時計の針を5年前から再び半年前に戻しまして……震災直後、ネパールを訪れたついでに飛行機乗換のために訪れた香港では、主に東鉄線(九広線)に重点を置いて乗り・撮り鉄をしたのですが、そんな東鉄線をも合併して今や香港各地を股にかける香港鉄路公司 (MTR) はもともと地下鉄網(香港地下鉄)が母体。その実力を見せつけるかのように、香港の地下鉄は人の流れに合わせて稠密なサービスを展開しており、観光客は総じて2階建て路面電車・バスやスターフェリーに乗って移動したいと思うのをよそに、多くの香港住民は移動距離が近い場合を除き、あるいはルート選択上バス利用の方が便利であるという場合を除き、速く安く快適な地下鉄を大いに利用しているように見受けられます。そして、東鉄・西鉄線(西日本鉄道ではありません ^^;)や地下鉄線の主要駅にはバスターミナルが併設されており、さらなる郊外や団地へのアクセスも周到の極み。まさにイギリス的な合理主義がとことん応用されることで、恐ろしく過密な香港の都市交通が実にシステマティックに出来上がっている……と感嘆せざるを得ません (*^^*)。
そんな香港の地下鉄、最も眼を惹くのは香港島とランタウ島(大嶼山)の空港及び東甬市街を高速で結ぶ機場快線/東甬線でしょうか(終点付近を除きほとんどの区間を共有し、機場快線は専用のデラックス車両を使用し停車駅も限定)。駅間が非常に長く、巨大な吊り橋などのダイナミックな構造物を通過し、最高速度も130kmを超えますので、並行して走る空港バス (系統番号にAが付きます) に乗車中あっという間に抜かれるたびに爽快な屈辱感(何じゃそりゃ)が全身にみなぎりますが (^^;)、いっぽう5扉ロングシート車が地下線内で激しく突進する光景も何やらSFチックな未来都市の乗り物という雰囲気があり、個人的には結構好きです (笑)。
しかし、それ以上にそこはかとない親しみを覚えるのは、フツーの地下鉄路線で活躍するフツーの直流モーター車♪ 1994年に初めて香港を訪れた際には「ふーん」としか思わなかったのですが (^^;)、その後ロンドンを訪問して以来、側面の雰囲気が「ロンドンのSurface Lineっぽくてシブい♪」と思えるようになりましたし (Surface Lineとは、当初蒸気鉄道として建設された、地表近くを走る地下鉄路線のこと。車体断面は深部を走るTubeと異なり一般的)、何と言っても今や古くなった分だけ車内の雰囲気も落ち着いたものに感じられます。加えて走行音も直流モーターですので、「真面目に走ってます」感がひときわ強く感じられます……。最近中華人民共和国で雨後の筍のように増殖している地下鉄が如何にも安っぽい車体のVVVF車である分、余計に香港の英国紳士的な地下鉄車両がダンディに見えるのかも知れません……。