6月17日に参議院で「改正農地法」が可決されていた。海賊法や臓器移植法の陰に隠れて、どこの報道もほとんどないまま、可決されていた。農業関係のサイトの多くに目を通しているが、気がつかなかった。報道はあったのかもしれないが、極めて小さな扱いだったことは事実である。審議時間は僅か17時間であった。
今回の改正「農地法」は、従来は耕作者自らが所有することが望ましいとしてきたが、農地を「効率的」に利用できるものにも開放したのである。また農地の借用についても、賃貸の権利に係わる規制をほとんどなくした。だれでもいつでもどこでも借りることができるようにしたのである。
これは戦後最大の農地の大転換である。地方が疲弊して、農業の担い手の高齢化が止まるところを知らない状態である。国内の食料自給率は僅か40%程度である。
今回の農地法の改正は明らかに、企業の参入を推進するものである。農地を所有するものから、利用できるものへと転換したのである。これで農地は生産効率優先の、企業が参入することになる。しかも、ある程度の収益が上がると、さらに大きな資本が投入され大企業の参入となる。逆に収益が上がらないようだと、素早く撤退をすることになる。
農業が土地を利用し太陽の恵みを受けることによる生産形態である以上、軽々しく短期的な判断基準を導入するべきではない。農地が地域の環境、とりわけ水資源に大きくかかわることを考えると、企業の参入は規制を加えるのは当然である。農地を所有するものの耕作を原則としていたのは、ある意味責任を持たせることでもある。
担い手の高齢化、減少、さらには生産量の下落、食糧としての質の低下を考えると企業の参入はある程度の容認しなければならないと思われるが、今回の改正は賃貸についても基準小作料を撤廃し、全くのフリーにしてしまった。
審議会で、反対を表明したのは共産党の紙智子氏だけである。民主党の高橋千秋氏は総論的な注文をつけてはいるが、全体としてやむを得ないとの内容で反対しているわけではない。
今回の農地法の改正で、農産物価格が低迷し日本の農業はさらに追い込まれることになる。さらに、平気で農地を放棄する企業が続出し、環境の破壊につながることになる。長年日本の農村を見てきたが、農業に参入した企業で10年以上生産しているものを私は見たことがない。