クリステンセンたちが、「イノベーターのDNA]の中の「発見力―実験力」の項で、
「イノベーターの試す実験の中で最も効果的なのが、異文化の中で暮らし、働くことだと分かった。海外経験が多ければ多い程、その経験を活かして画期的な製品、プロセス、事業を生み出す可能性が高くなる。海外生活を少なくとも三か月以上経験した人は、革新的な新規事業を立ち上げるか、製品を開発する可能性が、そうでない人と比べて35%も高かった。と書いている。
また、「CEOが、就任時に一か国でも海外経験をしている企業は、そうでないCEOの企業に比べて、財務成績が良く、時価総額は平均すると7%も高かった。この株価のプレミアムの一部は、CEOが海外経験で培ったイノベーション能力によるものなのだ。」と言っている。
異文化異文明の遭遇する文化の十字路において、多くの異質な分野の専門的知識や情報、経験のぶつかり合いによって触発される関連付け思考から、クリエイティブな新しい文化文明、そして、イノベーションが生まれると言うのであるから、
海外経験が、多ければ多い程、認知的スキルを高めることとなり、イノベーションを生むチャンスがアップするのは当然であろう。
P&GのラフリーCEOが、フランスで歴史を学んだことや、日本での小売や統括事業の経験などの海外経験が、世界で最も古く最もイノベイティブな企業であるP&Gを率いる上で非常に役立ったと紹介している。
この本でも詳しく書かれているのは、スターバックスの創業者シュルツの経験で、ミラノでエスプレッソにいたく感激して、コーヒー店の着想を得たことだが、これなどは、正に、生活文化に対する発想のギャップを逆手に取ったイノベーションである。
私が、留学のためにフィラデルフィアに行った頃は、コーヒーを飲もうと思えば、マクドナルドなどのレストランやホテルのコーヒーショップなどで、水のようなアメリカン・コーヒーを飲む以外に方法がなく、美味しいコーヒーを飲みたければ、特別な高級ホテルやレストランに行かなければならなかった。
日本のようにお茶でもしようかと言った気の利いた文化はなくて、喫茶店のようなものは皆無であったので、アメリカの喫茶文化は、極めて貧弱だったのである。
ヨーロッパでも、イギリスなどアングロサクソン系の国では、アメリカ同様であった。 喫茶文化の豊かな国は、ラテン系やオーストリアや東欧の国であったので、アメリカ人であるシュルツが、ミラノで、エスプレッソの美味しさとエスプレッソ・バールの雰囲気の素晴らしさに感激し、そして、偶然、巡り合った夢のような味のカフェラテに驚嘆するのは当然であった。
こんな素晴らしい場を、アメリカに作りたい、紆余曲折を経ながら、益々、豊かさを増しながら、スターバックス文化を世界に発信し続けている。
このスターバックスの登場で、イギリスでは、紅茶文化の衰退を招き脅威となっていると言うことについては、大分前にこのブログで書いた。
アメリカに行けばわかるが、街角のあっちこっちにスターバックスの店が、マクドナルドやケンタッキー・フライド・チキン以上に展開されていて、古くからあったアメリカ固有の生活空間のように根付いてしまっているのが面白い。
日本のドトールコーヒーの創業者は、かってのブラジル移民経験者と聞くが、この最初のシステムは、ブラジルの街角には必ずある止まり木や立ち飲みコーヒーのあるバールと全く同じで、この飲み物だけの日本版としてスタートした筈である。
もう一つは、イノベーションだと言われている1000円散髪のQBハウスだが、私が、何十年も前にアメリカ留学時に経験していた理髪店のカット・オンリーをシステム化しただけである。アメリカでは、散髪は、段階的に料金が追加されて行くシステムで、カット、髭剃り、シャンプー、ネイルと続くのだが、我々日本人学生は、外人に髭を当たられるのは不安であったので、カットオンリーで止めて、寮に帰って髭を剃り頭を洗った。
QBハウスが追加したのは、最後の散髪後の毛の吸い取りくらいであろうか。
スターバックスもそうだが、海外でのビジネスをそっくり真似て本国で事業化すればイノベーションになるのであるから、後は、認知力の涵養と事業化への経営能力如何であろう。
このように、注意深さと観察眼、それに、起業家精神さえあれば、外国に行けば、いくらでも商売のタネ、イノベーション的発想を生むチャンスは充満している。
私自身、外国を回っているような生活を続けていたので、この国で、このようなビジネスを始めれば成功するなあ、と思ったことは何度もあるが、やっていたビジネスマン稼業がそれなりに充実していて興味深かった所為もあって、脇目を振れなかった。
尤も、言うだけで、自分には、起業家としての才がないことは、十分に認識していたと言う事情もあったと言うことでもある。
なお、大分前に書いたが、トヨタの張富士夫氏やキヤノンの御手洗冨士夫氏、パナソニックの中村邦夫氏については、アメリカでの駐在経験が、大きく、経営改革など経営戦略の構築に貢献したことは明らかであり、商社を筆頭に日本のMNCの多くのトップが海外経験者であること、もっと、明確なのは、グローバルベースのマルチ経営者カルロス・ゴーンCEOのケースを考えれば、前述したクリステンセンたちの主張の正しさが分かろうと言うものである。
世界に冠たるトヨタ生産方式(Toyota Production System)については、大野耐一氏が、「じつはかんばん方式は米国のスーパーマーケットからヒントを得たのである。」と言っていたのは有名な話で、とにかく、無理をしてでも、異文化異文明の錯綜する外国へ飛び出して、カルチュア・ショックの洗礼を受けることは、成長の源だと言うことでもある。
