むのたけじ93歳(昨年)のインタビューの書である。戦前報知、朝日新聞社に勤め、多くの政治家に接している。従軍記者として中国インドネシアなどに取材して、戦争を直接取材している。終戦とともに、報道陣としての深い反省の下に退社し、秋田で週刊新聞「たいまつ」を発行する。一貫して戦争反対を訴えている。たいまつは30年続けられ休刊からも30年経つ。
1950年2月に衆議院で反軍演説を行った、斉藤隆夫にむのは取材している。衆議院は彼を懲罰委員会にかけ除名した。その年に、政党がなくなり大使翼賛会が結成された、戦争へと突き進むのである。歴史は繰り返されているように思えると言う。
この本で、桐生悠々という人物を知った。「他山の石」という、タブロイド紙を発行し5・15事件で軍部を真っ先に批判し、28回にわたって発行禁止を受けているた。戦時中でも戦争をしっかりと批判していた人物がいた。
日本は戦争責任の所在をいまだ明快にしていない。特に日中戦争時に、多くの決断をした人たちの責任はまるで問われていない。裁かれることのない人たちに、加害者であることへの罪悪感はないままである。
憲法が公布されたが、平和への道しるべであると同時に、軍国主義の死刑判決であった。小泉内閣が、戦争を「有事」言い換え、あるいは安倍内閣では憲法改正を明確に打ち出した。戦争反対や世界平和を憲法に持っている国は世界に、38か国もある。
人類が地上に登場して、700万年ほどになるが、戦争をするようになったのは、富を蓄えるようになった僅か6千年でしかない。さらに、核兵器はその気になれば廃絶できる。老人を“愚老”する日本を告発する。
最後に、「絶望のなかに希望はある」と励ましてくれる。数々の日本の転換点を見てきた、古老の言葉には重いものがある。淡々とむのやけじが語る良書である。