農家に米を作らなければ金を出すという、およそ農業政策とは言えない政策「減反政策」を、50年前に日本政府は打ち出した。コメが余っているから作るな、作らなければ金を出すという、勤勉な日本の農民の心を引き裂くような政策である。
農地の基盤整備や機械の導入奨励をしたりと、コメの増産を進めた結果である。食生活の欧米化を推進し、パン食の普及、畜産物の奨励をするなどして、豊芦原瑞穂の国日本の文化や環境を否定する一方での農業政策である。
欧米食奨励の背景には、アメリカ穀物の当初は余剰の処理、やがては輸入国への転換の戦略があることも忘れてはならない。
世界を席巻するコロナそして、異常気象にロシアのウクライナ侵略に円高と、世界各国の食料輸出の規制などで、世界各国は食料は兵器より率先して確保することも改めて知ることになる。
僅か37%(実質10%程度といわれる)の食料自給率の日本は、真っ先に食料危機に陥る。その先鞭をつけるのが、アメリカの穀物戦略に踊らされている日本の家畜である。日本の家畜が真っ先に食料危機に陥っているのが畜産の現状である。
畜産分野玉子に豚牛肉に牛乳、とりわけ畜産分野で国は規模拡大を強力に進めてきた。クラスター事業と名付けられ、酪農家に一定の選択はあるように作られた、大型化高泌乳化が大前提である。
大型化高泌乳化に欠かせないのが、大量の穀物給与である。そして自動搾乳機(搾乳ロボット)など2千万円程度の高額な機会と巨大な牛舎が必要になる。一戸で200頭以上時には600頭超える施設が必要になる。200頭規模で2億円程度の資金が必要になるが、国が半額ほど助成してくれる。
それでもメインテナンスや稼働にかかる費用、電気や水道や燃料は膨大な金額になる。収入は増えるが飼料を含めた経費が90%を超える。
翻って牛の生理に沿って牧草の質と量を与える農家(私の診療したりしている農家)は、規模は小さくても牛は健康で健全な牛乳を生産し長生きしてくれる。2年前より収入は減ったが、特段赤字になるわけでもない。
農業は基本ゼロエミッション(入るものがない)である。農業は無から有を生むものである。ところが日本政府のご推奨の経営形態は、外部資源(輸入穀物)と外部資本(大量の補助金)に依存するシステムは、経営として脆弱なばかりか、食料資源の収奪(人と競合する)や環境悪化(水資源を汚しCO2の排出が膨大になる)などが危惧される。
先日有機野菜農家のインタビューが放映されていたが、全く影響がないと答えていた。むしろ売り物が高くなってくれるのでありがたいと答えていた。
国の指導の沿って高生産をした酪農家のお陰で牛乳が余る。国はこのご時世に、余乳対策に搾乳牛を淘汰して出荷乳を減らすと、補助金を出すというのである。50年前の減反政策の再現である。
政策的な誤謬など問われることがない、無謬主義が健在である。天下の悪法、減反から国は何も学ぶことがない。