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この本は、”Japan Restored: How Japan Can Reinvent Itself and Why This Is Important for America and the World”
上智大学や慶応大学でも学びウォートンを出て、自動車や半導体などの経済摩擦時に日米交渉等対外貿易交渉にあたるなど国際経済に精通した現在経済戦略所長であるClyde Prestowitzの日本経済論。
抜本的な再生計画を実現して、世界に冠たる経済大国に復活した2050年の日本の姿を展望して、その道程へのシミュレーションを綴った興味深い本である。
”復活した日本 どのようにして日本は蘇り、その再生が如何にアメリカや世界にとって重要なのか”と言う問題を提起した経済学書で、ある意味では、日本人以上に日本を知った知日派の提言であり、現在の世界のシステムなどのベストプラクティスの導入なども目論んだ再生論であり、単なる絵空事ではなく、参考にもなることもあって、面白い。
日本は、かって、明治維新と第二次世界大戦の二度の改革を経験してきた。
これら過去二度の改革は、大きな危機に見舞われたのが切っ掛けとなったのだが、日本は、今まさに、アベノミクスが失敗すれば経済が崩壊するかもしれない短期的な重要問題のみならず、米軍の撤退など予断を許さない国際情勢の激変など、色々な危機が国家の非常事態を招きかねない状態にある。
これに対処するために、日本政府は、社会の様々な分野の知名人を糾合して「特命日本再生委員会」を立ち上げ、三度目の国家改革を行って、2050年に日本復活を実現した。
と言うシナリオである。
この本が書かれた2015年時点から、2050年に向かってのシミュレーションなので、2017年の現在読むと、現実と仮想が混在していて、事実関係に混乱を来すのだが、我々日本人とは、違った発想が随所に現れて困惑することもある。
しかし、著者が描きあげている2050年の日本復活像と言うかそのイメージが、非常に興味深い。
このシミュレーションで、まず、意表を突くのは、ソニーがサムソン電子の傘下に入って「サムソン—ソニー」になるとか、三菱重工がボーイングを買収すると言った産業編成である。
著者が言うように、日産がルノーの傘下に入り、パナソニックが日本史上最大の損出を出し、日立は数百の事業から撤退し10万人近い人員削減で会社を守り、エルピーダやルネサスが倒産寸前まで追い込まれ、超巨大なトヨタでさえシェアの低下に頭を抱えて・・・、かっての日本株式会社がこれであるから、何があっても可笑しくないと言うことであろうか。
東電が原発事故で危機に陥り、シャープは台湾の軍門に下り、東芝の惨憺たる苦境、電通の違法行為・・・コーポレートガバナンスの欠陥か経営者の無能なのか、弱り目に祟り目で、日本企業が迷走して危機的な状況が続く。
いずれにしろ、詳細は避けるが、著者の日本経済に対する知見や分析、評論はかなり的を得ていて、イノベーション立国、エネルギー独立国、日本株式会社から「ミッテルシュタンド」へ、「インサイダー」社会の終焉、等々の章での記述には、殆ど異存はない。
さらに、女性が日本を救う、とか、バイリンガル国家「日本」と言う指摘などは、当然であろう。
他に、信憑性はともかく、次のような仮説も提示していて面白い。
✓2017年、中国による尖閣占領危機
✓米軍が日本から完全撤退
✓沖縄で独立運動が勃発する 等々
この本のサブタイトルにもあるように、この本の重要な指摘は、
”結び―――アメリカと世界にとって日本が重要である理由”である。
まず、世界経済に占める、日本の経済規模や経済的貢献度も評価すべきだが、「グローバル・サプライチェーン」における、今日の世界経済を支える最も基本的なコンセプトやプロセスである「ジャスト・イン・タイム」や「カイゼン」が如何に偉大か。
日本の「侘び・寂び」の美意識から日本美の数々、無駄を排した簡潔な様式や作法、歌舞伎など伝統芸術、本音と建前の概念等々。
もっと重要なことは、日本が衰退し続ければ、アジア太平洋地域は勿論、世界全体が非常に不安定になる。
経済大国で、民主的で、大きな軍事力を持つ日本、第二次世界大戦後独自の平和外交を推進し、重要な近隣諸国やオーストラリアやインドと言った国とも相互安全保障体制を結ぼうとしている日本は、アメリカにとってかけがえのない大きな利益になる。
アメリカの地政学的な負担を大きく軽減するとともに、世界の民主主義勢力を強化し、世界の経済成長にも貢献してくれる。
日本復活は、全世界の、そして、特に、アメリカの、極めて大きな利害に関わっている。
と言うことである。
このあたり、ワシントンポストも論評しており、アメリカでは、かなり評価されているようである。
"Clyde Prestowitz's new book is one of the more thought-provoking forays into Asian-Pacific geopolitics to have been published in recent years — at least as noteworthy for its messenger as for its message." —The Washington Post
