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ミステリ感想-『他殺岬』笹沢左保

2022年11月10日 | ミステリ感想
~あらすじ~
フリーライターの天知昌二郎は美容研究家の環千之介の詐欺を暴き、自殺に追い込んでしまう。環の娘も岬から身を投げ、残された夫は天知の息子を誘拐し「5日後に殺す」と脅迫。
天知はそもそも娘の死が自殺ではなく他殺であれば動機が無くなると考え、調査を始める。


~感想~
「誘拐犯に許してもらうため自殺が他殺だった証拠を探す」という激熱だけど「そうはならんやろ」という斜め上の回答がまず面白い。
たった5日のタイムリミットかつ一般人の調査能力のため、物語を動かすべく逆説的に話は爆速で進み、次から次へと新事実が明らかとなり容疑者も一気に絞り込まれる。特に理由もなく天知がクッソ強いのは笑った。
そして期待通りに冒頭で語られる別事件が本筋に絡み、5日後に罪もない子供を殺すというよく考えればこれも「そうはならんやろ」な残虐ファイトの理由も明かされ、収まるべきところへ全てが収まっていく完成度の高さはすさまじい。
唯一ある人に天罰が下らないのは残念ながら、それも言いがかりにすぎないだろう。
「本格ミステリ・ライブラリー」でも文句なしの傑作を集めた有栖川有栖が、数ある笹沢左保作品の中から徳間文庫の復刊企画で5作目にチョイスしただけはある良品だった。


22.11.10
評価:★★★☆ 7
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