱体化したと言えども、アメリカ経済は、断トツの世界第1位であり、グローバルスタンダードの多くを握り、更に、最も有利なのは、イノベイティブな企業家精神が横溢した経済体質をビルトインした活力ある経済パワーを持っていることで、このアメリカが主導するFTAやTPPに乗らなければ、どこの国の経済も成り立たなくなると言う厳粛なる事実である。
先日のWSJで、中国の人件費やインフレの高騰で、価格差などが15%程度に落ち込んだので、中国に脱出していた米国の家具メーカーなどが、アメリカに回帰し始めていると報道していた。
特に、物流やモノの移動を伴う製品やサービスについては、品質や交易条件などで信頼に欠ける中国製品よりは、多少高くても、アメリカ製品の方が米国人にとって良いのは当然であろう。
FTA締結後の韓国市場からの巨大なアジア市場へのアクセスが可能になるのは、米国企業にとっては、更に好都合であり、市場さえ拡大すれば、いくらでも、ブレイクスルー出来る活力と能力を持っている。
この点は、成熟化して成長の止まったヨーロッパと日本との大きな違いで、アメリカ経済の弱体化はあっても、それ程簡単な崩壊は有り得ないと思う。
先日、このブログで、アメリカの2010年の公式貧困率(4人家族で所得が2万2314ドル(172万円)を割り込む世帯の構成人数の人口比)が、15.1%に達しており、貧困者数は4600万人で、1959年に統計を取り始めて以降最悪であり、これらの殆どが健康保険さえ持っておらず、死活問題だと書いたが、アメリカ経済が、危機に瀕していることは事実である。
それにも拘わらず、いまだに、頑張ればいつかは豊かになれると言うアメリカン・ドリームに縋り付く国民が多く、福祉国家政策の不備と十分なセイフティ・ネットの欠如が、国民の自助努力を促し、アメリカの経済の活力にプラスとなると豪語する自由主義的な学者や政治家などがいるのだが、否でも応でも、アメリカ人は、自国経済の復活と再生を信じているようである。
ここで問題にしたいのは、日本政府および日本人のTPPに対するあまりにも消極的な取り組みとその対応である。
元々は、2006年5月にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国加盟で発効した経済連携協定であったものだが、2010年10月よりアメリカ主導の下に急速に推し進められ、加盟国・交渉国間で協議を行っており、早急に締結する動きで進んでおり、否も応もなく、アメリカのごり押しであろうと何であろうと、悲しいかな、グローバル・スタンダードと言うべき世界経済の趨勢であって、タイミングを外して、時期を失すれば、日本だけが、孤児として取り残される。
勿論、農業や医療など日本の経済各部門に、打撃となることは必定であろうが、今回、韓国でも、米国とのFTA交渉に当たっては、輸出立国以外に生きて行く道はないと言う戦略的な判断のもとに、絶対に譲れないコメを関税撤廃対象から除外しても、自動車の安全基準ではEUの条件を丸呑みするなど、大胆に譲歩する交渉手法で対応し、予想される国内での被害については補償策を用意して対処したと言う。
日本は、これまで、円高を極端に恐れる輸出主導型の経済を推進して来たが、既に、失われた20年で国力も経済力も疲弊してしまって、日本の多くの電器企業が、サムソンの足元にも及ばなくなってしまったのを見ても分かるように、韓国や台湾は勿論、多くの新興国の追い上げを受けて、著しく国際競争力が失墜して、JAPAN AS No.1時代の面影もない。
デジタル化によりモジュラー化してしまった製造業においては、いくら、最先端のテクノロジーを開発してブラックボックスで知財やノウハウを囲い込んでも、リバース・エンジニアリングで、新興国の企業に瞬時に追いつかれ、また、破壊的イノベーションの創造的破壊たる所以のクリエイティブで感性豊かな高付加価値の製品や高度なハイテクは、アメリカの後塵を拝するのみで、先を行く先端産業は殆どない。
