ホワイトハウスは13日、イスラエルとUAEと共同で声明を発表し、イスラエルとUAEが国交を正常化することで合意したと発表した。数週間以内に投資や安全保障、それに大使館の設置など、さまざまな分野で2国間の合意に調印するとしている。
これがそのままなら大いに歓迎すべきことであるが、アメリカというよりトランプとイスラエルとUAEの思惑は全く異なる。こんな合意がいつまでも続くわけがない。
トランプは自国の福音派の支持を失わないために、イスラエルを禁断の手段を繰り返しながら支持し続けている。今回は苦戦する大統領選を目前にしたパフォーマンスである。
隣国のエジプトとヨルダン以外に国交を持っていないイスラエルにしてみれば、どこでもいいからアラブの国と国交が持てるならということである。ヨルダン川西岸の一部を放棄する、ような姿勢を先ずは見せている。UAEにしてみれば、中東の大国のサウジラビアと対岸の大国イランとの狭間で脅かされる紛争に存在感を見せたいのである。
イランとパレスチナは即座に、愚行であるなどと大反対を表明している。
問題はサウジアラビアである。サウジアラビアはアメリカとの関係を密にしたいが、イスラエルは容認できない。石油が枯渇する不安を未来に擁いている。かといってイランと同調はすることはないだろう。一本気な外交をするトランプは、根回しをしなかったのではないか。
トランプの外交は、相も変わらず火種をばら撒い拡散するばかりである。アメリカ一国主義は、第5代大統領のジェームス・モンローが掲げた「モンロー主義」の焼き写しである。ヨーロッパなどの紛争や利権には拘わらない、孤立主義でもある。アメリカの社会には根深くモンロー主義が残っているのである。粗野で下品で無教養なトランプが支持をされるのはこうして歴史的背景がある。
イスラエルとアラブ諸国の橋渡しをしたかのように振舞うトランプは、支持者を引き留めるためだけの自己保全の手段でしかないのである。