監督 ジョセフ・コジンスキー 出演 トム・クルーズ、オルガ・キュリレンコ、モーガン・フリーマン
映画が始まってすぐ、トム・クルーズの乗った宇宙船(飛行機?)が墜落する。と、思ったら、谷底から何もなかったかのように急上昇してくる。しれっとして出てくる。こんな顔はトム・クルーズ以外にはできない、という嘘っぽい顔である。この顔が「演技」なら、トム・クルーズもなかなかやるじゃないか、と思わないでもないけれど……。あ、脱線した。このシーンがなかったら、この映画はでたらめになるのだが、「伏線」というよりは、あまりにもあからさまな種明かしなので、私は、後がばかばかしくて見ていられなかった。
トム・クルーズの飛行機は墜落して、トム・クルーズは死んだのである。ところが、トム・クルーズは何人もいて、トム・クルーズが何度死のうが関係ないのである。トム・クルーズはクローンなのである。それが半分以上すぎたところで(後半の四分の三くらい?で)、やっとクローンが出てくる。遅すぎて、映画のスリルというものがまったくない。もっと早くクローンを出して、クローン、クローン、クローンでわけがわからないくらいにしないと。
だいたいねえ、トム・クルーズがクローンの悪人をやるのなら、まわりをもっと善良な人間味のある役者にしないと、すぐに嘘がばれる。トム・クルーズに命令を出している女の指揮官(?)なんか、出てくるのはモニターのなかだけだし、もうそれだけで、彼女は「人間ではありません」と宣言しているようなものだ。こういうのは「伏線」とは言わずに、また「種明かし」とも言えないもので、なんというかというと「底が割れている」「みえすいている」というのである。リアリティーが安っぽすぎる。
変なおもちゃにばっかり時間と金をかけたのかもしれないけれど(ほかの映画に比べると金はかかっていないと思う)、こういうCGをつかった特撮(実際の「もの」「人間」が相手の撮影)ではトム・クルーズは演技ができない。目の前に何かがある、架空のものをあたかもあるように演技し、映像に合成するというような器用な演技がトム・クルーズにはできない。相手が実際にいても、きちんと演技できないのだから、そこに誰かがいると思って演技するというようなことはできるはずがない。だから、ハイライトの戦闘シーンでもそんなに登場しないというか、なんというか、まあ、出番が少ないのだけれどね。「ミッション・イッホッシブル」のような肉体をはったアクションというのがないのだけれどね。(だから、ほんとうに、どこに金をかけたのか、まったくわからない。)
しかし、ひどいよなあ。月も地球も半壊し、世界中が放射能で汚染されているらしいのに、汚染されていないところがアメリカ国内(?)にあり、自然が残っていて、
しかも、
トム・クルーズの家にはなぜか電気があって、レコード・プレーヤーがあって、古い古いアナログのレコードを聞くことができる。谷川(?)の水も飲むことができる。こんなご都合主義を繰り広げて、それでもSF? あ、いまはこんな言い方をしないのかなあ。まあ、いいけれど。
見るだけ、損。時間のむだ。まあ、トム・クルーズのファンなら、モノクロで見るとトム・クルーズはいっそう美男子になるねえ、顔に傷があると(血が顔にあると)美形がいっそう引き立つねえ、とうっとりできるかもしれないけれど。私は、やっぱり相手役は背の低い女優か、とトム・クルーズの身長の低さを確認し、ハリウッドの男尊女卑の思想をそこに見るのでした。はい。
(2013年06月02日、天神東宝2)
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