持続的イノベーションの追及でテクノロジーの深追いばかりして、破壊的イノベーションを生めなくなった日本企業は、正に、歌を忘れたカナリアで、日本の大企業は、かって、クリステンセンが言ったように、市場の最上層まで上り詰めて行き場をなくしている。
6重苦と揶揄されている足枷をはめられた日本企業が、更に、TPPやFTAで遅れを取る現状を嘆いて、米倉経団連会長が、外需に期待できなくなるので内需の振興拡大をと悲しいことを言っていたが、世界最悪の財政債務を抱えていて、人口減少と景気悪化で益々消費需要が落ち込んで行く日本に、内需の拡大や景気刺激策など打てる訳がない。
私は、今回のTPPについては、必ずしも十分な知識はないので、偉そうなことは言えないが、結局、遅かれ早かれ、劇薬を飲む以外に日本の生きる道がないとするのなら、出来るだけ早く交渉の場について、有利な展開を図った方が得策だと思っている。
余力のある間に対応しないと、日本経済は、更に悪化して行き、無い袖さえ触れなくなってしまう。
既に、グローバル化してしまった世界経済においては、ヒト・モノ・カネは、自由に地球上を飛び交い、要素価格平準化定理の働きによって、少しでも隙間があれば、すべての価格は平準化して、摩擦や障害があっても瞬時に乗り越えられてしまい、それが出来なくても、破壊されてしまう。
たとえ、日本が、TPPやFTAの埒外に居て障壁で国内産業を保護して見ても、グローバル・スタンダードから、どんどん遅れを取ってしまって、元々、国際競争力がないのだから、駆逐されてしまうか消滅するだけであろう。
米国資本主義の危機とさえ憂慮された世界的な金融危機の後遺症も癒えていないにも拘らず、それに、殆ど国際競争力を失ってしまっていた在来型の製造業を抱えながら、疲弊し切ったアメリカ経済が、オバマ理論のように、自由貿易さえ推進すれば活性化して、5年間で輸出が倍増するとも思えないけれど、自由な市場経済と自由貿易はアメリカの国是であり、世界経済にとっては、望ましいことである。
弱体化したと言えども、アメリカ経済は、断トツの世界第1位であり、グローバルスタンダードの多くを握り、更に、最も有利なのは、イノベイティブな企業家精神が横溢した経済体質をビルトインした活力ある経済パワーを持っていることで、このアメリカが主導するFTAやTPPに乗らなければ、どこの国の経済も成り立たなくなると言う厳粛なる事実である。
先日のWSJで、中国の人件費やインフレの高騰で、価格差などが15%程度に落ち込んだので、中国に脱出していた米国の家具メーカーなどが、アメリカに回帰し始めていると報道していた。
特に、物流やモノの移動を伴う製品やサービスについては、品質や交易条件などで信頼に欠ける中国製品よりは、多少高くても、アメリカ製品の方が米国人にとって良いのは当然であろう。
FTA締結後の韓国市場からの巨大なアジア市場へのアクセスが可能になるのは、米国企業にとっては、更に好都合であり、市場さえ拡大すれば、いくらでも、ブレイクスルー出来る活力と能力を持っている。
この点は、成熟化して成長の止まったヨーロッパと日本との大きな違いで、アメリカ経済の弱体化はあっても、それ程簡単な崩壊は有り得ないと思う。
先日、このブログで、アメリカの2010年の公式貧困率(4人家族で所得が2万2314ドル(172万円)を割り込む世帯の構成人数の人口比)が、15.1%に達しており、貧困者数は4600万人で、1959年に統計を取り始めて以降最悪であり、これらの殆どが健康保険さえ持っておらず、死活問題だと書いたが、アメリカ経済が、危機に瀕していることは事実である。
