大雪山系で10もの登山者が死亡した。夏山としてはかつてない悲惨な事故になった。私はこのコースは何度も通ったところである。トムラウシの遭難パーティーも美瑛岳の方も、縦走コースである。エスケイプルートがない。何かあると、留まるしかない。この両パーティーはこの判断をや らなかった。
北海道の山には、ほとんど山小屋がない。唯一点在しながらあるのは、大雪山系だけである。この二つの事故のところにはちゃんと山小屋がある。我々ならきっと停滞したであろうが、彼らにはその余裕がなかったのであろう。。
私はいずれこのような事故が必ず起きると思っていた。このような事故とは、本州から来られる 方たちで、スケジュールが細かく決められているツアー登山である。登山に融通が利かないばかりか、余裕も感じられない。登山者の装備が高価ではあるが軽すぎる。寄せ集めの団体であるから、ツアーに結束力がない。
今回は加えて、高年齢者が多い。口は達者でも持続力はないのである。休んでいたり、山小屋の中ではとにかく陽気でかしましい。毎年驚くような山を踏破している。それをお互いに自慢する。私のように、北海道しか知らない登山者には羨ましい限りである。
とにかく彼らを見ていると、忙しいことこの上ない。北海道の山に登ったという実績を創るための山登りである。花や風景を見ることがない。特に表大雪などは、地質的にも貴重な構造になっている。絶滅が危惧される花や、固有種などを観察してほしいのであるが、そんなことより今日のスケジュールの消化に忙しいのである。
ツアー会社の料金が目が飛び出るほど高い。参加者たちは帰宅後に自慢話をしなければならない。まるで北海道登山のアリバイ工作をやりに来ているようである。日帰りツアーなどでは、50人以上の団体を幾度も見ている。これらに飲み込まれるとたまったものでない。傍迷惑も良いところである。
ひさご沼には立派な避難小屋がある。今回は天候の回復を待つ判断をすべきであったし、何人か倒れた時でも引き返す勇気を持たせるべきであった。
これでまたこのあたりの入山の規制が厳しくなるであろう。我々には迷惑である。もっと本当に山を楽しみ、親しめるようにて欲しいものである。