注目の岩国市長選挙で、自民・公明推薦の福田良彦氏が当選した。この選挙は、アメリカ空母艦載機の基地移転を巡る選挙であった。
その中身は、政府が大量の補助金を出すことで、疲弊する地方の財政を良いことにアメリカ軍の基地化を目論むか、あるいは自立を目指すかの戦いであった。
アメリカ軍の受け入れを、全身を張って2期にわたり阻止してきた井原氏の敗北は、岩国だけのものではない。地方が、自らの手で生き延びるチャンスを拒否したのである。
アメリカ軍の受け入れで、市の財政は一時的に潤うかもしれないが、そのこと がやがて自らの自立した産業の育成や、国家体制への迎合を招くことになる。
国の示す合併を拒否した、福島県矢祭町がいい例である。矢祭町では、町議を半分以下にしたばかりか、年休ではなく日当にした。その他、図書館の本を全国に募ったり、様々な産業の育成や福祉活動は以前に増す状況である。
岩国氏は、結局は金が欲しかったのである。四国のどこかで、核廃棄物処理の調査受け入れを町長が受け入れたが、町民に総すかんをくらって敗北した。
こうした気骨さえも、疲弊した地方は失いつつある。岩国は一時的な財政の潤いと引き換えに、自らの生きる道を断ったのかと思える。
アメリカ軍が居座ることで、市民の日常生活の不安は増すことになり、風紀は乱れる。若い女性がいつも犠牲になり、治外法権でうやむやになる。
アメリカに従属することで日本は経済発展したが、バブル崩壊の15年経過しアメリカが失墜しつつあり、中国やインドにシフトする翻意がこの国の為政者には見て取れないのである。
岩国市長選挙は、この国が自らの行く末を見て取れなくなった、象徴的な選挙であるといえる。