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ミステリ感想-『奇術探偵曾我佳城全集』泡坂妻夫

2002年10月20日 | ミステリ感想
~収録作品と感想~
※感想順はハードカバー版のものです

『天井のとらんぷ』
(ネタバレ→)ショートという言葉を張るために流行を設定に組み入れた。実に巧み。

『シンブルの味』
逆転のトリックが見事。

『空中朝顔』
『蔭桔梗』や『比翼』の系列。短いなりに。

『白いハンカチーフ』
これは珍しい。トリックの張り方が奇抜。説得力はやや薄いが。

『ビルチューブ』
これはうまい! 伏線の数が群を抜く。

『消える銃弾』
チェスタトンばりのトリック。

『カップと玉』
トリックがやや言い訳がましいが、結末に味。

『石になった人形』
やや難。

『七羽の銀鳩』
突拍子もない結末に面食らった。

『剣の舞』
愛憎どろどろ。も、結末に救い。

『虚像実像』
これはアンフェアですよね?

『花火と銃声』
この長さに詰め込まれた驚異の重量感。逆転にしてあからさまな真相。傑作。

『ジグザグ』
序盤の軽妙なかけ合いがいい。

『だるまさんがころした』
トリックは味気ないが、物語が光る。

『ミダス王の奇跡』
これは伏線を張るだけのお話。ここから質が明らかにトーンダウンした。

『浮気な鍵』
ただの奇術譚。不満。

『真珠夫人』
対処がいまひとつ意味不明。

『とらんぷの歌』
謎の設定が不明瞭。惜しい。

『百魔術』
トリックが解りやすすぎ。

『おしゃべり鏡』
20年越しの伏線に脱帽。

『魔術城落成』
こんな結末は望んでいなかった。残念。


~総括~
短編集『花火と銃声』所収の7編(『石になった人形』~『だるまさんがころした』)を頂点として、以降の凋落ぶりは明らか。泡坂妻夫の真価はこの程度ではないはず。故に評価は辛くなる。


02.10.20
評価:★★★★ 8
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