~あらすじ~
吉敷の元妻・加納通子は奇怪な運命に翻弄されてきた自らの半生を振り返っていた。
6才の冬、庭の柿の木の根元に埋めたある忌まわしいもの。
「首なし男」に追われる幻影に悩まされながら、
少女時代に体験した数々の悲劇の真相を探る決心をした通子。そこに明かされる凄絶な過去。
一方吉敷は獄中にいる死刑囚の夫の冤罪を主張する老婦人と出会う。
再審請求のため奔走する吉敷が対面した事件の関係者はなぜか、通子と因縁の深い人々ばかりだった。
~感想~
本書はミステリと呼ぶにはやや据わりの悪い代物である。
だが、圧倒的な筆力と一人の人間がこれだけの物語を紡ぎ出せることに感嘆と驚愕の念を禁じえない。
これこそはまさに氏の集大成にして金字塔。島田文学の最高峰ここに在り!!
(以下ネタバレ→)そうだ! やはり物語は大団円のハッピーエンドが最高だ! これが笠井潔や若手作家なら、井戸さらいの直後にでも恩田氏は亡くなり、吉敷は職を追われていたことだろう。おとぎ話でも構わないと、島田荘司は期待を裏切らない。こうでなくては! 本作中なにより驚かされるのは、読了後余韻に浸る中気づく、犯人がまったく指摘されていないという事実。前代未聞(某メタ作家は除く)、犯人のいないミステリ。……って気づかなかったのは僕だけ?
02.10.9~10
評価:★★★★★ 10