日本人は毎日ほぼ一個の玉子を食べている。食材として直接食べているだけではなく、お菓子などに加えたり、マヨネーズのように加工品としての製品もある。それらも含めて毎日一個の玉子を食べている。これほど大量の玉子を食べているのに、鶏の飼い方には無関心である。
採卵鶏は輸入穀物をほぼ100%与えて、ほぼ毎日玉子を産ませている。水分がほとんどない穀物は給与に便利で、機械化できるし大量飼育もできる。バブルの時代に所物価が高騰する中、玉子は「物価の優等生」と言われるまでに機械化と大型化によって、安価になったのである。
それは人間様からの言い分であって、鶏は玉子を産む機械として扱われ、生理に反する食べものを与えられ、生態を無視したA4サイズのぎゅう詰めの中空のゲージに置かれて、短い命を終える。
採卵鶏は孵化するとその日のうちに嘴を切り落とされる。(デビーキング)業者は痛くないとか出血しないから、鶏に危害を加えているわけではないと釈明する。
私は牛専門の獣医師であるが、40年以上日本野鳥の会の会員でもある。野鳥の生態には詳しい。鳥には手がない。羽根にしたからであるが、その分嘴には繊細な神経が行きわたっていて、特にシギ類などは砂の中や水の下の獲物を察知することができる。観察しているとそれは見事なものである。
鶏の嘴を切り落とすのは、固いトレイに流れてくる餌を沢山採れるためである。鶏の探して突き回して獲物をとる生態を無視した哀れな人間様の勝手な行為である。
多くの鶏舎はには窓がない。真っ暗にしたり明かりを点けっぱなしにしたりして、昼と夜を演出するのである。更には、冬が来たことを知られないために温度調整や、一時的な飢餓にさせたりする。そのことで換羽を短期間に終わらせた裡して、産卵率をたかめるのである。
先日公演をネットで聞く機会があった。自然光の下で自由に動ける平飼いすると、ビタミンD3の生産が格段に高くなるとする研究であった。確か10倍以上であるが、ウインドレスだと10分の一以下になるということである。
平飼いすれば当然抗病性は高くなるし、体躯も頑丈になる。県境者たちにはこのような研究を重ねていただきたいものである。
つい先だっても、北海道で鳥インフルエンザで16万羽も殺処分された。このような伝染病は、大型養鶏場でしか起きていない。こうしたところではワクチン接種も欠かせないし、消毒など徹底してやらなければならない。私の旧知の小養鶏場農家では、ワクチン接種もやらないし、鶏たちは太陽の下を走り回っている。消息などもほとんど無縁である。輸入穀物の高騰とも無縁である。
ケージ養鶏は、アニマルウェルフェアーの観点から、ヨーロッパでは禁止の方向にある。日本でも早急に禁止して頂きたいものである。
健康な家畜から得られた農産物こそが、健全な食品である。