上智大学や慶応大学でも学びウォートンを出て、自動車や半導体などの経済摩擦時に日米交渉等対外貿易交渉にあたるなど国際経済に精通した現在経済戦略所長であるClyde Prestowitzの日本経済論。
抜本的な再生計画を実現して、世界に冠たる経済大国に復活した2050年の日本の姿を展望して、その道程へのシミュレーションを綴った興味深い本である。
”復活した日本 どのようにして日本は蘇り、その再生が如何にアメリカや世界にとって重要なのか”と言う問題を提起した経済学書で、ある意味では、日本人以上に日本を知った知日派の提言であり、現在の世界のシステムなどのベストプラクティスの導入なども目論んだ再生論であり、単なる絵空事ではなく、参考にもなることもあって、面白い。
日本は、かって、明治維新と第二次世界大戦の二度の改革を経験してきた。
これら過去二度の改革は、大きな危機に見舞われたのが切っ掛けとなったのだが、日本は、今まさに、アベノミクスが失敗すれば経済が崩壊するかもしれない短期的な重要問題のみならず、米軍の撤退など予断を許さない国際情勢の激変など、色々な危機が国家の非常事態を招きかねない状態にある。
これに対処するために、日本政府は、社会の様々な分野の知名人を糾合して「特命日本再生委員会」を立ち上げ、三度目の国家改革を行って、2050年に日本復活を実現した。
と言うシナリオである。
この本が書かれた2015年時点から、2050年に向かってのシミュレーションなので、2017年の現在読むと、現実と仮想が混在していて、事実関係に混乱を来すのだが、我々日本人とは、違った発想が随所に現れて困惑することもある。
しかし、著者が描きあげている2050年の日本復活像と言うかそのイメージが、非常に興味深い。
このシミュレーションで、まず、意表を突くのは、ソニーがサムソン電子の傘下に入って「サムソン—ソニー」になるとか、三菱重工がボーイングを買収すると言った産業編成である。
著者が言うように、日産がルノーの傘下に入り、パナソニックが日本史上最大の損出を出し、日立は数百の事業から撤退し10万人近い人員削減で会社を守り、エルピーダやルネサスが倒産寸前まで追い込まれ、超巨大なトヨタでさえシェアの低下に頭を抱えて・・・、かっての日本株式会社がこれであるから、何があっても可笑しくないと言うことであろうか。
東電が原発事故で危機に陥り、シャープは台湾の軍門に下り、東芝の惨憺たる苦境、電通の違法行為・・・コーポレートガバナンスの欠陥か経営者の無能なのか、弱り目に祟り目で、日本企業が迷走して危機的な状況が続く。
いずれにしろ、詳細は避けるが、著者の日本経済に対する知見や分析、評論はかなり的を得ていて、イノベーション立国、エネルギー独立国、日本株式会社から「ミッテルシュタンド」へ、「インサイダー」社会の終焉、等々の章での記述には、殆ど異存はない。
さらに、女性が日本を救う、とか、バイリンガル国家「日本」と言う指摘などは、当然であろう。
他に、信憑性はともかく、次のような仮説も提示していて面白い。
✓2017年、中国による尖閣占領危機
✓米軍が日本から完全撤退
✓沖縄で独立運動が勃発する 等々
この本のサブタイトルにもあるように、この本の重要な指摘は、
”結び―――アメリカと世界にとって日本が重要である理由”である。
まず、世界経済に占める、日本の経済規模や経済的貢献度も評価すべきだが、「グローバル・サプライチェーン」における、今日の世界経済を支える最も基本的なコンセプトやプロセスである「ジャスト・イン・タイム」や「カイゼン」が如何に偉大か。
日本の「侘び・寂び」の美意識から日本美の数々、無駄を排した簡潔な様式や作法、歌舞伎など伝統芸術、本音と建前の概念等々。
もっと重要なことは、日本が衰退し続ければ、アジア太平洋地域は勿論、世界全体が非常に不安定になる。
経済大国で、民主的で、大きな軍事力を持つ日本、第二次世界大戦後独自の平和外交を推進し、重要な近隣諸国やオーストラリアやインドと言った国とも相互安全保障体制を結ぼうとしている日本は、アメリカにとってかけがえのない大きな利益になる。
アメリカの地政学的な負担を大きく軽減するとともに、世界の民主主義勢力を強化し、世界の経済成長にも貢献してくれる。
日本復活は、全世界の、そして、特に、アメリカの、極めて大きな利害に関わっている。
と言うことである。
このあたり、ワシントンポストも論評しており、アメリカでは、かなり評価されているようである。
"Clyde Prestowitz's new book is one of the more thought-provoking forays into Asian-Pacific geopolitics to have been published in recent years — at least as noteworthy for its messenger as for its message." —The Washington Post