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ミステリ感想-『絶望ノート』歌野晶午

2009年06月15日 | ミステリ感想
~あらすじ~
中学2年の太刀川照音は、「絶望ノート」と名づけた日記帳に、いじめの苦しさと両親への不満を書き連ねていた。
そんな彼はある日、校庭で奇怪な石を見つけて持ち帰り、それを自分にとっての“神”だと信じた。神の名はオイネプギプト。自らの血をもって祈りを捧げ、いじめグループの中心人物の死を神に願った。はたしていじめっ子はあっけなく死んでしまい……。


~感想~
これなんてデスノ?
それはおいとくとしても、効果的ではない後出しジャンケンといった印象の、不満ばかり後に残る作品である。

どんでん返しが連続するミステリでは、「実は●●は●●でした」をくり返すだけの安易な手法に陥ることがあるが、これはその典型例の一つと言えるかもしれない。
また、全体の2/3を占める手記が、たとえば『眩暈』や『黒猫館の殺人』とは異なり、リアルタイムで記されていることもあり、現実の流れに沿って記述がゆらいでしまい、内容のどこからどこまでが真実で、どこからどこまでが嘘なのか、あまりにも縛りがなさすぎるのがネック。
ましてや種明かしで「ここからここまでは本当で、ここからここまでは嘘でした!」と言われても驚くことはできない。また、手記を離れた部分でも「実は●●は●●でした」の連発で、伏線も少なく、受ける衝撃は非常に薄い。
とどめに結末では悪癖を再発させてしまい、全編にわたって煙に巻かれただけのような気にさえなってしまう。
駄作ではないが、こういった趣向で、ここまで長大にするならば、もっと他にやり口はいくらでもあったのではなかろうか、と思えてならない。


09.6.4
評価:★★☆ 5
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