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ミステリ感想-『初恋ソムリエ』初野晴

2009年11月30日 | ミステリ感想
~収録作品~
スプリングラフィ
周波数は77.4MHz
アスモデウスの視線
初恋ソムリエ


~感想~
前作『退出ゲーム』と比べて本格味が薄いという評判を事前にちらほら聞いていたが、個人的にはむしろ前作よりもいやましているように思ったのだがどうか。
というのも、前作のトリックは大半がいわゆる物理化学の応用授業で、いやいや「トリックはいくらでも作れる」って豪語されても二●堂先生、一般的ではない科学知識で奇妙な現象を起こして「トリックです」って言い張られても、テレビで映像として怪奇現象を見せるでんじろう先生にはかないませんよ系の(長い、そしてわかりづらい譬え)合って無いようなトリックばかりだったので、今作『初恋ソムリエ』のほうが、謎の提示・推理というパートを意図的に薄めてはいるものの、単純にトリックの魅力としては上回るのではないか。
薄めている、といってもそれは物語の流れを邪魔しないように、自然に謎と推理を溶け込ませたためであって、決してマイナス要素ではない。
前作をふまえてのキャラたちの軽妙なやりとり、吹奏楽部してる音楽パートの面白さ、話が進むほどに増えていく仲間集めの楽しさと、手軽に読めて気楽に笑える、一般層に対するアピールもさらに増した良作である。


09.11.30
評価:★★★☆ 7
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