池井昌樹「だいじょうぶよ」(「森羅」50、2025年01月09日発行)
池井昌樹「だいじょぶよ」は、新川和江に捧げた詩である。夢のなかで、新川の詩の「だいじょうぶよ」が形をかえてあらわれる。
だいじょぶか
そのささやきに
ゆめからさめた
ぢべただった
あおむけだった
まんしんあめにうたれていた
あめかなみだかわからなかった
とはじまり、途中にこんな展開がある。
だいじょぶか
くもまからさすささやきが
ほねみにしみた
ほねもみもいつかくだけて
あとかたもなくくちはてて
おおきなふるいこかげのあとに
おおきなふるいこころがのこった
「おおきなふるいこかげのあとに/おおきなふるいこころがのこった」というのは、木が元気だったときできていた「木陰」がいまはなく、その存在しない「木陰」のかわりに、「こころ」が生きている、というのとなのだが。
私は「こかげ」ではなく「木」そのものが「こころ」に思えたのである。「木陰」とかいているけれど、それは「木」である。
なぜそんなことを思うかというと、「こころ」というのは死なないものだからである。そして、その「こころ」がいつでも「木」を生み出すのである。「木」を存在させるのである。
私は「こころ」というものなど、あるいは「精神」というものなど存在しないと思っている。しかし、「思い出す」という「運動」は存在しつづける。では、何が「思い出す」という行為を支えるのか(動かすのか)、それは目であるかもしれないし、手であるかもしれない。耳であるかもしれない。池井の場合、新川の詩を読んだときの目、あるいは新川の声を聞いたときの耳こそが、「こころ」ということになるだろう。目と耳が、新川のことばに触れて、新川を生き返られせている。
あ、こんなふうにして詩はつづいていくのだ、と私は思った。
先の引用の二行、「おおきなふるいこ」まで、音がいっしょということも、何か不思議な印象を引き起こす。漢字で「木陰」「心」と書いたときは「おおきなふるい」までがいっしょだが、そのあとは「ことば」はわかれてくが、ひらがなだと「こ」までしっかりつづている。そういうところにも、なにか、人間のふれあいの、詩のふれあいの不思議な美しさが感じられる。
詩の最後にも、それに似た展開がある。
だれのこころか
こんなところに
こどもみたいに
めをふいた
ふたばがひとつ
最初の部分の「なみだ」が「め」をとおって「ふたば」になるとき、池井と新川は詩のなかで「ひとつ」になっている。「双葉」は二枚あって「ひとつ」。こんなことは、説明してしまってはいけないことなのだけれど。
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