そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

健康で幸せな家畜の、肉や卵や牛乳を食べたいと思いませんか?

2015-11-09 | アニマルウエルフェアー
現在日本の農業は、とても厳しい局面にあります。農業の基本を無視してひたすら効率、それも経済効率ばかりを追求しています。農家は責められる立場にありません。国の農業政策が、ひたすら巨大化による効率を求め、奨励しているのです。通常の作物の生産もそうですが、畜産の分野は目に見えて一時の生産が上がるため、家畜に相当な負荷をかけることになります。
そうした生産性の追及については、家畜への負担になって顕在化しています。家畜を命あるもの、生命体として尊重して苦痛を与えたり行動を束縛するようなことは止めようとするのが、「家畜福祉」英語では「アニマルウェルフェアー」という考えです。
具体的に乳牛について言えば、高生産を輸入穀物飼料を大量に与えることで成し遂げ、穀物に大量に依存するために施設を単純化することができるため多頭化することもできるのです。そうした形態の乳牛は、平均2.5産という信じられない低さです。2.5産とは、最初の子牛を産むまでにほぼ2年かかりますから、牛乳を生産するようになって3年もすると淘汰されることになるのです。病気ばかりではなく投資額が大きいために、生産性が落ちるとすぐ肉に回されます。肉になるののは、3割程度でしょうか。残りは病牛としては遺棄されてしまうのです。
こうした高生産の農家の乳牛は懸命に牛乳を生産することになりますが、決して幸せともいえませんし、何らかの病気に常時晒されていることになります。別の言い方をすれば、病気になる限界まで搾り続けるのが酪農家の腕というところでしょうか?

本ブログを閲覧の多くの方は消費者の立場にあると思います。消費者の皆さんは、決して不幸な病気寸前の牛や豚や鶏が生産した、牛乳や肉やそして卵を食べたいと思っているとは思いません。消費者の皆さんが現在日本で口に入れることのできる畜産製品の。ほぼ90%はこうした不幸で病気すれすれの家畜が生産したものなのです。
上記の画像をクリックすると、画面が大きくなります。11月21日と22日に、十勝で家畜福祉・アニマルウェルフェアーのセミナーを開催します。特に二日目(22日)のセミナーに参加願いたいと思います。
私たちは、ほとんどの酪農家が巨大化する中でも、大きくなくても健康で長生きする幸せな牛から牛乳を搾って、小規模ながらも経済的にも頑張っている農家がいることを知っています。健康で、長生きする、輸入穀物への依存が少なく、経済的な投資もないので、小規模でも何とかやっていけるのです。それでも、政府や行政の支援がなく、経済的に大変な状況であることには変わりありません。
健康で幸せな家畜から生産された畜産物について、消費者の皆様方には応分の負担を戴きたいと思っています。そうした飼養形態について、ヨーロッパでは評価基準を設けて、農家を差別しています。私たちは今そうした基準を作ろうと各方面の専門家とともに、取り組んでいるところです。
北海道の来られた方々から牧場で牛が草をのんびりと食べている姿が見えないとよく指摘されます。そんな幸せな牛は、せいぜい5%程度なのです。北海道牛乳のラベルに放牧して草を食べる牛の姿が印刷されていますが、あれは嘘なのです。ほとんどの牛乳は、閉塞された空間で大量の輸入穀物によって飼育された、いわば畜産加工業の形態によって生産されたものなのです。


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