熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

台風15号による甚大な停電被害

2019年09月13日 | 政治・経済・社会
   今回、首都圏を襲った台風15号による停電の被害で、住民の日常生活のみならず、町工場や農漁業など、産業にも甚大な影響を与えており、まだ、収束のめどがついていないと言う。

   いろいろな原因があるであろうが、最大の要因は、「電線の地中化」をやっていなかったことに尽きると思っている。(千葉の電柱倒壊・損傷2000本 台風15号被害、経産省試算 と産経が報道)
   以前には、欧米に倣って、「無電柱化」「電線地中化」を目指す動きがあったようだが、
   太平洋戦争で都市が焼け野原になり、速やかに復興するために、電線を地中に埋設すると、架空線をかけるよりも高い費用がかかるので、当座一時的にと言うことで、電柱が立てられた。ところが、その後、高度経済成長期に突入し、電気や電話の需要が一気に高まって、一時的であった筈の電柱を、どんどん無秩序に立てて対応しなければなかったので、「無電柱化」「電線地中化」は無視されて今日に至っている。
   安上がりで安直な戦後復興を遂げ、Japan as No.1へと快進撃したものの、そのツケが、今、重大な障害となって日本を苦しめている。
   ある調査によると、欧米は100%、香港や台北やシンガポールもほぼ100%近く、ソウルで46%、ジャカルタで36%無電柱化されているが、東京23区は8%、恐ろしい程文明果てる都市で、恥ずかしい限りである。

   まず、「電柱や電線があると、景観が悪くなる」のは必定である。
   この口絵写真は、ボストンの一角だが、地上には、街灯しかない。
   私は、欧米に長く居たので、痛切に感じているのだが、電柱や電線のない風景の素晴らしさは格別で、電線を張り巡らせて青空さえ真面に鑑賞できない日本の都市景観の醜さとは、比較にならない。
   京都の三年坂が美しいのは、少なくとも、電柱のない江戸風景を維持しようとしているためである。
   悲しいことに、当時の美意識や民度から、遥かに下落してしまって、何が、日本人の誇り高き文化か疑いたくなるような国籍不明の今日の都市景観のお粗末さ、
   各地に復元された小京都に集う外人観光客、ヨーロッパの風格ある古都にも劣らない、あのような美しくて心地よいアットホームな生活環境が、本来の日本だったのである。

   災害時には、電柱の倒壊がおこり危険だが、阪神淡路大震災の時には、倒れた電柱や電線が道路をふさぎ、消防車や救急車の通行を妨げ、火事の鎮火や救護、物資の輸送が遅れてしまい、大きな問題になった。
   今回の千葉の停電などは、倒木などの影響で復旧作業が難航している。
   倒木や電線や電柱に飛来した障害物が被害を増幅し、多くの倒木を切断撤去するのが大変だと言うのである。
   勿論、電信柱システムにも利点があって、無電柱化にも、デメリットがあるので、完全に、電信柱が悪いとは言えないであろうが、今回のあまりにも後手後手に回って、セーフティラインの命とも言うべき電気の復旧に時間を要して困難を極めているのは、「無電柱化」「電線地中化」を怠った故である。

   時を見て、「無電柱化」「電線地中化」を進めるべきだと思うが、地中に埋まっているガス管や水道管とのかねあいや、地盤の液状化による地中線被害の心配や、それに、困難な道路工事等膨大な費用がかかるであろうし、今の電柱システムの解消にも役所や利害関係者との調整など、さらに困難とコストが増す。
   少なくとも、今後、新開発や再開発事業には、「無電柱化」「電線地中化」を義務付けて、徹底的に、景観と安全を保護すべきだと思う。
   
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