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ミステリ感想-『天使が開けた密室』谷原秋桜子

2008年01月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
バイト先で高額の借金を負うはめになった倉西美波。そこに「寝ているだけで一晩五千円」という怪しげなバイトが舞い込んだ。
背に腹は代えられず引き受けるも密室殺人事件に巻き込まれて……。
創元推理文庫版には短編「たった、二十九分の誘拐」も併録。


~感想~
趣味が悪いだけのオチ無しスプラッタが推理作家協会賞を獲ってしまう、石を投げればミステリに当たる、猫も杓子も本格な現代。
ラノベ界でも尻馬に乗って次々とエセミステリ作家がデビューしたそうだが、そんな玉石混交の中にもやはり本物はいるもので、氏はその数少ない一人。
なにぶんレーベルがレーベルだけに(富士見ミステリー文庫)事件が起きた瞬間にトリックも犯人も解ってしまうが、伏線の妙や、真相と同時に明かされる冒頭のモノローグの意味など、その手腕は見事。
一目瞭然のトリックとはいえ、いまだに大手を振ってメインに使われる、あのトリックを捨てトリックとして用いたことにも意地と矜持を感じた。


08.1.11
評価:★★★ 6
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