~あらすじ~
美術館付属の喫茶店でバイトする奥本美奈は画家の明石尚子にモデルに誘われる。
奇矯な発言の目立つ明石の自宅隣に建つ洋館と奇妙な住人。
その洋館では3ヶ月前、親友の真利子が首無し死体で発見されていた。
~感想~
「イマドキの女子高生」なんて枠組みから数光年かけ離れた暴力的かつ退廃的な彼女らの日常(?)を筆頭に、登場人物にいわゆる常識人がおらず、どいつもこいつも頭のネジが数本外れているのがまず特徴。
死体マニアや折原一作品の語り手みたいな精神崩壊をきたした彼らが交わす会話は、当然のごとく現実離れした上滑りしまくるもので、首と衒学と意味不明な詩が飛び交い、薔薇ならぬ百合展開と相まって一般的な読者を拒絶……しそうなものだが、平易な文体と何が起ころうと飄々とした語り口で異様に読みやすいのが良いところ。
そして解決編、急に古き良き本格ミステリに立ち返ったように、伏線を段落ごと転載し丁寧に拾い集めつつ、決して多くない登場人物の中でどんでん返しを連発させ、意外な犯人を用意してみせたのはお見事と言う他ない。
振り返ってみればあからさまな伏線ばかりなのだが、エキセントリックな発言の渦に紛れ込ませ、そうとは気づかせない手管が面白い。森博嗣が「ものすごく遠回しなくどい文体に伏線を紛れ込ませれば誰も気づかない(うろ覚え)」と冗談半分に書いたことがあるが、それの奇人変人バージョンといったところか。
伏線を段落ごと転載したのはこれまで醸成してきた雰囲気を壊した感もあるが、おかげで伏線とどんでん返しの妙に貢献したし、終局での犯人の独白とエピローグで十分に空気感は挽回できたろう。
この作者にしか描けない独特の、そして意外に、といっては失礼だが意外に良く出来た秀作でした。
また文庫版のカバーイラスト、会田誠「切腹女子高生」はたぶん相当数の読者の購入意欲を削いだものの、これ一枚で本書の内容を表したといって過言ではない「だいたい合ってる」逸品なので、ぜひ書店でカバーだけでも見ていただきたい。
14.8.22
評価:★★★ 6
美術館付属の喫茶店でバイトする奥本美奈は画家の明石尚子にモデルに誘われる。
奇矯な発言の目立つ明石の自宅隣に建つ洋館と奇妙な住人。
その洋館では3ヶ月前、親友の真利子が首無し死体で発見されていた。
~感想~
「イマドキの女子高生」なんて枠組みから数光年かけ離れた暴力的かつ退廃的な彼女らの日常(?)を筆頭に、登場人物にいわゆる常識人がおらず、どいつもこいつも頭のネジが数本外れているのがまず特徴。
死体マニアや折原一作品の語り手みたいな精神崩壊をきたした彼らが交わす会話は、当然のごとく現実離れした上滑りしまくるもので、首と衒学と意味不明な詩が飛び交い、薔薇ならぬ百合展開と相まって一般的な読者を拒絶……しそうなものだが、平易な文体と何が起ころうと飄々とした語り口で異様に読みやすいのが良いところ。
そして解決編、急に古き良き本格ミステリに立ち返ったように、伏線を段落ごと転載し丁寧に拾い集めつつ、決して多くない登場人物の中でどんでん返しを連発させ、意外な犯人を用意してみせたのはお見事と言う他ない。
振り返ってみればあからさまな伏線ばかりなのだが、エキセントリックな発言の渦に紛れ込ませ、そうとは気づかせない手管が面白い。森博嗣が「ものすごく遠回しなくどい文体に伏線を紛れ込ませれば誰も気づかない(うろ覚え)」と冗談半分に書いたことがあるが、それの奇人変人バージョンといったところか。
伏線を段落ごと転載したのはこれまで醸成してきた雰囲気を壊した感もあるが、おかげで伏線とどんでん返しの妙に貢献したし、終局での犯人の独白とエピローグで十分に空気感は挽回できたろう。
この作者にしか描けない独特の、そして意外に、といっては失礼だが意外に良く出来た秀作でした。
また文庫版のカバーイラスト、会田誠「切腹女子高生」はたぶん相当数の読者の購入意欲を削いだものの、これ一枚で本書の内容を表したといって過言ではない「だいたい合ってる」逸品なので、ぜひ書店でカバーだけでも見ていただきたい。
14.8.22
評価:★★★ 6