それにも拘わらず、いまだに、頑張ればいつかは豊かになれると言うアメリカン・ドリームに縋り付く国民が多く、福祉国家政策の不備と十分なセイフティ・ネットの欠如が、国民の自助努力を促し、アメリカの経済の活力にプラスとなると豪語する自由主義的な学者や政治家などがいるのだが、否でも応でも、アメリカ人は、自国経済の復活と再生を信じているようである。
ここで問題にしたいのは、日本政府および日本人のTPPに対するあまりにも消極的な取り組みとその対応である。
元々は、2006年5月にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国加盟で発効した経済連携協定であったものだが、2010年10月よりアメリカ主導の下に急速に推し進められ、加盟国・交渉国間で協議を行っており、早急に締結する動きで進んでおり、否も応もなく、アメリカのごり押しであろうと何であろうと、悲しいかな、グローバル・スタンダードと言うべき世界経済の趨勢であって、タイミングを外して、時期を失すれば、日本だけが、孤児として取り残される。
勿論、農業や医療など日本の経済各部門に、打撃となることは必定であろうが、今回、韓国でも、米国とのFTA交渉に当たっては、輸出立国以外に生きて行く道はないと言う戦略的な判断のもとに、絶対に譲れないコメを関税撤廃対象から除外しても、自動車の安全基準ではEUの条件を丸呑みするなど、大胆に譲歩する交渉手法で対応し、予想される国内での被害については補償策を用意して対処したと言う。
日本は、これまで、円高を極端に恐れる輸出主導型の経済を推進して来たが、既に、失われた20年で国力も経済力も疲弊してしまって、日本の多くの電器企業が、サムソンの足元にも及ばなくなってしまったのを見ても分かるように、韓国や台湾は勿論、多くの新興国の追い上げを受けて、著しく国際競争力が失墜して、JAPAN AS No.1時代の面影もない。
デジタル化によりモジュラー化してしまった製造業においては、いくら、最先端のテクノロジーを開発してブラックボックスで知財やノウハウを囲い込んでも、リバース・エンジニアリングで、新興国の企業に瞬時に追いつかれ、また、破壊的イノベーションの創造的破壊たる所以のクリエイティブで感性豊かな高付加価値の製品や高度なハイテクは、アメリカの後塵を拝するのみで、先を行く先端産業は殆どない。
持続的イノベーションの追及でテクノロジーの深追いばかりして、破壊的イノベーションを生めなくなった日本企業は、正に、歌を忘れたカナリアで、日本の大企業は、かって、クリステンセンが言ったように、市場の最上層まで上り詰めて行き場をなくしている。
6重苦と揶揄されている足枷をはめられた日本企業が、更に、TPPやFTAで遅れを取る現状を嘆いて、米倉経団連会長が、外需に期待できなくなるので内需の振興拡大をと悲しいことを言っていたが、世界最悪の財政債務を抱えていて、人口減少と景気悪化で益々消費需要が落ち込んで行く日本に、内需の拡大や景気刺激策など打てる訳がない。
私は、今回のTPPについては、必ずしも十分な知識はないので、偉そうなことは言えないが、結局、遅かれ早かれ、劇薬を飲む以外に日本の生きる道がないとするのなら、出来るだけ早く交渉の場について、有利な展開を図った方が得策だと思っている。
余力のある間に対応しないと、日本経済は、更に悪化して行き、無い袖さえ触れなくなってしまう。
既に、グローバル化してしまった世界経済においては、ヒト・モノ・カネは、自由に地球上を飛び交い、要素価格平準化定理の働きによって、少しでも隙間があれば、すべての価格は平準化して、摩擦や障害があっても瞬時に乗り越えられてしまい、それが出来なくても、破壊されてしまう。
たとえ、日本が、TPPやFTAの埒外に居て障壁で国内産業を保護して見ても、グローバル・スタンダードから、どんどん遅れを取ってしまって、元々、国際競争力がないのだから、駆逐されてしまうか消滅するだけであろう。