和辻哲郎はハイデガーについて言及することが多い。「風土」はハイデガーの「存在と時間」を念頭に置いている。
ハイデガーは人間存在を時間をもとに考える。空間性を考えない。しかし、和辻は常に空間を考える。その「空間性」を「間柄」という、とても日本的なことばで考え続ける。だからだと思うが、私の知っているコスタリカ人は「風土」を読み、これは日本人論だと言った。
そこから私は、ハイデガーの「時間論」に引き返し、「風土」が日本人論ならば「存在と時間」は「西洋人論」なのではないか、と思った。「西洋人論」というのは変な言い方になるが、別の言い方をすれば「キリスト教の人間論」(一神論の人間論と言った方がいいかもしれない)になる。コスタリカ人を「西洋人」とは、日本人はたぶん呼ばないが、コスタリカはキリスト教が信じられている国、一神教への信仰が強い国である。だから、私の知人も無意識的に、「一神教」の影響を受けていると思う。
西洋人(だけではなく、アラブ人もそうだが、いわゆる一神教を信じるひとたち)の意識は、「個人対神」の関係のなかで動く。唯一の神に向き合い、自分を考える。しかし、多くの日本人は「絶対神」というものを考えない。「絶対神」の意識がない。「神」とどこにでもいる。木々も神なら山も神。川も石も神かもしれない。神が無数に存在するから、「神」と向き合うことで「個人」に立ち返るということがない。
西洋の「神」が「一人」(絶対的)であるのに対し、日本の「神」は無数(多数)に存在している。日本人は「一神教」の信者とは違って「神」と「一対一」にはならない。個人的立場から見れば、いつでも「一対多」である。
そして、この「一対多」というのは、どうも「社会」(世界)そのものの構造でもあるように感じられる。「私」が存在するとき、いつも周囲に「多数のひと」がいる。そして、この「多数の存在」を考えるとき、そこにはどうしても「多数」を受け入れる「空間」が必要になる。
「神」と「一対一」で向き合うとき、そこに「空間」があるとしても、それは「直線」である。「面」のひろがりを必要としない。この「直線(あるいは線)」の意識は「時間」の意識にとてもよく「似合う」。「時間」を表現するとき、ひとはしばしば「直線」を描き、その延長線上に「時」を割り振る。「面」を想定し、そこに「時」を配置しない。だから、「空間」の存在を忘れてしまうのだ。
それは「良心の声」についても言える。「良心の声」は「神」につながる一直線の根源から聞こえてくる。それは「一神教」を生きる「時間の根源」からの「声」でもある。
しかし、日本人は、「良心の声」に関係しているのは「間柄(世間と個人との関係)」である(と、和辻は考えている、と私は「誤読」している)。
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