鍛えてきたプレゼン能力を発揮した、卒業を祝う会での子どもたちのあいさつ

大きな舞台に立たせてあげることで、子どもたちは普段の授業で伸ばせる力の数倍、数十倍もの学びを得ることができます。これは大人でも同じことですね。大きな舞台は当然プレッシャーがかかります。そのプレッシャーが人を大きく育てるのです。過剰なプレッシャーは人をつぶしますが、限界をほんの少しだけ超えるくらいのプレッシャーは、心の肥料となります。

6年生の卒業を祝う会。これも「行事をこなす」とう感覚が微塵でも担任にあったならば、子どもたちの成長を促すチャンスを摘み取ってしまいます。「あらゆる行事を使って、子どもたちを育てる」のが私たち教師の仕事です。

今回の卒業を祝う会では、3人の子が代表スピーチを行いました。
指導をした私が、実はほとんど指導をすることが必要ないくらい、3人の子どもたちはしっかりと原稿を書いてきました。その中で一人は、原稿で表現するのではなく、マインドマップメモで3分間ものスピーチを行いました。

私が指導をしたのは、「目線で勝負するんだよ。原稿やメモだけを見ながら話すのではなくて、三方向に目を配りながら、会場の雰囲気を感じながら話すんだよ。」という大人でも難しい課題だけです。

本当は動画で公開したいくらいなのですが、それは諸問題がありますので、ここでは文字記録として残しておきます。



まず一人目は、「始めの言葉」を担当した子のスピーチした内容です。

「私たち6年生は、あと3週間で卒業式を迎え、中学校へ進学します。

 卒業を間近に控え、中学校進学に向けての期待と不安が押したり引いたりと、複雑な気持ちです。卒業するのはさみしいけれど、6年間よく頑張ったという達成感があり、とてもうれしいです。残り少ない小学校生活の中で、この卒業を祝う会がまたひとついい思い出になればいいなと思います。

 そしてこの6年間でいろいろとお世話になった保護者の方々、先生方、主事さん方など、たくさんの人に6年間分の感謝と恩返しができたらいいなと思っています。

 お世話になった大人の方々だけでなく、今までいっしょに笑い合ったり協力し合った友達にも、感謝と恩返しができたら、とても素晴らしい卒業を祝う会になると思います。

 今日は短い時間ですが、いい思い出を作りましょう。」



次に、合奏と合唱の曲紹介をした子のスピーチです。

「次は、私たち6年生の合奏と合唱です。

 1曲目は「遥か」の合奏です。この曲はGREENという4人組歌手グループの曲で、映画「ROOKIES 卒業」の主題歌にもなっています。この曲には同じようなメロディーが何度も出てくるので、場面ごとの切り替えがとても大変でした。

 私たち6年生の目標は、「これまでにない、最高の卒業式を作り上げること」です。その卒業のイメージにピッタリの曲です。たくさんのハーモニーと楽器のパートに注意して練習を続けてきました。

 2曲目は、「YELL!」の合唱です。この曲は、いきものがかりという3人組歌手グループの曲で、合唱コンクール中学校の部でも課題曲となっていました。この曲は別れを迎える人、新しいことにチャレンジする人など、たくさんの人への応援ソングでもあり、本当の自分をさがす曲でもあります。

 私たちは間もなく卒業を迎えて、それぞれ自分の道を歩んでいきます。だからこそ別れがあり、新しい出会いがあります。今の私たちに合った曲なので、ぜひ聴いてください。どちらの曲も覚えやすいメロディなので、耳にしたことがある人も多いかもしれません。皆さんの心に響くような音色と歌声が届くように頑張ります。

 それでは聴いてください。1曲目「遥か」、2曲目「YELL!」。」



最後に、「終わりの言葉」をスピーチした子が話した内容です。これについてはノー原稿です。マインドマップのメモを見ながらスピーチをしています。実は、始めは原稿を書いてきたのです。しかし、3日前の練習をした時点で、どうも内容が薄いし、量も少なくて、私の基準に達していませんでした。そこで、

「昨年、終わりの言葉をスピーチしたR.O君は、何も見ないで3分間の話をしたよ。今年は去年の卒業式を超えるって言うんなら、R.O君のスピーチを超えられないとなぁ~。」

という指導を入れました。

その結果、苦労してマインドマップを書き、スピーチしたのが下記の内容です。なんと本番では、祝う会の4時間前に練習したスピーチ内容と少し変わっていましたが、それもまたマインドマップによるメンタルリテラシー(脳の使い方)に即しているから良いだろうと受け止め、担任二人は高く評価しています。

「皆さん、本日は卒業を祝う会に来ていただき、誠にありがとうございます。

 来賓と教職員の皆様、同窓会長さん、PTAと保護者の皆様と、いろいろと集まっていただきありがとうございました。

 まずは6年間の学校生活について話したいと思います。

 僕は入学式の時にいろいろと友達ができるかどうか心配がありました。でも、だんだん慣れてくると友達も増えてくるし、楽しいことが増えました。

 2年生では初めての学芸会を楽しく成功させることができたので、良かったと思います。

 4年生の学芸会では演技に慣れて、簡単になってきて、もっと演技が楽しくなりました。

 5年生では、いろいろな人に迷惑をかけてしまい、それは申し訳ないと思っています。5年生の林間学校では、初めてみんなと泊るのでワクワクしていました。

 6年生では、井上先生に鍛え直してもらい、マインドマップを教えてもらいました。つい最近、ワールドカフェというのも教えてもらいました。6年生の1番の思い出はに日光です。日光では「終わりの言葉」をやらせてもらいました。日光の次の陸上(連合陸上)では1000m走に出て、29人中17位という結果になってしまいましたが、楽しくできたのでいいと思います。

 次は、将来の夢を話したいと思います。

 皆さん、小学6年生のときにはどんな夢をもっていたでしょうか。
 僕は小学校の先生になりたいと思っています。理由は1年生から6年生まで、やさしくてもしっかりしている先生に出会い、「なりたい」と思ってあこがれていました。僕は可能であれば、香取小にもどってきて、香取小の先生になりたいです。

 次は合唱・合奏は皆さん、どうでしたか。
 僕たちは一生懸命やったので、楽しく聴いていただけたら嬉しいです。
本当に、保護者の皆さん、1年から6年まで見守ってくれてありがとうございました。今日は本当に来てくださってありがとうございました。」

メモを見ながらのスピーチなので、ところどころ修正した方が良い文がありますが、それにしてもですよ。150人の聴衆を前にするプレッシャーの中で、ノー原稿でここまで小学生がスピーチをすることができるのですから、あらためてすごいと思いました。
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