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ミステリ感想-『巴里マカロンの謎』米澤穂信

2020年02月08日 | ミステリ感想
~収録作品とあらすじ~
セットで注文できるマカロンは3つまで。しかし小山内さんの皿には4つのマカロンが乗っていた…表題作
文化祭で騒動に巻き込まれた小山内さん。彼女が持っていたはずのCDは消えてしまい…紐育チーズケーキの謎
マスタード入りのロシアンルーレットあげぱんを食べた4人。しかし誰も当たりを引いたと名乗り出ず小鳩くんに調査が依頼される…伯林あげぱんの謎
小山内さんを慕う後輩が無実の罪で停学にさせられた。濡れ衣を晴らすため二人は動く…花府シュークリームの謎


~感想~
小市民シリーズ11年ぶりの新作。番外編。
番外編とあってか謎はどれも小粒で、出題と同時に正解か、悪くても真相に至るとっかかりが即座にわかってしまう甘口仕様。
そのあたりは昨年このミスにランクインした青崎有吾「早朝始発の殺風景」と同じだが(※殺風景ほど簡単ではない)小市民シリーズの小山内さんと小鳩くんといえば前作「秋期限定栗きんとん事件」のように本当の小市民より卓越した頭脳の持ち主で、思い上がった小市民を上から目線で叩き潰す存在であり(※偏見)、そんな彼等が読者より後に真相にたどり着くどころか、あからさまな伏線に全く気付かず「そこにあるだろそこに」とじれったく思われては完全にキャラ崩壊であり、シリーズ作品として成立しなくなっているきらいがある。
というか近年の倉知淳のように、たったこれだけの真相にたどり着くために余りにもページ数を掛けすぎていて、半分の文量で書けたはずだと思えてならない。
特に顕著なのがラスト2編で、これとそれが揃った時点でほとんどの読者には真相が見えるのに、なぜ小鳩くんと小山内さんだけがピンと来ないのか不思議でならない。

一方で本作中で白眉なのもその2編であり、「伯林あげぱんの謎」は真相丸わかりながら全ての伏線が収まるべきところに収まる綺麗さが、「花府シュークリームの謎」は例に上げた「早朝始発の殺風景」と同じくこの上なく素晴らしいエピローグが、読後感を満足行くものに仕上げている。
なにはともあれ11年ぶりにシリーズ再開したことは喜ばしく、次の冬期限定では謎や真相の強度も上げてくれれば言うことはない。


20.2.6
評価:★★★ 6
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