詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

破棄された詩のための注釈(15) 

2015-03-21 01:24:32 | 
破棄された詩のための注釈(15) 

「白い」ということばがあった。ほかに色は存在しなかった。それは「白い下着」ということばになったが、数行のためらいのあと、別なことばがつけくわえられた。下着の形に取り残された「肌の白」が、陰画(ネガ)が陽画(ポジ)を追い求めるように動いた。それは「眼が欲望にしたがって忠実に動いた」ということばに書き換えられた。

そのことばのそばを、本のなかのことばが通りすぎた。「記憶だけが知性に対して官能的である」。下着に似た形の水着とタオルはバッグのなかで濡れている。それに触れた「手」が手紙になって、遅れて届く。届いた。机の上で、感情の入り混じった文字は、喉のように「白い」紙の折り目の上に並んでいる。青い文字のなかの谷(折り目)は静かだった。

窓の下を車が走っていく音がしたが、その音はあまりにも「まっすぐ」だったので、沈黙はそのときも存在しているのだと思った。ていねいに折り畳まれた紙のなかの「まっすぐ」なへこみ、その「まっすぐ」ということば以外は全部虚構になってしまった日。「眼は欲望にさからうことに執着した」ということばが消しゴムで消された。







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