IAEA(国際原子力機関)の理事長に日本の天野之弥氏が選出された、今回は3回の投票の結 果であるが、3月からエルバラダイ氏の後任の選出に、かなりもめた結果である。何はともあれ、日本人が事務局長に選出されたことは、高く評価されていいのでないかと思う。広島の秋葉市長がいち早くコメントしたのは素晴らしいことである。
しかしながら、選出された天野氏は「唯一の被爆国の日本として核兵器の拡散に全力を尽くす」と所信を述べている。この時は、核兵器に廃絶とは言わなかった。
また「非核三原則」を掲げる国家としての、日本の評価も高い。しかしながら、非核三原則の持たない、作らない、持ち込まないのうち持ち込まないは反故にされていることがはっきりしている。佐藤栄作は非核三原則でノウベル平和賞を貰ったが、選出した側は今も悔やんでいると聞 く。そして現職の閣僚はもちろん首相でさえ、核の所有を口走る現状にある。
また、我が国の原子力発電は平和利用の象徴のように扱われているが、半年ほどあれば120 発の核弾頭を造れる、技術も財力も日本が持っていることを世界は知っている。
こうした平和に対する日本の評価にもどかしく感じるのは、「わが国には平和憲法があります」だからどの国よりも、IAEAの事務局を担うのにふさわしい国家であると、だれも言わないことである。
日本は再軍備を目指したい、核兵器を持ちたい、平和憲法を廃棄したいと、政府自身が模索する現状にある。本来の日本の特性を主張することなく、もうすでに反故になっている、非核三原則を持ち出してもお笑いである。唯一の被爆国家であると訴えるのがせいぜいである。
オバマが核兵器の廃絶を訴えた。NPTも眠りから覚めたように来年の3月に向けて具体的に動き出した。オバマの提案を、イギリスもロシアも受け入れている。こうした前向きの情勢もあるが、北朝鮮やイランの核開発が止むところがない。それに紛争を抱えるイスラエルや、テロリストの温床となっているパキスタンの核兵器の存在も不気味である。
平和憲法を持ち軍隊のない国家日本の天野新事務局長の、今後の手腕を期待したいところである。