詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

敵圏外から攻撃能力?

2020-12-09 09:19:18 | 自民党憲法改正草案を読む
 2020年12月09日の読売新聞(西部版・14版)の一面に、安倍が辞任会見した直後に報道された「特ダネ」、敵基地攻撃能力をもった「武器」を開発するという記事の続報が「特ダネ」として掲載されている。続報だから、どこが新しいのか目を凝らさないとわからない。

長射程程ミサイル開発/敵圏外から攻撃能力/来年度予算案

 「長距離射程ミサイル開発」に関して言えば、すでに「敵基地を射程にした装備」と言っているのだから、新味は「ミサイル」ということばが具体的に出てきたところか。
 しかし、「敵圏外から攻撃能力」とはどういうことか。
 仮想敵国がどこか明確には書いていないが、北朝鮮も中国もすでに日本を射程にしたミサイルをもっている。ロシアももちろんもっている。日本はすでに「敵圏外」ではない。だいたい「敵の圏外」にいるのなら、その「敵国」は日本にとって危険ではないだろう。緊急の危険性を感じる必要はないだろう。
 「敵圏外から敵基地を攻撃できるミサイル」とは、何か。
 記事には、こう書いてある。(番号は、私がつけた。)

①政府は、年末までに検討中の「ミサイル阻止」の新たな方針の一環として、敵ミサイルの射程圏外から攻撃できる長射程巡航ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)を新たに開発する方針を固めた。
②地対艦ミサイルを改良し、艦艇や航空機からも発射でき、地上目標も攻撃できるようにする。来週にも閣議決定する。

①に「長射程巡航ミサイル」ということばが出てくる。ここから「巡行」ということばを省略して、読売新聞は「長射程ミサイル」と見出しにしている。
②では「敵圏外」を「艦艇や航空機からも発射でき」るが、と具体的に言っている。「艦艇や航空機」は移動できる。つまり、敵国から攻撃されにくいということである。地上基地に固定化されたミサイルは、基地を攻撃されたらつかえなくなる。しかし、「艦艇や航空機」は「地上基地」に比べて攻撃されにくい。これが「敵圏外」の意味なのである。
 このことを、こんなふうに言い直している。

③艦艇からも発射できる新型巡航ミサイルの開発で、相手の対応をより困難にし、抑止力の強化につなげる狙いがある。

 「相手の(敵の)対応をより困難にする」が「敵圏外」ということになるが、これはあくまで「対応をより困難にする」であって、完全に「敵圏外」を意味しない。読売新聞(あるいは、この特ダネをリークしたひと)は、このミサイルを「抑止力の強化」呼んでいる。
 だが、別の見方もできる。
 「艦艇や航空機からも敵の地上目標を攻撃できる」ということは、たとえ日本の地上の基地が攻撃によって完全破壊されても、なおかつ敵基地を攻撃し続けるということである。これは言い直せば「戦争が長引く」、戦争の長期化を意味する。どこまでも破壊がつづく。
 「抑止力」というと聞こえはいいが、私は「戦争の長期化」を想定しているだけだと推測する。安倍から菅が「継承」する「政策」が、これである。絶対に戦争をする。戦争は、絶対に「長期化」させる。これは、言い直せば、「軍事独裁」の期間をより長く維持するということである。
 菅は、戦争の「長期戦」を目指している。「長期戦」の「手段」が「艦艇、航空機から発射できる長距離巡行ミサイル」なのだ。もう、これは「防衛」でもなんでもない。読売新聞が見出しにとっているが「攻撃」でしかないのだ。
 新聞(ジャーナリズム)に求められているのは、「リークされたことば」をそのまま垂れ流すのではなく、ことばを分析し、批評し、解説を加えて記事にすることだ。
 「長距離巡行ミサイル」は何のために、どうやって運用するのか。その結果、どういうことが起きるのか。単に敵基地を攻撃する(反撃する)ということ以外のことが起きる。それがわかる見出しと、記事の構成が必要である。

 まあ、読売新聞は「攻撃能力」(見出しに注目)と、いつものように「正直」をさらけだしているのが、おもしろいところではある。しかし、「正直」に「攻撃能力」と書いてしまったのだから、そのあとも「正直」をつづけないといけないのに、それができない。
 そこに問題がある。

 おなじ紙面の「編集手帳」には、有馬朗人を忍んで、こういうことを書いている。

<友の死や雲の峯よりB29>。敗戦から75年の今夏、十四歳の空襲体験を詠んだ。「戦争で軍事施設のみ攻撃されるなんて嘘だ」と本紙に語っている。 

 戦争は、はじまれば、もう「戦争」しかない。終わりなのである。
 長距離巡航ミサイルで「敵基地」を攻撃する、抑止力を高めるというが、戦争になればきっと「敵基地」以外も攻撃する。日本も「基地」以外も攻撃される。つまり「防衛手段」を持たない国民は、いつでも簡単に殺され続ける。
 そういうことを体験してきたからこそ、憲法で、国に対して戦争をさせないと宣言している。それを国の指導者が率先して破り続ける活動をしている。憲法違反をしている。
 それをごまかすために「敵圏外」だとか、「抑止力」ということばをつかっている。








#菅を許さない #憲法改正 #読売新聞



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