熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

現在の最大の不幸は若者にチャンスを与えられないこと

2013年07月23日 | 政治・経済・社会
   私は、これまでに何度か、失われた10年、いや、失われた20年の、日本にとって最大の不幸は、少子化高齢化社会の到来にも拘らず、バブル崩壊後のデフレ不況と言う未曽有の経済悪化によって、新卒者の若者たちに、就職への道を閉ざして、人生への新スタート、キャリアへの登竜門へのチャンスを削ぐなど、若者たちへの上昇、成長発展の機会を潰してきたことだと、書いて来た。
   フリーターなど、定職につけなかった多くの若者たちも、既に、壮年期に達するなど、あたら、有能な若者たちの人生を無茶苦茶にして来たと言う慙愧の思いが、いまだに、古い日本を支配し続けている大人(?)たちにあるのかないのか分からないが、今でも、依然、若者たちにとっては、受難の時代が続いている。

   しかし、日本の未来にとって、最も重要であり喫緊の問題である筈の若者たちにチャンスを与える社会を築こうと言う提言を真正面に掲げて、選挙活動を行った政党は、私の知る限り、何処にもなかったし、選挙の争点にもならなかった。
   東京選挙区で、山本太郎氏(38)と、吉良 佳子さん(30)が、多くの若者の支持を集めて、当選したのは、いわば、虐げられた若者たちの切羽詰った意思表示であり、一種の反乱であったと、私は思っているのだが、日本人には、殆ど、その認識さえない。
   支持政党なしの無党派層の多くの若者たちが、前回の選挙では、新しいチャンスを与えてくれる筈だと期待して民主党を支持したが、あまりにも無残悲惨極まりない体たらくの失政によって夢破れて失望したのであるから、東京大坂で、民主党が見限られるのは、当然の成り行きだと言えないであろうか。

   若者受難の時代は、日本の後追いをして不況に喘ぐ欧米でも、全く同じ現象が起こっており、人類の歴史においても、極めて問題多き不幸な状況が続いている。
   まず、アメリカだが、ポール・クルーグマンが、「さっさと不況を終わらせろ」と言う本の第1章「事態はこんなにひどい」で、若者の失業問題に触れているので、引用してみたい。

   若い労働者は良い時期でも年長者よりも失業率が高いのだが、この経済危機を乗り越えるのに一番よい立場にいると思われがちな若い労働者たち――最近の大卒者たちで、現在経済の要求する知識や能力を持っている見込みがずっと高い存在――も全く安全ではなく、最近の新卒の4人に1人は、失業しているかパートタイムの仕事しかしておらず、常勤でも賃金が安く、おそらくその多くは、大学教育を活用しない低賃金で我慢しなければならない。
   イェール大のリサ・カーンの調査では、失業率が高い時期に大学を出た人と、好況期に大学を出た人と、キャリアを比べると、タイミングが悪い時期の卒業生は圧倒的にキャリアも悪い。それは、卒業後の数年だけの話ではなく、生涯にわたり引退まで続き、今回の不況はこれまで以上に長期なので、若者たちの生涯に対する長期的な被害は、ずっと深刻なものになろう。と言うのである。
   
   更に興味深いのは、アメリカにも、パラサイトシングル現象が起きていると言うことである。
   24歳から34歳のアメリカ人で、親と同居している人数が激増している。これはみんなが突然親孝行に目覚めたわけではない。巣立つ機会が激減したことを示しているのだ。と言うのである。

   学校を出ても、良い定職につけないので、経済的自活さえままならず、親に面倒を見て貰わねば生活が出来ない。
   している仕事にしても、何時まで続くかさえ分からず、不本意なレベルの低い仕事であるから、能力のブラッシュアップにも人間としての成長にも役に立たず、当然、キャリア・ディベロップメントにもならないので、先の望みも夢さえも持てない。

   こんな不幸な若者たちが、日本のみならず、米欧に広がっており、若者の56%が失業していると言うスペインを筆頭に、ヨーロッパの債務超過に呻吟している南欧の国々の若者の現状は、悲惨を通り越して極めて深刻である。

   鉄は熱いうちに打て 《 Strike while the iron is hot. 》
    鉄は、熱して軟らかいうちに鍛えよ。と言うことで、人間も、精神が柔軟で、吸収する力のある若いうちに鍛えるべきだと言う格言だが、時代の潮流が目まぐるしく激動し、猛烈な勢いで進歩を続けている今日ほど、この言葉が、意味を持つ時代はなく、寸暇を惜しんで、若者たちにチャンスを与えて、切磋琢磨させて、成長発展を図らせるべき好機はない。
   一刻でも時期を失して速度を緩めると、回し車のハツカネズミのように、振り飛ばされてしまう。
   しかし、今現在、熱い鉄を、無残にも野ざらしにして、何ものにも代え難き貴重な人類の宝とも言うべき若い煮えたぎるエネルギーを、封殺してしまっているのではなかろうか。

   今の日本のように、あたら、有能で未来のある若者の伸び盛りの芽を摘むような社会には、未来などない筈であるから、その障害物となっている社会の規範や法体系を一挙に排除するなど、抜本的な解決策はないであろうか。
   私は、若者、例えば、35歳以下の起業については、5年間なり10年間なり所得税を含めて無税にするとか、とにかく、イノベイティブな日本人の若者魂を爆発させるような施策をどんどん打つべきだと思っている。
   賛否あるであろうが、もう一度、ホリエモン現象を現出させて、若者を燃え立たせることである。
   
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