薪能のシーズンだが、国立能楽堂は、恒例の「蝋燭の灯りによる企画公演」で、今回は、大蔵流の狂言「瓜盗人」と宝生流の能「熊坂」が、上演された。
照明の関係で、勿論、字幕表示のディスプレィもお休みで、私のような初心者には、とにかく、能の方は、謡が十分には聞き取れないので、事前に、詞章や解説書を読んで、勉強して行っても、中々、すっきりと流れに乗れないのが苦痛ではあった。
しかし、今回の熊坂は、平安時の大盗賊熊坂長範が主人公であるから、特別に、六尺三寸の薙刀を振り回して派手な立ち回りを演じるので、それなりに、楽しむことが出来た。
熊坂長範を主人公にした能は、他に、「烏帽子折」があるのだが、両方とも、
鞍馬寺を出奔した牛若丸が身をやつして、金売吉次の供に同行中、吉次の荷を狙う盗賊・熊坂長範一味が襲って来たので、牛若丸は武勇を発揮して獅子奮迅の働きで賊を蹴散らして、長範を討ち取ると言う話を、主題にしている。
「烏帽子折」の方は、牛若丸も登場して、実際の戦いを演じる進行形の能だが、この「熊坂」の方は、夢幻能の形で、長範の亡霊(朝倉俊樹)が現れて、義経に殺された無念の思いを謡うと言う後日譚になっていて、義経は登場せず、弔いを頼む旅僧(ワキ/宝生欣哉)と所の者(アイ/茂山逸平)の3人だけである。
シテの朝倉俊樹は、前シテは、直面の僧姿で登場するが、後シテの熊坂長範では、長霊癋見の強面の派手な面をかけて、立派な薙刀を持って凄い井出達の僧兵姿で登場して、舞台狭しと縦横無尽に激しく立ち回りを演じるので、静で動きの殆どない能舞台に慣れていると、大げさに言えば、驚天動地の驚きである。
暖色系の衣装が、蝋燭の灯りに溶けて、刺繍の金糸銀糸が鈍色に光って、実に美しく、正に、幽玄そのもので、夢幻能の雰囲気を醸し出している。
双眼鏡で長霊癋見の面を観ていると、何故か、大盗賊の厳つい顔が、ぎょろりと大きく見開いた目に愛嬌があって、案外、長範も人間味のある優しい人恋しい人物ではなかったかと思えてくるのが面白かった。
狂言の「瓜盗人」は、久しぶりに、京都の茂山千五郎家の舞台で、シテ/男が千三郎、アド/畑主が正邦で、男が瓜畑に入って瓜を盗み、それを、阻止するために、畑主が、案山子姿になって、男をとっちめると言う話であるが、かなり、込み入った内容のある狂言で、それに、後半、舞台に囃子連中が登場するなど、中々面白かった。
まず、男が、盗んだ瓜をさる方に進上した所、非常に喜ばれて手作りかと聞かれてそうだと答えてしまって、また欲しい、もっと欲しいと言われて断わり切れずに、盗みを繰り返す悲しさ面白さ。
丹精込めて育てた瓜が盗まれ瓜畑が荒らされて腹を立てた畑主が、案山子を立ててダメなので、自ら案山子になって男をとっちめる話。
男が、案山子を畑主だと見間違って、許してくれと平身低頭謝るのだが、更に捻った面白さは、翌日、案山子が畑主に変わっているのに気付かずに、案山子が罪人に良く似ているので、村の祭礼で鬼が罪人を責める作り物を出すことになっているので、案山子を相手に見立てて稽古をしようとして、案山子が適当に反応してくれるので、良く出来たカラクリ仕掛けの作り物だと感心していると、畑主が、案山子の扮装を取って、杖を振り上げて男を追い込む。
この罪人の話は、先日、萬狂言で、実に愉快な「籤罪人」を観ていたので、興味深かった。
暗闇で、瓜が上手く見つからず、「夜、瓜を取るには、転びを打って取る」と言う言葉を思い出して、舞台を転がりながら瓜を取る仕草も面白いが、瓜が頭の下に来たので、これはまくわ瓜ではなく、まくら瓜だと駄洒落るあたりにも狂言の味があって良い。
