地域医療が崩壊しつつある。地方の中小都市以下の地域では、公立病院から次々と医師が撤退している。せっかくの施設なのに放棄されたり、病床を減らされる現実にある。医師が足りない?
そんなことはない。小泉改革で、医師の数は少しは減少したが、絶対的に不足しているわけではない。医師は都会に、「偏在」しているだけなのである。過酷な受験戦争を勝ち抜いてきた人たちは、当然の権利のように高額報酬と安楽な仕事を望むのである。
その結果、医師は都会の総合病院などに集中するのである。責任の所在が分散できるし、設備も多分申し分ない。仲間が多く新しい技術を交換できる。その他にも、都会では多くの利便性が得られる。当然のように医師は都会の集中する。
あるいは、美容整形のように保険適用外になってでも、高額の収入が得られるエセ医療の金儲け主義に走る医師も増えている。医師としての資質が問われるような人物は、簡便な精神科に行くとも言われている。
我々のような僻地には、医学部から好意的に医師が派遣される。そのほとんどが若い医師で、地方で経験を積み、やがて都会に戻るのである。田舎の人たちは良い実験材料のようなものである。ほとんどが独身か単身赴任で、5年もいない。定住する医師はほとんどいない。
同様に産業動物(牛、馬、豚など)の獣医師が不足している。毎年900名ほどの新しい獣医師が誕生する。産業動物希望者は、100名ほどである。行政に行くのが100名足らず。残りは全員小動物である。産業動物は田舎である。牛も馬も大きく危険が伴うし、汚いし、昼夜の別がなくきついし、時間がかかり過酷である。来診する家畜はいないし儲からない。3Kどころではない。医師と同じ問題を、産業動物の現場は抱えている。
医師も獣医師も甘えの構造なのではないか。職業としての意識よりも、楽で身利入りの良い仕事と場所を求める。医師や獣医師の職業観だけに頼るのではなく、行政的なサポートが必要なのである。