相撲協会は朝青龍の汗を黙認しているらしい。営業上の配慮であろう。相撲協会が財団法人の特典を受けていなければ余も黙っていただろう。
テレビの画面でもはっきりと朝青龍の胸に汗が球をなしているのが見えた。優勝決定戦の前の両力士の様子をNHKのカメラが追っていたが、琴欧州は緊張のためか控え室にカメラを入れず、付け人が部屋の外をがっちりとガードしていた。
一方、朝青龍は珍しく盛んに鉄砲をしたり、四股を踏んでいた。その前の栃東戦があっけなく終わったのでウオームアップが必要だったのかもしれない。それはいい。立会いの前になってタイミングよく汗が噴出してきた。
問題は立会いの前に横綱がタオルで胸の汗をぬぐわなかったことである。体の汗をぬぐうのは相手に対する礼儀でもあるが、公正な試合を担保するためでもある。さもないと体に油を塗って勝負するモンゴル相撲やトルコ式レスリングと同じになる。突きや体がぶつかったときに滑って不利が生じる。
土俵下の審判か行司が注意すべきことであろう。まま、こういうことがある。そうして大体において横綱とか大関のような上位者が汗をそのままにすることを黙認する。仕切りの手つき不十分を黙認することも同然である。大相撲の伝統であろうか。相撲協会が節目節目で演出を行うことは明らかである。興行というシステムによっているかぎり止むを得ないことであろう。
さて、この場合相撲協会はどちらに勝ってほしいか。出来れば両方勝たせたいのが協会の親心であろうが、そうもいかない。
琴欧州は今場所すでに大記録を達成している。新関脇で12連勝という前人未踏の記録である。優勝すればさらに入幕7場所目で優勝という大記録を立てる。これも相撲人気のためには欲しいだろう。
一方、横綱が勝てば、六連覇タイ記録が生まれ、さらに来場所優勝すれば7連覇新記録という相撲を盛り上げる格好の話題が出来る。それに、年間六場所完全制覇という大記録も生まれる。琴欧州の未来はまだまだあるということを考えれば、ここは横綱にかかった記録を優先したいだろう。
余は積極的な八百長や陰謀があったと言っているのではない。暗黙の、消極的な黙認、汗をそのままにするという、があったということを言っている。責めても始まらない。これが日本の社会であり、相撲協会でもあるのだから。
追記:今朝のテレビで大鵬親方が言った。<強いものが勝つのが相撲の発展、人気のためには良いことだ> 補足 強いもの = 横綱 なら理想的だ。また大鵬は横綱が来場所も優勝して7連覇の記録を立てることが大切だ、とも。要するに、<拭わぬ胸の汗>は横綱に与えられたささやかな特権の一つであるということ。強いものにプラスハンデがつくということが競馬とは逆だ。悔しかったら横綱になってみろ、ということ。横綱のインセンティブ。まさに番付が一つ下なら虫けら同然の世界だ。それでこそ、ハングリースポーツの雄たりうる。