三陸鉄道で宮古に到着した後は、何らかの手段によって盛岡に戻り、既に予約していた「はやぶさ」のグリーン車で首都圏に戻ることにしていたのですが、夕方6時頃に盛岡に着けば良いということで、いくつかの移動プランを考えていました。その最も単純で安易なものは、盛岡~宮古間の移動シェアの圧倒的部分を占める「106急行バス」を利用すること (106は国道106号線の意)。宮古駅周辺で撮り鉄や海鮮賞味の後、早めに盛岡に戻ってジャージャン(炸醤)麺か焼肉・冷麺に舌鼓を打てば、北東北の旅の締めくくりとして上々というもの。しかしここは折角ですので、山田線の山越え区間にも乗りたい……。とはいえ、宮古から海沿いのバスを乗り継いで釜石に到達し、快速「はまゆり」で盛岡に行くという方法もあります。
そこで、行き当たりばったりでいつの間にかいずれかのプランに落ち着けば良いか……と思いまして、まずは10時10分に発車する岩手県北バスの (岩手) 船越駅前行きバスに乗ることにしました。津軽石駅で被災したキハ110を見学したのち宮古に戻って来るのも良し、「道の駅やまだ」にてタッチの差で連絡するかしないか分からない岩手県交通の釜石行バス(岩手県北バス公式HPの時刻表参照) に乗り継ぐも良し……。そこで駅前広場に行ってみますと、他の市内・近郊バスはほとんど小振りな富士重工8Eボディであるのに対し、何と岩手船越行として待機しているバスは7Eのワンロマ!!(中央扉がデカいので、イマイチ貸切兼用とは思えず、「ワンロマっぽい」という程度の表現が妥当なのかも ^^;) 潮風に当たり続けた車体はかなりボロボロ気味ですが、昔気質な車体で力強く走ってくれそうです♪ そして10時10分、山田線代行バスとしての役割を事実上担っている船越行は (JRの定期券所持客はそのまま乗車可)、20人近い客を乗せて出発進行! 間もなくすれ違った8Eの宮古駅前行は座席ビッチリに立ち客多数の超満員でしたので、あぁ~デカいワンロマ(?)で良かった!という感じです (^^;
しかし、そんな路線バス趣味初心者的な浅薄な考えをよそに、沿線の被災の実態は壮絶の限りを尽くしていました……。宮古駅に近い商店街では「ここまで津波が来ました」という掲示を出しながらも奮起して営業を再開していましたが、海が近づくにつれてそのような余裕を許さない世界となり……形を留める建物といえども悉く1~2階が津波に破られ、「解体OK」と殴り書きをされている有様……。宮古市役所も2階までは完全にベニヤ板で覆われていました。そして……橋桁が消えたJRの閉伊川橋梁、砕け散った防波堤、ぐにゃりと曲がった防潮扉……。
津軽石駅に放置されていたキハ110は跡形もないことがバスの車内から確認できたことから(帰宅後ネットを見たところ、海の日連休直前にその場で解体処分となったたとか……合掌)、引き続き乗り続けたところ、山田町の中心街に近づくにつれて極限の世界が広がっていました。一面の住宅街が全て津波と火災で消え去り、マンションの2~3階までが完全に筒抜けとなり、焼けただれたビルの残骸が並ぶ山田中央町バス停周辺の光景に至っては、写真のみで知る敗戦直後の東京の焼け野原そのもの……。そんな中でも普通に(しかもマイカーを失った人が多いため大量に)バスの乗降があり、バス停すぐそばの美容院はいち早く仮復旧して大繁盛しているという……。被災地の人々のたくましさに胸を打たれると同時に、そんな現実を日本国全体としてサポートし切れていない現実を心苦しく思うのみでした。焼け野原の光景がそのままである限り、紛れもなくこれは「敗戦」でしょう……。
その後、バスは終点・岩手船越駅の手前で「道の駅やまだ」に到着。すると……こちらがバス停に止まる直前に岩手県交通の釜石行(国際興業わさび色キュービック)が発車~(汗)。これは要するに……「大槌以南の現状はもっと困難が多いので、当面旅人は引き返せ」という天の声なのだろうと思いまして、岩手船越駅で下車後少々佇み、駅のすぐ下まで津波が押し寄せた惨状や美しい入り江をバックに堆く積まれた瓦礫の山にショックを受けたのち、「道の駅やまだ」に戻ったのでした。
地元の特産品や日用品が豊富に並ぶ「道の駅やまだ」の店内は、地元民や観光客で大賑わいでホッと一息。私も気分転換に「岩泉牛乳ヨーグルトドリンク」を購入し、濃厚ながら爽やかな美味!にようやく慰められる心地がしたのでした……。また、ここでは山田町の製麺業者特製の「わかめラーメン」を購入したのですが、少々ヌメリ気のあるツルツルシコシコな麺と透き通った海老出汁塩味スープの組み合わせは超絶に絶品!!(*^O^*)
買い物が済んだあとは、営業所から再び出て来たワンロマ(?)に乗って宮古駅前に戻り、駅前の料理屋で昼食として海鮮丼を食べたのですが、2000円という値段が壮絶に安く感じられるほど凄まじい量の超!ぷりぷり新鮮美味海鮮各種てんこ盛りに驚愕……。また、宮古駅といえば、Kioskで売っている「相馬屋のあんぱん・クリームパン」が安くてほんのり甘くマジでツボな味わい……♪ 先日は「目黒のさんま祭り」で宮古産のサンマに多くの人が舌鼓を打った云々……という話題がネットで見られましたが、宮古を取りまく食の超絶な美味さは実際に訪れてみてはじめて深く体感できると思われますので、皆様もいずれ是非……。
ともあれ、めくるめく山海の恵みを生み出し、首都圏も知らず知らずのうちに多大な恩恵を蒙っている三陸……。この地に、元通りとは行かずとも一刻も早く平穏な生活が取り戻され、再び豊かな物産が生み出されることは、単に被災地のためだけではなく日本全体のためなのだ、ということを強く認識させられたのでした。