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ミステリ感想-『四重奏』倉阪鬼一郎

2014年08月27日 | ミステリ感想
~あらすじ~
<堕天使、占星術、魔術、騙し絵、迷宮、愛死、弦楽>各部屋に悪魔的な意匠をちりばめた館で奏でられる殺人組曲。屋根裏部屋から世界は覗かれ、倫理の欠片もない探偵や殺人鬼が暗躍する。館を支配する昏い旋律が止むとき、世界を揺るがす真相が明らかに。鬼才が技巧の限りをつくして描きあげた騙し絵ミステリー!
※裏表紙から転載


~感想~



もう本当に何が何だかわからない。
文章は煩雑きわまりなく、詩的で謎めいた会話の意味がつかめないどころか、話の筋を追うことすらできない有様。
どこまでが比喩でどこまでが現実なのか、そもそも何が起こり何を語っているのか、断片的に得られる情報を放置しながらLと同じ表情でなかば苦行のごとく読み進めること160ページ、まずはいかにもクラニーらしいあんまりな舞台背景が明かされ、それでもなおストーリーそのものはわからずにいると……。
趣向が明かされるや唖然呆然愕然のもう笑うしかないバカ過ぎるトリックに魂を抜かれた。なんだこれは。なんなんだこれは!
仕掛けがわかってもなおややこしい、読み返す気も起きないようなバカさ加減に、ただただ苦笑するばかり。
最新作「波上館の犯罪」を「バカミスに別シリーズを悪魔合体」と紹介したが、お詫びして訂正します。本当の悪魔合体はこっちでした。

だがこれはいくらなんでもやりすぎた。160ページも何が何だかわからない文章に付き合わされるのはきつすぎるし、真相開示を境に物語は再び詩的に私的な世界へ回帰していき、幻想的なラストを迎えてしまうのもひとりよがり。
バカミス界の小林幸子を自認する最近のクラニーにもしいま本作を書かせたならば、これだけの仕掛けを弄しつつもわかりやすい物語を書き上げることだろうが、この時点の作者には腕が(あるいは親切さが)無かったのだろう。
一読の価値はある、ありすぎるとんでもないバカトリックながら、それが明かされるまでの道のりはこの上ない苦行なので、読むなら十分に覚悟を。


14.8.25
評価:★★★ 6
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