原発事故直後の3月16日に、原子力、放射線の専門家として6名を、内閣参与として政府は任命した。専門的知識が必要な事故であるから当然のことである。
ところが、その一人である東京大学大学院教授の、小佐古敏荘教授が抗議の辞任した。涙の辞任会見はどうかと思わ れなくもないが、辞任の内容はかねてから懸念されていた内容であった。政府は何かあると、検査結果の放射能レベルに対して「基準値」を持ち出して、安心の理由にしている。
その基準値の決定についての抗議の辞任である。小佐古氏の主張は従来通りに、子どもに対しては年間1ミリシーベルにとどめるように主張したが、採用されなかったというのである。
年間20ミリシーベルを基準にしたが、「年間20ミリシーベル以上被爆するのは原子力発電所の放射線業務従事者でも極めて少ない。これを乳児、幼児、小学生に求めるのは学問上の見地からのみならず、私のヒューマニズムからも受け入れがたい」と、言うのが大きな理由である。
更に防災指針は緊急事態発生の直後から開始されていない。さらに、緊急時迅速放射能影響予測システムによる予測が公表されなかった、ことも辞任の理由とされた。
報道はさりげなくなされているが、これは極めて重要なことである。危機管理は最大予測を念頭に対応するべきである。政府は、最小予測を設定してこれを基準に対応しているようなのである。
ましてや、放射能に関してはいまだ不明の部分が多いが、内部被ばくに関しては、医学の世界で証明され難いことが大きな衝撃になって、影響の少なさばかりが目立つ。
その中での、小佐古氏の辞任は大きな意味を持つが、政府は年間20ミリシーベル被ばくを、放射能を最も影響受ける子どもたちの基準を変えないと発表した。学者の良心はこれを容認できなかったのである。
政府が彼の抗議を受けるとなれば、児童を大量に移動させなくてはならないし、校庭の汚染砂も持って行くところがなくなってしまう。子どもたちの健康は二の次である。
左にフォトアルバム、<春を待つ知床の山並み>をアップしました。