日本の食料自給率は今や37%即ち63%の食料は海外に依存しているのである。
上図は10年ほど前の資料を基にした、農水省が制作した図である。食料の自給率はカロリーで計算される。魚などはそのままの数字が自給率としてよいが、数段の経過を経て生産される畜産物は全く異なる。
例えば、鶏卵はほぼ100%自給されている。国内産である。ところが、飼料の95%は輸入されたものである。カロリー計算では、生産された鶏卵のほぼ8倍のカロリーの穀物が投与される。鶏卵はまだいい方で、牛肉は最悪である。この表では、40%は自給されているが、国内飼料に依存するのは、11%である。通常の牛肉はほぼ30倍のカロリーの穀物が投与される。サシの入ったAランクになると80倍ほどにもなる。
穀物はほぼアメリカ産の輸入物である。最近は熱帯雨林を潰したブラジル産が増えてきている。飼料用穀物はどのような品種であるかも作付け方法、使用される化学肥料も肥培管理も全く解らない。すべてが遺伝子組み換え作物ではあるが、表示義務が食料でもなくない。
飼料用の穀物はほぼ2000万トン輸入されているが、これによって得られる畜産物のカロリーは10分の1程度でしかない。これ等の穀物はかつては人と競合した穀物である。日本の場合は無関税で、安価に輸入される。
安価な穀物を大量に給与することで、家畜は発病寸前まで追い込まれ、肉や卵や乳を大量に生産する。家畜は短命になるし、発病も珍しくないし、国費で保障される鶏の伝染病は間断なく起きる。健全な飼養管理の家畜は、素tレスもなく健康で長命である。
安価な穀物は高価な畜産製品を生産するためであるが、2000万トンの輸入穀物は食料自給率を極端に下げている。(多分10%ほど)
ロシアのウクライナ侵略で世界の穀物価格が異常に上がっている。プーチンの横暴な戦争であるが、食料にボケた感覚しかない日本人にとって穀物の重要性を認識させる効果はあった。穀物は高いだけでなく、手に入らない状況になれば、自給する重要性やこれまでの農政の誤りを知るきっかけになってくればと思う。消費者は今まで安価な畜産物を享受していた実態を知ってもらうしかない。
乱暴で環境を破壊する工業型畜産業は、アニマルウエルフェアの観点からも、温暖化対策などからも、時を追って淘汰さるべきである。穀物の高騰には、人類にそうしたことを認識させる効果もある。