鎌倉芸術館で、倍賞千恵子が主演映画を語ると言う趣向で、山田洋次監督の古い映画作品「霧の旗」と「遥かなる山の呼び声」が上演されたので、見に出かけた。
意識しなかったのだが、良く考えてみれば、この大船は、松竹撮影所があったところで、この芸術館のすぐそばで、『男はつらいよ』シリーズなど多くの名作映画が輩出されたのである。
松本清張原作の「霧の旗」は、恐らく、倍賞千恵子、滝沢修主演の1965年のこの映画が素晴らしい所為なのであろう、1977年に山口百恵・友和、三國連太郎主演の映画が製作されただけなのだが、時代がテレビに移ったこともあって、名優揃いのテレビドラマが、8回も制作されている。
ウイキペディアによると、「兄の弁護を断った弁護士に対する、女性の理不尽な復讐を描く、リーガル・サスペンス」と言うことで、
九州の片田舎で発生した金貸しの老女の強盗殺人事件で、被害者から金を借りていた教師の柳田正夫が、犯人として検挙されたので、その妹の柳田桐子(倍賞千恵子)が、高名な大塚欽三弁護士(滝沢修)に弁護を依頼するのだが、多忙と資金面不如意のために断られて、兄が獄中で病死し、東京に出て水商売をしながら、執拗に大塚弁護士を徹頭徹尾追い詰めて葬り去ると言う熾烈な復讐劇である。
今日の経済社会の常識から言えば、何の紹介もなしに、金の有り無しに拘わらず、多忙を極めているトップクラスの弁護士に田舎の殺人事件の弁護を依頼して断られるのは、至極当たり前で、断わられたからと言って怨み抜いて、徹底的に追い詰めて弁護士生命を葬り去ると言うこと自体が理不尽なのであるが、映画女優になったばかりの初々しくて真正面の直球勝負で一直線の倍賞千恵子であったから、これだけ、迫力のある社会ドラマになったのだろうと思う。
それに、49年前の暗い映画なのだが、山田洋次監督が、隅々にまで神経を行き届かせて、実に丁寧に、人間ドラマを紡ぎ上げているので、救いのような淡いほっとした余韻を残しているのが良い。
もう一つ、この映画で面白いのは、桐子が主役だとしても、弁護士の大塚が、河野径子(銀座の高級レストラン「みなせ」の女性経営者)を本当に心底愛しているからこそ、桐子の罠にのめり込んで行くのであって、もう一つの映画の三國連太郎と小山明子、TVドラマの、芦田伸介と草笛光子、三國連太郎と八千草薫、森雅之と岡田茉莉子、田村高廣と阿木耀子、仲代達矢と満田久子、古谷一行と多岐川裕美、海老蔵と戸田菜穂と言うキャスティングを見ても、この二人の演じるさらりとした愛の交感が見ものであり、この映画での滝沢修と新珠三千代の美しい人間関係の描写が、感動的であることである。
「遥かなる山の呼び声」も、何度か見ているのだが、昔のことなので、記憶は殆ど残っていない。
倍賞千恵子と高倉健主演で、刑務所がらみの男と田舎の女の淡い、しかし、実に深い愛情をテーマにして、北海道の雄大な大地を舞台にして展開されるヒューマンタッチのドラマであるから、「幸福の黄色いハンカチ」にも相通じる山田洋次映画の決定版でもあり、素晴らしい映画である。
「下町の太陽」から、スターダムに踊り出た倍賞千恵子の魅力満開と言った映画で、まず、北海道に行って牛の乳搾りや牧場の仕事を覚えてから撮影に入ったと語っていたが、SKDでチータカタッタ踊っていてスカウトされた変身ぶりも見事である。
高倉健の魅力は、言わずもがなであるが、人の良いやくざ男を演じるハナ肇が、実に良い。
それに、ラスト・シーンが泣かせる。
美幌駅に停車中の急行列車(「大雪」号)の車中に網走刑務所へ護送される田島(高倉健)を虻田(ハナ肇)が見つける。そして民子が田島の座る席まで来るのだが、護送員の目を気にして声をかけられないでいる。そこで虻田は向かい側のボックス席に民子と座り、彼女が酪農を辞めて武志と中標津の町で暮らしながら田島を待っているということを民子との会話にして田島に聞かせる。そして民子は黄色いハンカチを田島に渡し、田島は涙を拭いながら窓に顔を向けるのであった。(ウイキペディアから)
雪の網走平原を突っ走る急行列車の軌跡が実に美しい。
私は、寅さん映画のファンで、全編、何回も見て勘当し続けているのだが、多くの名優がキラ星の如く登場して至芸を披露し、そして、当時の日本の社会と生活、懐かしい日本の風景を克明に活写した、謂わば、貴重な文化財である。
