谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(33)(創元社、2018年02月10日発行)
「泣いているきみ」。一連目を私は繰り返し読む。
「泣いている」で始まり、「歌っている」と終わる。主語は「きみ」。ただし、「泣いている」の「きみ」は現実の「きみ」。「歌っている」の「きみ」は、ぼくが想像している「きみ」。
どうして「泣いている」人間から、「歌っている」人間を想像するのか。
ここにある「切断」と「接続」が詩である。
「泣いているきみ」の「となりに座る」。何ができるわけではない。何もできない。でも、座っている。
声をかけるでもなく、想像する。
ここに、こうして座っていれば、やがて晴々とした笑顔に戻る。草原で、広い広い空にむかって歌っているきみに戻る。「胸の中の」きみが、「いま/ここ」にあらわれるのを待っている。
ほんとうは「泣いているきみ」の「となりに座っている」のではなく、「歌っているきみ」の「となりに座っている」。
こういうことが想像できるのは、「ぼく」が「きみ」を知っているからだ。「知っている」は「好き」ということだ。
書きたいことはたくさんあるが、ここまでにする。
これ以上書くと、一連目を読んだときの「うれしい」気持ちが台無しになる。
*
「詩はどこにあるか」2月の詩の批評を一冊にまとめました。
詩はどこにあるか1月号注文
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ここをクリックして1750円の表示の下の「製本のご注文はこちら」のボタンをクリックしてください。
目次
小川三郎「沼に水草」2 岩木誠一郎『余白の夜』8
河邉由紀恵「島」13 タケイ・リエ「飯田橋から誘われる」18
マーティン・マクドナー監督「スリー・ビルボード」再考21 最果タヒ「東京タワー」25
樽井将太「亜体操卍」28 鈴木美紀子『風のアンダースタディ』32
長津功三良『日日平安』37 若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」40
草森紳一/嵩文彦共著『「明日の王」詩と評論』47 佐伯裕子の短歌54
石井遊佳「百年泥」64 及川俊哉『えみしのくにがたり』67
吉貝甚蔵「翻訳試論――漱石のモチーフによる嬉遊曲」72
西岡寿美子「ごあんない」76
*
谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(上)83
オンデマンド形式です。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
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以下の本もオンデマンドで発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料250円)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512
(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料450円)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
(3)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料250円)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977
問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com
「泣いているきみ」。一連目を私は繰り返し読む。
泣いているきみのとなりに座って
ぼくはきみの胸の中の草原を想う
ぼくが行ったことのないそこで
きみは広い広い空にむかって歌っている
「泣いている」で始まり、「歌っている」と終わる。主語は「きみ」。ただし、「泣いている」の「きみ」は現実の「きみ」。「歌っている」の「きみ」は、ぼくが想像している「きみ」。
どうして「泣いている」人間から、「歌っている」人間を想像するのか。
ここにある「切断」と「接続」が詩である。
「泣いているきみ」の「となりに座る」。何ができるわけではない。何もできない。でも、座っている。
声をかけるでもなく、想像する。
ここに、こうして座っていれば、やがて晴々とした笑顔に戻る。草原で、広い広い空にむかって歌っているきみに戻る。「胸の中の」きみが、「いま/ここ」にあらわれるのを待っている。
ほんとうは「泣いているきみ」の「となりに座っている」のではなく、「歌っているきみ」の「となりに座っている」。
こういうことが想像できるのは、「ぼく」が「きみ」を知っているからだ。「知っている」は「好き」ということだ。
書きたいことはたくさんあるが、ここまでにする。
これ以上書くと、一連目を読んだときの「うれしい」気持ちが台無しになる。
*
「詩はどこにあるか」2月の詩の批評を一冊にまとめました。
詩はどこにあるか1月号注文
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目次
小川三郎「沼に水草」2 岩木誠一郎『余白の夜』8
河邉由紀恵「島」13 タケイ・リエ「飯田橋から誘われる」18
マーティン・マクドナー監督「スリー・ビルボード」再考21 最果タヒ「東京タワー」25
樽井将太「亜体操卍」28 鈴木美紀子『風のアンダースタディ』32
長津功三良『日日平安』37 若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」40
草森紳一/嵩文彦共著『「明日の王」詩と評論』47 佐伯裕子の短歌54
石井遊佳「百年泥」64 及川俊哉『えみしのくにがたり』67
吉貝甚蔵「翻訳試論――漱石のモチーフによる嬉遊曲」72
西岡寿美子「ごあんない」76
*
谷川俊太郎『聴くと聞こえる』(上)83
オンデマンド形式です。
注文してから1週間程度でお手許にとどきます。
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以下の本もオンデマンドで発売中です。
(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料250円)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512
(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料450円)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009
(3)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料250円)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977
問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com
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