震災直後のネパール訪問ではヒマラヤを拝むことは出来なかったのですが(一応、カトマンズからジャナクプル鉄道を訪ねた際、飛行機の中からエベレストを遠望したものの、やはりガラス越しではなくナマでないと……)、それではヒマラヤの彼方のチベットはどんな感じなのか?ということで、5年前にチベットを訪れた際の記録を掘り起こしてみました。悪名高き青海チベット鉄道の開業直後の模様につきましては既に5年前にアップしましたので、今回は首都ラサから日帰りで楽しめる、ちょっと(いや、激しく?)デンジャラスな路線バスとして、ラサの東にある名刹・ガンデン寺へ向かう参拝バスをご紹介しましょう。
広大無辺なチベット高原では、近年キタイ国の打倒インドを目論む軍事戦略に基づいて見事な舗装道路が増えつつあり、そこを悪名高き寝台バスや普通の詰め込みバスが行き交っていますが(一見するとラクチンそうな寝台バスが如何に悲惨な乗り物であるかは、一度乗れば分かります……。高速列車CRHもそうですが、コワイもの見たさな方はどうぞ)、短い路線でも朝出発→夕方着、長い路線になると2泊3日~3泊4日 (あるいはそれ以上) という路線は、短期の訪問で乗るのはオススメできませんし、何しろ切符がすぐには手に入らないことも。バスターミナルもキタイスキーばかりが行き交う新市街の不便な場所にあります。しかし、ラサ近郊のバスは旅行者が通常宿泊する旧市街の中心部で客引きしていますし、乗車時間も片道2~4時間とお手頃♪
とくに、今回ご紹介するガンデン寺参拝バスは、敬虔なチベット人参拝客の行動を車内で観察するという面白みがありますし、主要道から外れて目指すガンデン寺へ登って行く坂道のデンジャラス度が半端ではありません! まずは朝6時半から7時頃、ラサの中心・ジョカン寺前の広場に行きますと「ガンデンガンデン!」と客引きしており、そのままバスに乗り込んでのんびりする間もなく客が一杯になりいざ出発! 走り始めて1時間半ほどは、ラサ河に沿って夢のような田園風景の中を快調に飛ばして行きますが、寺へ向かう坂道に入ると……未舗装・狭隘な九十九折りの超極悪路! ところどころ、どうしようもないぬかるみもあり、その都度客は全員下車し、チベット人の運転手氏が必死のハンドル捌きでぬかるみを避けて行きますが……うわぁ~あと数cmズレると崖を真っ逆さま……なところもしばしば (@o@)。崖っぷちの超ヤバい道ですぐに思い浮かぶのは、山梨交通・甲府~広河原線(南アルプス登山バス)の夜叉神峠~広河原間ですが、広河原線は舗装道路でガードレールがあるのでまだまし……。もっとも、運転手氏を全面的に信頼して慣れてしまえばこっちのもの (笑)。
しかし、狭隘路線バス党にとって悶絶モノのこの坂道には別の問題も……。ガンデン寺はチベット仏教の中でも名刹中の名刹ですので、クネクネ悪路は余りにも不釣り合いではないか?と思うのですが、この寺にはキタイ国の強引な支配にしばしば抵抗して来たがゆえに幾度も封鎖や破壊を蒙ってきた悲惨な歴史があり(今ある大伽藍は、赤い軍隊による砲撃で全て破壊されたあと、チベット人が自力で再建しつつあるもの)、たぶん今でも政府との関係は必ずしも宜しくないはず。このため、道路整備においても満足な助成を得られないのでしょう。あるいは、俗世から遠ざかって戒律を守る上で、道の悪さはそれはそれで悪くないのかも知れません。とはいえ、青海チベット鉄道全通で観光客が激増した以上、観光客の利便を高めるために未舗装道路を整備するという発想もあるでしょうし、有り余る金で道路を整備して速攻で反抗を鎮圧しようというのもまたバブル後のキタイスキーが考えそうなこと。今頃は道路整備が進み、この寺もキタイスキー観光客のるつぼと化している可能性があります (-_-;)。
ともあれ、いつの間にかバスは極悪狭隘路を何とかよじ登り、ついに標高4300mのガンデン寺に到着! 出発まで3~4時間ほどフリータイムがありますので、参拝・食事・さらに高いところへ徒歩で登ってピクニック&昼寝などなど……思い思いに過ごすことが出来ます(出発時刻をしっかりと訊いておくのは必須)。この寺院のロケーションはまさに「天○の城ラ○ュタ」そのものの超!圧倒的!究極!ものですので、ラサに巡礼・観光旅行しようという奇特な方は是非……。但し、空気はとにかく薄いですので、富士山とほぼ同じ高さのラサで高度順化を終えていても再び高山病になる可能性があります。また、キタイ国とチベット人の関係が悪化する都度この参拝バスは運休となりますので、注意が必要です。