熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

NHK交響楽団・・・ブラームス:交響曲第1番ほか

2014年03月13日 | クラシック音楽・オペラ
   久しぶりに、芸術劇場で、N響を聴いた。
   都民芸術フェスティバルでの演奏会である。
   国立劇場で、時蔵の「切られお富」の歌舞伎を見た後、神保町で時間を過ごし、嵐気味の大雨の中を劇場に向かったので、コンサートを楽しむと言った雰囲気ではなかったが、劇場に入って、モーツアルトの「ピアノ協奏曲第21番ハ短調K.467」が始まると、やはり、コンサート・モードになり、テンションが高まる。

   昔は、ウィーン・フィルだ、ベルリン・フィルだと言えば、必ず出かけていたが、今は、都響の定期に通うくらいだし、N響も、この芸術フェスティバル程度で、クラシック・コンサートにも殆ど行かなくなってしまった。
   私の若い頃には、ブルックナーやマーラーなどには人気がなかったし、それに、彼らの長大な交響曲がプログラムにのることさえ殆どなくて、アメリカやヨーロッパに住んでから親しんだ感じなのだが、今では、鳴り物入りでコンサートが開かれて、チクルスなどとなると、チケットが完売すると言う不思議さ。

   私には、オイゲン・ヨッフムやザバリッシュなどが、ロイヤル・コンセルトヘヴォーを奏でたブルックナーやマーラーなどのドイツ音楽の印象が強く残っているのだが、やはり、今夜のプログラムのように、モーツアルトのピアノ協奏曲やブラームスの交響曲、特に、ベートーヴェンの交響曲第10番ともよばれる交響曲第1番と言った古典派の音楽を聴くと、堪らなく、感動する。

   モーツアルトのピアノ協奏曲は、随分、あっちこっちで聴いているのだが、第21番の第2楽章の夢幻の楽想の天国の音楽のような美しいサウンドを聴くと、昔、小澤征爾が、何かのインタビューで、神様が、モーツアルトの手を取って描かせたとしか思えないと語っていたのを思い出す。
   ピアニストのパスカル・ロジェの美しくて色彩豊かな華麗な音色が、心の底から湧き出るような幸せを醸し出してくれて、じっと、聞き惚れる幸せ。
   昔聞いたサンソン・フランソアの美しいサウンドを思い出した。

   ブラームスの交響曲は、4曲とも素晴らしい。
   あのサガンの「モーツアルトはお好き」で奏される第3番が印象的だが、やはり、第1番と第4番を聴くことが多い。
   ドイツの地方都市の交響楽団が奏する土の香りがするような演奏会で感激することがあったが、やはり、コンセルトヘヴォーの研ぎ澄まされて昇華したサウンドが良かった。

   オーストリアの指揮者ラルフ・ワイケルトは、欧米のトップ歌劇場でオペラを指揮する豊かな経験を有し、ワーグナーも得意としているようだが、ブラームスの演奏も、非常にメリハリの利いたダイナミックな演奏で、ぐいぐい引き込まれて行く。
   このブラームスの第1番などは、クラシック・ファンになり始めの頃に、レコードを繰り返し繰り返し聞いていたので、殆ど頭の中に刷り込まれていて、そのサウンドを追体験しながら楽しんでいると言う感じなのだが、素晴らしい演奏に遭遇すると、一気に、感動のテンションがアップする。
   金管木管のすばらしいサウンド、太鼓連打の迫力、流麗な管楽器の想の豊かさ、NHK交響楽団は、やはり、凄い楽団である。
   これこそが、コンサート会場に向かう楽しみであろうか。
   凄いブラームスの後、情感豊かに、アンコールに、ロザムンデの間奏曲第3番を演奏した。 
   

   ところで、コンサートもオペラも両輪で、指揮者が、オペラを振らなければだめだと言うことだが、1月の日経の私の履歴書で、小澤征爾が、斎藤先生には教わらなかったが、カラヤンに教えられたと語っていた。
   昔、フィラデルフィアにいた頃、フィラデルフィア管弦楽団の定期に2年間通って、ユージン・オーマンディの指揮を随分聴いたが、トップ・クラスの指揮者で、オペラを振らなかった指揮者は、オーマンディくらいであろうか。
   METで、シュトラウスの「こうもり」を振ったことがあると聞いたことがあるのだが、フィラ管の定期では、ソリストを呼んで、オペラのアリアを唱わせていたことがあったのだから、機会がなかったと言うことなのかも知れない。

   随分昔、ロンドンにいた頃、ウィーン国立歌劇場の指揮者ベリスラフ・クロブチャールを、ウィーンの自宅に訪れて話を聞いたことがある。
   丁度、国立歌劇場でワーグナーのリハーサルを終えて帰って来たところだったが、ウィーン国立歌劇場のデータ本を見せて、カラヤンの4回よりも、はるかに多く「ワルキューレ」を振っているのだと誇らしげに語っていたが、私の拙い経験では、クロブチャールの場合には、オペラ指揮が主体であったような気がする。
   このベリスラフ・クロブチャールだが、素晴らしいワーグナーの『ワルキューレ』全曲をライブのCDで残している。
ビルギット・ニルソン(ブリュンヒルデ)
レオニー・リザネク(ジークリンデ)
ジョン・ヴィッカーズ(ジークムント)
トーマス・ステュアート(ヴォータン)
クリスタ・ルートヴィヒ(フリッカ)
カール・リッダーブッシュ(フンディング)、他
メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団
ベリスラフ・クロブチャール(指揮)
    と言うことだが、これらの歌手たちは、私の若かりし頃少し前の超ど級の凄いオペラ歌手たちだが、ニルソンなど晩年の名歌手たちのオペラを、劇場で鑑賞できたのを懐かしく思い出す。
   

   ところで、日本では、やはり、オペラ劇場が定着していなくて、その機会が少ない所為か、日本人指揮者で海外経験の少ない人には、オペラの経験が殆どないようなので、気の毒だと思うことがある。
コメント
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