とにかく、ここまで来ると、狂言も、中々奥深いのである。
照明の関係で、勿論、字幕表示のディスプレィもお休みで、私のような初心者には、とにかく、能の方は、謡が十分には聞き取れないので、事前に、詞章や解説書を読んで、勉強して行っても、中々、すっきりと流れに乗れないのが苦痛ではあった。
しかし、今回の熊坂は、平安時の大盗賊熊坂長範が主人公であるから、特別に、六尺三寸の薙刀を振り回して派手な立ち回りを演じるので、それなりに、楽しむことが出来た。
熊坂長範を主人公にした能は、他に、「烏帽子折」があるのだが、両方とも、
鞍馬寺を出奔した牛若丸が身をやつして、金売吉次の供に同行中、吉次の荷を狙う盗賊・熊坂長範一味が襲って来たので、牛若丸は武勇を発揮して獅子奮迅の働きで賊を蹴散らして、長範を討ち取ると言う話を、主題にしている。
「烏帽子折」の方は、牛若丸も登場して、実際の戦いを演じる進行形の能だが、この「熊坂」の方は、夢幻能の形で、長範の亡霊(朝倉俊樹)が現れて、義経に殺された無念の思いを謡うと言う後日譚になっていて、義経は登場せず、弔いを頼む旅僧(ワキ/宝生欣哉)と所の者(アイ/茂山逸平)の3人だけである。
シテの朝倉俊樹は、前シテは、直面の僧姿で登場するが、後シテの熊坂長範では、長霊癋見の強面の派手な面をかけて、立派な薙刀を持って凄い井出達の僧兵姿で登場して、舞台狭しと縦横無尽に激しく立ち回りを演じるので、静で動きの殆どない能舞台に慣れていると、大げさに言えば、驚天動地の驚きである。
暖色系の衣装が、蝋燭の灯りに溶けて、刺繍の金糸銀糸が鈍色に光って、実に美しく、正に、幽玄そのもので、夢幻能の雰囲気を醸し出している。
双眼鏡で長霊癋見の面を観ていると、何故か、大盗賊の厳つい顔が、ぎょろりと大きく見開いた目に愛嬌があって、案外、長範も人間味のある優しい人恋しい人物ではなかったかと思えてくるのが面白かった。
狂言の「瓜盗人」は、久しぶりに、京都の茂山千五郎家の舞台で、シテ/男が千三郎、アド/畑主が正邦で、男が瓜畑に入って瓜を盗み、それを、阻止するために、畑主が、案山子姿になって、男をとっちめると言う話であるが、かなり、込み入った内容のある狂言で、それに、後半、舞台に囃子連中が登場するなど、中々面白かった。
まず、男が、盗んだ瓜をさる方に進上した所、非常に喜ばれて手作りかと聞かれてそうだと答えてしまって、また欲しい、もっと欲しいと言われて断わり切れずに、盗みを繰り返す悲しさ面白さ。
丹精込めて育てた瓜が盗まれ瓜畑が荒らされて腹を立てた畑主が、案山子を立ててダメなので、自ら案山子になって男をとっちめる話。
男が、案山子を畑主だと見間違って、許してくれと平身低頭謝るのだが、更に捻った面白さは、翌日、案山子が畑主に変わっているのに気付かずに、案山子が罪人に良く似ているので、村の祭礼で鬼が罪人を責める作り物を出すことになっているので、案山子を相手に見立てて稽古をしようとして、案山子が適当に反応してくれるので、良く出来たカラクリ仕掛けの作り物だと感心していると、畑主が、案山子の扮装を取って、杖を振り上げて男を追い込む。
この罪人の話は、先日、萬狂言で、実に愉快な「籤罪人」を観ていたので、興味深かった。
暗闇で、瓜が上手く見つからず、「夜、瓜を取るには、転びを打って取る」と言う言葉を思い出して、舞台を転がりながら瓜を取る仕草も面白いが、瓜が頭の下に来たので、これはまくわ瓜ではなく、まくら瓜だと駄洒落るあたりにも狂言の味があって良い。
とにかく、ここまで来ると、狂言も、中々奥深いのである。