「イノベーターの試す実験の中で最も効果的なのが、異文化の中で暮らし、働くことだと分かった。海外経験が多ければ多い程、その経験を活かして画期的な製品、プロセス、事業を生み出す可能性が高くなる。海外生活を少なくとも三か月以上経験した人は、革新的な新規事業を立ち上げるか、製品を開発する可能性が、そうでない人と比べて35%も高かった。と書いている。
また、「CEOが、就任時に一か国でも海外経験をしている企業は、そうでないCEOの企業に比べて、財務成績が良く、時価総額は平均すると7%も高かった。この株価のプレミアムの一部は、CEOが海外経験で培ったイノベーション能力によるものなのだ。」と言っている。
異文化異文明の遭遇する文化の十字路において、多くの異質な分野の専門的知識や情報、経験のぶつかり合いによって触発される関連付け思考から、クリエイティブな新しい文化文明、そして、イノベーションが生まれると言うのであるから、
海外経験が、多ければ多い程、認知的スキルを高めることとなり、イノベーションを生むチャンスがアップするのは当然であろう。
P&GのラフリーCEOが、フランスで歴史を学んだことや、日本での小売や統括事業の経験などの海外経験が、世界で最も古く最もイノベイティブな企業であるP&Gを率いる上で非常に役立ったと紹介している。
この本でも詳しく書かれているのは、スターバックスの創業者シュルツの経験で、ミラノでエスプレッソにいたく感激して、コーヒー店の着想を得たことだが、これなどは、正に、生活文化に対する発想のギャップを逆手に取ったイノベーションである。
私が、留学のためにフィラデルフィアに行った頃は、コーヒーを飲もうと思えば、マクドナルドなどのレストランやホテルのコーヒーショップなどで、水のようなアメリカン・コーヒーを飲む以外に方法がなく、美味しいコーヒーを飲みたければ、特別な高級ホテルやレストランに行かなければならなかった。
日本のようにお茶でもしようかと言った気の利いた文化はなくて、喫茶店のようなものは皆無であったので、アメリカの喫茶文化は、極めて貧弱だったのである。
ヨーロッパでも、イギリスなどアングロサクソン系の国では、アメリカ同様であった。 喫茶文化の豊かな国は、ラテン系やオーストリアや東欧の国であったので、アメリカ人であるシュルツが、ミラノで、エスプレッソの美味しさとエスプレッソ・バールの雰囲気の素晴らしさに感激し、そして、偶然、巡り合った夢のような味のカフェラテに驚嘆するのは当然であった。
こんな素晴らしい場を、アメリカに作りたい、紆余曲折を経ながら、益々、豊かさを増しながら、スターバックス文化を世界に発信し続けている。
このスターバックスの登場で、イギリスでは、紅茶文化の衰退を招き脅威となっていると言うことについては、大分前にこのブログで書いた。
アメリカに行けばわかるが、街角のあっちこっちにスターバックスの店が、マクドナルドやケンタッキー・フライド・チキン以上に展開されていて、古くからあったアメリカ固有の生活空間のように根付いてしまっているのが面白い。
日本のドトールコーヒーの創業者は、かってのブラジル移民経験者と聞くが、この最初のシステムは、ブラジルの街角には必ずある止まり木や立ち飲みコーヒーのあるバールと全く同じで、この飲み物だけの日本版としてスタートした筈である。
もう一つは、イノベーションだと言われている1000円散髪のQBハウスだが、私が、何十年も前にアメリカ留学時に経験していた理髪店のカット・オンリーをシステム化しただけである。アメリカでは、散髪は、段階的に料金が追加されて行くシステムで、カット、髭剃り、シャンプー、ネイルと続くのだが、我々日本人学生は、外人に髭を当たられるのは不安であったので、カットオンリーで止めて、寮に帰って髭を剃り頭を洗った。
QBハウスが追加したのは、最後の散髪後の毛の吸い取りくらいであろうか。
スターバックスもそうだが、海外でのビジネスをそっくり真似て本国で事業化すればイノベーションになるのであるから、後は、認知力の涵養と事業化への経営能力如何であろう。
このように、注意深さと観察眼、それに、起業家精神さえあれば、外国に行けば、いくらでも商売のタネ、イノベーション的発想を生むチャンスは充満している。
私自身、外国を回っているような生活を続けていたので、この国で、このようなビジネスを始めれば成功するなあ、と思ったことは何度もあるが、やっていたビジネスマン稼業がそれなりに充実していて興味深かった所為もあって、脇目を振れなかった。
尤も、言うだけで、自分には、起業家としての才がないことは、十分に認識していたと言う事情もあったと言うことでもある。
なお、大分前に書いたが、トヨタの張富士夫氏やキヤノンの御手洗冨士夫氏、パナソニックの中村邦夫氏については、アメリカでの駐在経験が、大きく、経営改革など経営戦略の構築に貢献したことは明らかであり、商社を筆頭に日本のMNCの多くのトップが海外経験者であること、もっと、明確なのは、グローバルベースのマルチ経営者カルロス・ゴーンCEOのケースを考えれば、前述したクリステンセンたちの主張の正しさが分かろうと言うものである。
世界に冠たるトヨタ生産方式(Toyota Production System)については、大野耐一氏が、「じつはかんばん方式は米国のスーパーマーケットからヒントを得たのである。」と言っていたのは有名な話で、とにかく、無理をしてでも、異文化異文明の錯綜する外国へ飛び出して、カルチュア・ショックの洗礼を受けることは、成長の源だと言うことでもある。