貴重な思い出話を、倍賞千恵子は、淡々と語っていた。
意識しなかったのだが、良く考えてみれば、この大船は、松竹撮影所があったところで、この芸術館のすぐそばで、『男はつらいよ』シリーズなど多くの名作映画が輩出されたのである。
松本清張原作の「霧の旗」は、恐らく、倍賞千恵子、滝沢修主演の1965年のこの映画が素晴らしい所為なのであろう、1977年に山口百恵・友和、三國連太郎主演の映画が製作されただけなのだが、時代がテレビに移ったこともあって、名優揃いのテレビドラマが、8回も制作されている。
ウイキペディアによると、「兄の弁護を断った弁護士に対する、女性の理不尽な復讐を描く、リーガル・サスペンス」と言うことで、
九州の片田舎で発生した金貸しの老女の強盗殺人事件で、被害者から金を借りていた教師の柳田正夫が、犯人として検挙されたので、その妹の柳田桐子(倍賞千恵子)が、高名な大塚欽三弁護士(滝沢修)に弁護を依頼するのだが、多忙と資金面不如意のために断られて、兄が獄中で病死し、東京に出て水商売をしながら、執拗に大塚弁護士を徹頭徹尾追い詰めて葬り去ると言う熾烈な復讐劇である。
今日の経済社会の常識から言えば、何の紹介もなしに、金の有り無しに拘わらず、多忙を極めているトップクラスの弁護士に田舎の殺人事件の弁護を依頼して断られるのは、至極当たり前で、断わられたからと言って怨み抜いて、徹底的に追い詰めて弁護士生命を葬り去ると言うこと自体が理不尽なのであるが、映画女優になったばかりの初々しくて真正面の直球勝負で一直線の倍賞千恵子であったから、これだけ、迫力のある社会ドラマになったのだろうと思う。
それに、49年前の暗い映画なのだが、山田洋次監督が、隅々にまで神経を行き届かせて、実に丁寧に、人間ドラマを紡ぎ上げているので、救いのような淡いほっとした余韻を残しているのが良い。
もう一つ、この映画で面白いのは、桐子が主役だとしても、弁護士の大塚が、河野径子(銀座の高級レストラン「みなせ」の女性経営者)を本当に心底愛しているからこそ、桐子の罠にのめり込んで行くのであって、もう一つの映画の三國連太郎と小山明子、TVドラマの、芦田伸介と草笛光子、三國連太郎と八千草薫、森雅之と岡田茉莉子、田村高廣と阿木耀子、仲代達矢と満田久子、古谷一行と多岐川裕美、海老蔵と戸田菜穂と言うキャスティングを見ても、この二人の演じるさらりとした愛の交感が見ものであり、この映画での滝沢修と新珠三千代の美しい人間関係の描写が、感動的であることである。
「遥かなる山の呼び声」も、何度か見ているのだが、昔のことなので、記憶は殆ど残っていない。
倍賞千恵子と高倉健主演で、刑務所がらみの男と田舎の女の淡い、しかし、実に深い愛情をテーマにして、北海道の雄大な大地を舞台にして展開されるヒューマンタッチのドラマであるから、「幸福の黄色いハンカチ」にも相通じる山田洋次映画の決定版でもあり、素晴らしい映画である。
「下町の太陽」から、スターダムに踊り出た倍賞千恵子の魅力満開と言った映画で、まず、北海道に行って牛の乳搾りや牧場の仕事を覚えてから撮影に入ったと語っていたが、SKDでチータカタッタ踊っていてスカウトされた変身ぶりも見事である。
高倉健の魅力は、言わずもがなであるが、人の良いやくざ男を演じるハナ肇が、実に良い。
それに、ラスト・シーンが泣かせる。
美幌駅に停車中の急行列車(「大雪」号)の車中に網走刑務所へ護送される田島(高倉健)を虻田(ハナ肇)が見つける。そして民子が田島の座る席まで来るのだが、護送員の目を気にして声をかけられないでいる。そこで虻田は向かい側のボックス席に民子と座り、彼女が酪農を辞めて武志と中標津の町で暮らしながら田島を待っているということを民子との会話にして田島に聞かせる。そして民子は黄色いハンカチを田島に渡し、田島は涙を拭いながら窓に顔を向けるのであった。(ウイキペディアから)
雪の網走平原を突っ走る急行列車の軌跡が実に美しい。
私は、寅さん映画のファンで、全編、何回も見て勘当し続けているのだが、多くの名優がキラ星の如く登場して至芸を披露し、そして、当時の日本の社会と生活、懐かしい日本の風景を克明に活写した、謂わば、貴重な文化財である。
貴重な思い出話を、倍賞千恵子は、淡々と語っていた。