陸中野田駅にて停車中の36-200形をぼちぼちスナップしたのち出場したところ、ちょうど折良く陸中野田~小本間の代行バスが到着しまして、車内からは高校生や一般客がドッと下車して駅へと入って行きました。
岩手県北バスが運行している三陸鉄道・北リアス線代行バスは、とくに不通区間にある普代村や田野畑村のマイカー非利用者にとって無くてはならない生命線として運行されており、私のように不通区間を跨いで三陸鉄道に乗ろうとしている者にとっても有難い存在となっていますが、第一義的には普代村・田野畑村の学生や通院者等の都合に合わせたダイヤ設定がなされているため、運行は朝と夕方のみ……。しかも、小本で列車とバスが連絡するとは限りませんので、北リアス線を全線走破する場合には久慈発7:00と宮古発16:10・18:20の列車を利用する必要があります (久慈発16:20も、小本~宮古間は定期路線バスがあります)。このうち夕方発の列車は、夏の間でも100%明るい時間にかかるわけではありませんので、車窓からの眺めを確保するならば自ずと選択肢は久慈発7:00に限られます。さらに、この代行バスは土曜半減、日曜祝日全面運休ですので (久慈発7:00と連絡する陸中野田発7:40の便は土日祝運休……)、遠来の人間にとって非常にハードルが高いのが実情です。しかし……被災の実情に鑑みて遠来の客をもとより想定したダイヤではないはずですので、当面はこれで必要最小限を満たしているのでしょう。
それはさておき、陸中野田駅は道の駅が併設されて非常にデラックス(?)な雰囲気でして、「海鮮たっぷり・野田塩焼きそば」と記された屋台に思わず垂涎……でしたが、朝のため未だ営業しておらず (苦笑)。いずれ改めて……と念じて代行バスの客となり、定刻の7時40分から何故か2分遅れて出発しましたが、国道45号線を数百メートル走ったところで景色が激変……。それまでの普通に広がっていた街並みが突如途切れ、辺り一面ひたすら土台を残して津波が流し去った破壊の跡……。嗚呼……この運命の分かれ目は一体何なのでしょうか。そして間もなく、さらに脳天が思い切り殴られたかのような衝撃が……。十府ヶ浦と呼ばれる白砂青松の砂浜から剔られた膨大な量の松の大木が無造作に散乱し、木っ端微塵に破壊された分厚い防波堤が横倒しになり、道路脇の三陸鉄道も路盤を残して何もない……。
ただ不幸中の幸いと思われるのは、被災区間が約2kmとそれほど (?) 長くないこと。最近明らかになった復旧計画によりますと、陸中野田~田野畑間は来年4月の再開を目指すとのことですが、それもひとえに陸中野田~野田玉川間では防波堤の修築と並行して路盤を補修しレールを敷き直せばさほど困難なく (?) 復旧できるからなのでしょう。野田玉川から先は線路も道路も高い位置を走り、撮影名所となっている堀内駅近くのアーチ橋ももちろん無傷。如何にも1970年代につくられた国鉄地方駅らしい雰囲気が完璧に残されているという意味で極めて貴重な雰囲気が漂う普代駅には、久慈への帰りを待つDCが1両取り残されていますが、その日もそう遠くないことでしょう……。
しかしそれもあくまで、第三次補正予算に三陸鉄道の復旧費が正式に盛り込まれればの話。普代から先、国道45号線を行く代行バスは完全に三陸鉄道から離れ、圧倒的に深い雰囲気の山中をクネクネの峠道や巨大陸橋で越えて行くようになりますが、それは同時に普代~小本間の地理的条件が余りにも厳しいことを意味するわけで、この区間の海沿いを長大トンネルと高架橋で突破した三陸鉄道の線路が一度津波で破壊されてしまえば、その再建にも膨大な費用を要するのも道理……。費用対効果は単純に考えればとても期待出来ないかも知れませんが、鉄道が復興のシンボルとして地元の非マイカー利用者に多大な福音をもたらすのみならず、全国的にアピールする効果は絶大なものがあると思われますので、田野畑~小本間の復旧を可能にする予算も確実について欲しいものです。
ただ、ファンとして漠然とそう思うだけでは宜しくない……というわけで、TOMIXの三陸36形・復興支援バージョンは予約したほか (通販オンリーで、9月出荷分は申し込み殺到につき期限の9月1日を待たずに予約終了。次回は12月とか) 、先月末にネットニュースで見かけた被災線路使用の震災記念・復興祈願オブジェ発売には即ビビッときまして、さっそく三陸鉄道の公式HPにアクセスしたところ……200個全部超速攻で売り切れ (-_-;;)。追加の販売を現在検討中のようです。
そんなこんなで、岩泉線沿線へ続く壮絶に山深い道を走り抜けたバスは、最後に三陸北道路(将来の三陸縦貫道?……これの建設が優先されて三陸鉄道が後回しになる懸念も?)を一気に下って定刻通り小本駅へ。津波は小本駅周辺には到達せず、夏の緑あふれる静かな駅に降り立った私は、さっそく宮古までの硬券切符を購入してホームに向かったのでした……。