詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

詩はどこにあるか(21)

2005-03-11 01:43:43 | 詩集
森鴎外「青年」(岩波書店「鴎外選集」第2巻)

 主人公の小泉純一が大村と歩く描写。

暫くは話も出来ないので、影と一しよに急ぎながら空を見れば、仁丹の広告燈が青くなつたり、赤くなつたりしてゐる。(92ページ)

 主人公が考えていることとは無関係に、唐突に、街の描写、広告の描写があらわれる。この瞬間に「詩」を感じる。現代の「詩」を感じる。
 あらゆる存在は、個人の思惑とは無関係に存在している。その存在の唐突な描写。それは、個人の時間とは無関係な時間、関係を明らかにする。

 あらゆるものは感情に染まる。感情に染まったものはセンチメンタルである。感情に染まらない存在が「詩」である。
 小説のなかにおいても、詩のなかにおいても、それは同じことである。
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